Weekly Web Magazine
週刊GM研 Vol.77
2003/01/18


【News Headline】
  • 米最高裁、著作権で“ミッキーマウスの延命”認める
  • 「ゲームファンド ときめきメモリアル」償還金額決定
  • 【mini Review】
  • 同人誌
  •  : あずかんな大気1(単行本)
  • 同人誌
  •  : 総集編 episode0:1〜0:9前編
  • 雑誌
  •  : ドリマガ 1月31日号(vol.373)
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 1月31日号(vol.737)
    【COLUMN】
  • 日本語の正しさとは?

  • ■News Headline

     【米最高裁、著作権で“ミッキーマウスの延命”認める】 
     またしてもディズニーが「やりやがったな!(by越前康介)」。さすがは天下のディズニー!議会まで動かして特例処置を引き出してしまうのだから…呆れて物も言えませぬ。ちなみに、この訴訟は1998年に成立した「延長法」を巡って争われていたものです。「作者の死後50年間、企業が権利を持つ場合は作品の誕生から75年間」とされていた著作権の保護期間を、それぞれ20年間延長するという内容だったのだが、これにより2003年に期限が切れる予定だったミッキーマウスの著作権の保護期間が延長されることになり、延長法は別名「ミッキーマウス保護法」とも呼ばれていたわけです。

     「幼稚園児がプールに描いたミッキーの絵に対して版権使用料を請求した」など、数々の伝説を残してきた斬り捨て御免の大企業ディズニーですが、現実にはアメリカ本国では急激にディズニー離れが進行しています。ディズニーランド米国本店は入場者数減を補うために値上げに踏み切ったし、ジャパニメーションのパクリばかりを繰り返してきたツケが廻ってきて、宮崎アニメが本格的にアメリカ上陸を果たすと化けの皮が剥がれてしまった。(「千と千尋の神隠し」の米国興行を担当したのはディズニーだが、内容的に絶賛されながら上映館数が少なすぎたため興行収益が水準をクリアできなかったため、確実視されていたアカデミー賞にノミネートされなかった、というのが米国アニメ関係者たちの間で囁かれている)

     批評精神を失った「大きな子供」ばかりの日本こそが、緩やかな衰退へと向かいつつあるディズニーにとって最後の楽園なのかもしれませんね。なんとも情けない話ですが…

     【「ゲームファンド ときめきメモリアル」償還金額決定】 
    http://www.dengekionline.com/news/200301/16/n20030116gamefand.html

     さすがはコナミ、最後の最後に帳尻を合わせてきました。まかり間違っても額面割れなんて出したら会社としての社会的信用問題に発展し、株価の急落は避けられないですからね。しかし、このファンドには「からくり」があって、ソフト発売から6ヶ月後までの「出荷本数」に応じて、償還金額が決定される仕組みになっている。つまり「実売本数」は問題ではないのです。

     ファンド公示時の資料によると、「ときメモ3」の出荷本数が約15万本で既に確定しているから…元本割れを起こさない最低ラインまで押し上げるためには「ときメモGS」を20万本出荷しなくてはならない計算になります。ときメモGSの出荷本数は正確には把握していないが、実売はどう考えても10万本は行っていない筈だ。では、残りの10万本は何処に消えてしまったのだろうか?

     全国の小売店・流通に独自の営業チャンネルを持つコナミは、「コナミブランドの商品価値」を武器にして「取引中止」を暗にチラつかせながら、小売店の迷惑も省みずに強引に商品をねじ込んで、不良在庫になるのを知りながら出荷したんでしょうね…これは推測の域を出ないが、十分ありえる話です。あな、恐ろしや、大手の横暴かな…

     そんなこんなで、ようやく元本割れこそ免れたが、金利に換算すると0.88%。損が出なかっただけマシですが、世の中にはあのファンドに100万以上もブッ込んだ輩もいたので、彼らが目を覚ますきっかけを失ったことは残念に思います。参考までに、minoriの酒井プロデューサーは、コナミ株を1000万円以上・ときメモファンドを160万円買ったそうですが、エンディングクレジット(出資額順)には酒井氏よりも上に何人もいるんですよ。一体何人の人生を狂わせれば気が済むのでしょう?
    こ、怖いですねぇ〜(ガタガタブルブル)


    ■mini Review

     【あずかんな大気1(単行本)】 ゆ〜のす通信 
     「こんな同人誌見たことねぇ!」この同人誌を手に取った私の第一声がそれでした。去年の春先辺りから「あずかんな単行本化計画」が進んでいることは知っていましたが、まさかここまで完璧なモノに仕上がるとは予想していませんでした。ご本家「あずまんが大王」の単行本に限りなく近いデザインと紙質と厚み、同人誌では異例の折込式フルカラーカバー表紙+帯。細部に渡ってトコトンこだわり抜いた、「究極のオマージュ」ここに爆誕です!

