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週刊GM研 Vol.84
2003/03/08


【News Headline】
  • 5時間連続ゲームプレイ中、脳死に
  • 【mini Review】
  • 漫画
  •  : 週刊石川雅之
  • 雑誌
  •  : ドリマガ 3月21日号(vol.377)
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 3月21日号(vol.744)
    【COLUMN】
  • 連載:ギャルゲーは倒れたままなのか?(第3回)

  • ■News Headline

     【5時間連続ゲームプレイ中、脳死に】 
     http://www.zdnet.co.jp/news/0303/05/nebt_23.html

     中国・武漢の大学でコンピュータ関連を専攻している唐さんが2月27日、ネットカフェで約5時間にわたってゲームをプレイしていたところ、頭痛で倒れて病院に搬送。意識不明と呼吸停止で脳死と診断された。記事ではゲームとの因果関係は触れられていないが、韓国では昨年、86時間連続でネットゲームをプレイし続けた男性が死亡する事件が起きている。

     「5時間で倒れるとは軟弱な!貴様それでも軍人(ゲーマー)か!」と、記事を読んでまずそう考えてしまう私は、骨の髄から真性のゲーム野郎のようです… さて、今回の事件についてですが、情報が少なすぎて判断に苦しみますが、常識的に考えて5時間連続でゲームをしても人間は滅多なことでは死にません。考えられるケースとしては、

     a)この大学生が何らかの持病を抱えていた
     b)徹夜明けなどで既に体調が悪かった
     c)ゲーム中に脳死してしまうほど衝撃的な出来事があった

     これは想像ですが、a〜c、そのすべてが当てはまるような気がします。特に、c)に関してはネットゲームではとても起こりやすい現象です。対人を相手にするネットゲームでは予想外な出来事が起きる確率が高い。それにより極度の興奮状態に陥ったり、激しいストレスに苛まれたりもするのだ。こういう事件では医学的な見地から「ゲーム性悪説」が論じられがちですが、その時どんなゲームをしていたか、ゲームの中でどんな事象が発生していたか、そこにこそ事件の真相究明の鍵があると思います。


    ■mini Review

     【週刊石川雅之】 石川雅之/週刊モーニング 
     ひさしぶりに漫画の衝動買いをしてしまいました。ジャンル的には「読み切りのシュールドラマ」にあたるようですが、どうもそれだけでは割り切れない、不思議な面白さがこの作品にはあります。全作に共通して登場する同デザインの女の子の目に力があって妙に生き生きとしていているし、哀愁を誘うオヤジキャラの生々しさと妙なこだわりもいい雰囲気を醸し出している。その独特のテイストは主人公がニワトリになっても変わりません。かと思えば、肉体労働者が飯を食いながら延々と女の趣味を語り合ったり…週替わりで様々な顔を見せてくれます。うーむ、どうにも言葉ではこの作品の魅力のすべてを伝えきれません。気軽に週刊誌で読んで読むのもいいけど、できれば単行本で連続して欲しいです。その方が、一発芸では終わらない石川ワールドの魅力をより強く感じられると思います。

     【ドリマガ 3月21日号(vol.377)】 ソフトバンク パブリッシング 
     3号連続プチ週刊化の第2週目。臨時増刊号扱いなので、いい加減な書店では発注を忘れたり、先週号が店頭に並んだままだったりもしますが… レギュラー週に比べて若干ページ数が少ないのは致し方ないとしても、サクラ大戦のポスターが付くから590円という価格設定は如何なものでしょう?サイズも観賞用ポスターの標準であるB2ではなくA3だし、折り目も気になるし…そもそも、特典欲しさにドリマガを買う人はいないので、販促効果は期待できないと思うのだが…(漢は黙ってセガだから、という武士(もののふ)読者層しかいないから)

     「ドリマガ全機種読者レース」に、「思い想い出にかわる君」のDC版が153位:8.566で初ランクイン。発売から3ヶ月以上しないと有効投票数が集まらないというのも寒いが、思いっきりタイトルを間違えて紹介されているのはもっと寒い。ギャルゲーに甘いドリマガでは、8.566はほぼ「落第」と言える点なのだが、個人的な評価ではそれでもまだ高すぎると思う。ランキングの正常化のため、自ら清き一票を入れて修正する必要がありそうですね。

     サクラ大戦インタビューで、あかほりさとる登場・・・ツッコミどころは書き切れないくらい多量にありますが、いつものビックマウスと自画自賛振りに呆れ果ててしまったので、活字にする意欲が全く湧きません。でも、1つだけ紹介しておきましょう。「サクラ5には作家生命賭けてます」…って、そのわりには他の作品で保険かけまくってますね。ビックネームの道連れにされるメーカーの迷惑も少しは顧みてはいかがでしょう?