     その作風は、以前のGM研レビューを参照して下さい。大好きな原作を、やはり同じように大好きな人が描いた同人誌が、こうしてカタチになってより広くより多くの人に読まれていくというのは、一人のファンとしても一人のレビュアーとしても本当に嬉しい事です。「好き」がカタチになって「好き」が広がっていく。それこそが同人誌の醍醐味です。鍵っ子も、あずまにあも、おねーさんも。読めばだれもがしあわせになれる、この1冊、理屈ぬきでオススメです!

     【総集編 episode0:1〜0:9前編】 PEPPY ANGEL 
     まさに圧巻。前代未聞。「歴史と煩悩の厚み、計674ページ!」と帯にも書かれている通り、とんでもない厚みです。分かりやすい例を挙げると、コロコロコミックとほぼ同じ厚みです。その重さは1130g。同人誌が「立つ」なんて初めてですよ。以前、GM研レビューでも取り上げたこの作品ですが、シリーズの初期作品の入手が非常に困難を極めていて、総集編の製作を待ち望む声が常にあったわけですが、まさかこんなカタチで実現しようとは夢にも思いませんでした。

     あまりにも常識外れの質量ゆえ、即売会への大量搬入が難しく、個人通販への申込も殺到しており、大変入手困難な状態が続いています。総集編で補完されるのは過去の作品だけではなく、読者の時間の補完でもあるのです。同人誌の世界では、総集編の発行で人気に火がつくケースが非常に多いのです。エヴァンゲリオン:オリジナルストーリー本サークルとして、地味ながらもコツコツと歴史を積み重ねてきたPEPPY ANGEL、その歴史の結実に対する世間の大反響、それこそが、この作品のクオリティを証明していると思います。シリーズ本編も完結へのファイナルカウントダウンに突入していることですし、この機会を見逃さずに速やかに確保しておくことをオススメします。

     【ドリマガ 1月31日号(vol.373)】 ソフトバンクパブリッシング 
     私も1口投票に参加した「ドリマガアンケート:2003年大胆予想」の集計結果が出ていたので、興味深い質問について検証してみましょう。

    Q:CESA GAME AWARDは2003年も名前と投票方式が変更になる?
    A:Yes 60%, No 40%

     Yesと答えた人は「変更して欲しい」という要望の意味合いで、Noと答えた人は「CESAには期待できない」という意味合いが込められています。ドリマガ読者は元々圧倒的多数で「CESA GAME AWARDに異議アリ!」という世論でまとまっていますからね。「もうゲーム賞そのものに興味がなくなった」という声も上がっており、メーカーとユーザーの不協和音は取り返しのつかない事態へと向っています。

    Q:ソフトの低価格路線に拍車がかかり、980円のシリーズが登場する?
    A:Yes 52%, No 48%

     完全に賛否両論に分かれたこの質問。いかにデフレ時代とはいえ、980円で「まともな」ゲームを作るのは無理です。製作費云々ではなく、流通という観点から見て実利が低すぎるんですよ。ゲームという流通が「売れるかどうか」ではなくて、「何本出荷できるか」で結果を判断する構造自体に問題があるのかも知れません。

    Q:ドラクエもGCで発売されることが発表される?
    A:Yes 51%, No 49%

     確かに「DQ8」の画面写真は「GCっぽい」と感じた人が多かったようですし、Yesが僅かに上回ったのは希望的観測、反骨精神旺盛なドリマガ読者のGCへの同情票という意味合いが強い気がする。しかし、実際問題としてスクウェア・エニックスにはSCE資本が引き継がれる事になるため、GC版DQ8実現の可能性はゼロでしょうね。FFクロニクルのような外伝的新作ならまだしも、DQのような戦略商品をSCEが手放すはずがない。例え発売が何年先になろうとも、PS3に間に合わなかったとしても、「PS2で(いつか)出します」と発表するだけで十分に商品価値があるのだから。

     「白詰草話」の声優キャスティングに絶句…ああ、金がある所は羨ましいね!(怒)でも、このくらいの大御所クラスになると、むしろ問題なのは金よりもスケジュールかも。どうせ「2・3日で全部の台詞録り」とかで済ませるんだろうけど、どんなに有名実力派声優を起用しても、そんなやっつけ仕事では「役に合った演技」なんて出来るわけがない(豪華キャストのゲームに限って声の演出面でガッカリさせられることが多いのはそのため)。ま、多部田のやることだからしょうがないか(なげやり)

     【週刊ファミ通 1月31日号(vol.737)】 エンターブレイン 
     自社製品にも関わらず、ファミ通クロスレビューで企画の全面否定とも取れる発言まで飛び出した問題作「機動新撰組 萌えよ剣」の発売初週のデータは…なんと、載っていません!「TOP30圏外」という予想を更に下回る結果には、このゲームを企画段階から全面否定してきたさすがの私も驚きを禁じえない。TOP50まで表示してくれる電撃オンラインの週間売上ランキングで調査してみると、「初週:36位、13,411本」「2週目:圏外(2週目の50位は3,788本だから、少なくともそれを下回るということ)」という、惨憺たる結果に…最終実売は2万本にも届かないだろう。どうやって高橋留美子と広井王子へのギャラを払う気なんでしょうねぇ…

     ファミ通独占、「ソウルキャリバーII」家庭用3機種同時発売速報。PS2版には「三島平八」、GC版には「リンク」、Xbox版には「スポーン」、というように機種ごとに独自のゲストキャラを入れるという、とんでもない仕様になっています。さすがは「過剰サービス移殖の鬼:ナムコ」! でも、プログラマの観点から最も評価したいのは、あの3機種すべてで同じ色味を完全再現していること。これは賞賛に値する「良い仕事」だと思います。


    ■COLUMN

     【日本語の正しさとは?】 
      私は英語が嫌いです。

     「人権と自由主義と市場経済という正義の名の下では、いかなる文化侵略も正当化される」というアメリカニズムが嫌いだから、という個人的な理由は、それはあくまで二義的なものです。

     私は大学時代、日本語の構造研究をしていました。そのおよそ理系の情報学科とは思えない研究分野は、いわゆる「機械翻訳」の基幹技術として研究されていたものであり、私が所属していた研究室の教授は、その学問分野における”権威”でした。残念ながら私は大学院に進まずに(成績上ではまったく問題なかったのだが)就職してしまったので、あまり深い研究はできませんでしたが、研究を進めて行く中で分かった事は、「日本語と英語は根本的に相性が悪い」ということでした。

     S+V+O+C, S+V+O+O、などのように単純に文法が定まっている英語に比べて、日本語の文法は遥かに複雑です。文末を数文字変えるだけで文意がいくらでも変えられるし、修飾の前後関係の自由度も非常に高い。英語は「26文字のアルファベットと数字」くらいしか使わないが、日本語は「ひらがな、カタカナ、漢字(音読み、訓読み)、数字、英文字」というように圧倒的に数が多い。その他にも、尊敬語・謙譲語などの活用文法、和製英語や漢字の当て字、最近ではネット用語やアスキーアートというように、表現の幅は無限と言っても過言ではない。しかし、その豊かさが日本語を世界で最も難しい言語にしてしまったわけであり、翻訳にはこれほど向いていない言語はありません。

     しかし、日本語はその自由な構造にこそ美しさがある、と私は思います。平板な文法に縛られて文字の表現力が弱い英語を基幹とする英語圏の文化は、演劇や映画などの視覚表現へと走らざるを得なかった。それに対し、日本語は言語そのものを楽しむかのように時代に合わせてその姿かたちを変えていった。あらゆる可能性を取り込んでどのようにも変化できる柔軟さが、今日の「日本語」を作り上げてきたのだが…

     「日本語の乱れ」が論じられるようになって、もう何10年にもなりますが、最近はその論点が少しずれてしまっている気がします。私は「日本語はいついかなる場合でも正しく文法通り使うべきだ」とは思いません。その場に適した活用ができる懐の深さ、それが日本語の大きな魅力なのですから。新しい言葉が生まれてくること、新しい文法が生まれてくること、それは大いに結構。しかし、文法のすべてを無視してもいいとうわけではない。何事も「基本」を知らなければその「ズレ」から生まれる面白さの理由を知る事もない。そして、活字離れが進んでしまい、「文字と口語」の境界線が曖昧になってしまい、正しさの基準となるべき指標がどこにもない。それが「言葉の乱れ」の本当の問題です。

     私は正式な「日本語言語体系文法」の間近にいたので、いくらでも文法通りの日本語を書くことは出来ますが、時と場合に応じて、その文法を意図的に叩き壊して文章を書いています。最近はGM研にも、中国や台湾・EU・アメリカなどからもアクセスがありますが、私でさえ翻訳できない文法が外国語圏の方に、私が意図するべき内容が正確に伝わっているかどうか、大いに不安ではあるのですが…しかし、信念を曲げてまでして翻訳版を作ろうとは思いません。それが日本語研究に携わった者の維持であり、未来へ言葉を繋ぐ世代の務めなのですから…

     英会話大いに結構。異文化コミュニケーション大いに結構。でもその前に、もう少しだけ自分の国の文化と言語にも愛着と誇りを持って欲しいです。


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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