     【週刊ファミ通 3月21日号(vol.744)】 エンターブレイン 
     今週から週刊ファミ通ミニレビューのコーナーは、近所のコンビにから立ち読みでお送りします。購読を止めてみて改めて誌面の質の低下を再認識できたし、それに、限られた時間内の一発勝負という立ち読みの緊張感が、分析批評には良い方向に作用しているようです。

     まずはセガとの事業統合発表で注目を集めている、サミーの里見社長インタビューの分析から。要約すると、事業統合後の新社名は未定。製品のブランドにはダブルスタンダードを採用し、セガとサミーのブランド名を使い分ける。分社化してクリエータに経営を任せたのはセガの大失敗だ。マーケティングはサミーに任せろ! …と言ったところでしょう。事実上の経営権譲渡とも言えるこの事業統合、生え抜きのセガ戦士たちとの間に軋轢を生むのは避けられない?(新筐体「アトミウェイブ」の、1プレー10円でも利益が出る、という謳い文句の真偽の程は如何に?)

     いよいよ3月13日に発売される「FFX-2」。ファミ通クロスレビューは「9(浜村)・8(嵐山)・8(奥村)・9(羽田)」というように、ちょっと意外なくらい平凡な結果になっています。コメントを分析してみると「続編だけど、もう別物」という論調です。大幅に変わった戦闘システムは好評だが、FFらしからぬ突き抜けたノリや女の子を前面に出した「あざとさ」には懐疑的にならぜるを得ないようですな。ま、私としては、ユウナ役の青木さんとレン役の倖田さんがゲーム中で歌を歌う、という仕様を聞いた時点でゲンナリしてるんですけどね…(RIKKIさんの「素敵だね」がFFXの7割だ!と公言して憚らない男より)


    ■COLUMN

     【連載:ギャルゲーは倒れたままなのか?(第3回)
    「PCエロゲーの家庭用移植が招く死に至る病」】
    前回の記事

     かつては最盛期で50万人規模の市場を形成した家庭用ギャルゲー市場だが、「ときメモ」以降のコナミ商法によって、遊び手はグッズの囲い込みで購買力が圧迫され、開発側は高騰する開発費と半減し続ける販売本数により人材が流出し、すっかり荒廃してしまった家庭用ギャルゲー市場… 

     それに対し、「家庭用ギャルゲーへのアンチテーゼ」という追い風を受けたPCギャルゲーは、「To Heart」や「Kanon」などの名作を生んだ反面、あまりにも特殊化しすぎた強烈な「萌え」という表現の追求が、遊び手の選別と限定へとつながり、PCギャルゲーの市場規模はある時期を境に減少へと転じてしまったのです。

     しかし、PCギャルゲーのメーカーは小規模で資金力がない場合が多く、コナミのようなグッズの大量投下によるファンの囲い込み、などいう芸当は不可能である。そこで台頭してきたのが、家庭用移植を担当する「ギャルゲーブローカー」という存在です。衰退したとはいえ、未だに家庭用ギャルゲー市場には強力な購買力を持った顧客がいるし、社会的認知度の面での旨味も無視できません。それに、ギャルゲー市場の拡大が望めないなら、限られた客から可能な限り何度も金を巻き上げるしかない。縮小再生産でも確実な打率を期待する、その格好の受け皿として、再び家庭用ギャルゲーにスポットライトが当たることになったわけですが…

     しかし、そこで問題になってきたのは、最初から家庭用移植を前提とした露骨に狙った作品作りが、PCギャルゲー界に乱立するようになったことです。エロゲー本来の性表現をあらかじめ切り離し可能な仕様で製作し、発売前からパブリッシャーと組んでプロモーションを展開してグッズを売りさばき、同人界を巻き込んでユーザーを「信者」化し、ブランドの価値を高めて移植権利でウハウハ…という流れが形成されてしまいました。移植権利を巡るPCブランドの囲い込みや暗闘も激化する一方です。

     現役で生き残っている家庭用ギャルゲーマーの多くが、家庭用オリジナルへの飢餓感からPCギャルゲーに片足を突っ込まざるを得ない現状では致し方がないことですが、現在、家庭用ギャルゲーにおけるオリジナルと移植の市場規模比率は2:8だと言われるまでに、その侵食は拡大しています。予約特典のテレカの絵柄が違うだけの通常版と限定版を両方買わせようと特典で煽ったり、移植版を多機種同時発売したり…そんな常軌を逸するえげつない販売戦略を取っていれば、ただでさえ狭い市場が更に圧迫されてしまうのは自明の理です。

     そして、哀しい事に、そんな状況でも生き残れるように、メーカーの体質も遊び手の価値観も変質してしまいました。「萌え」というのは非常に特殊な嗜好だと思います。濃くすれば一般性を失い、薄めれば存在感が無くなってしまう。ギャルゲーという狭い世界でしか芽生えない特殊な感情なのかも知れません。しかし、他者に理解されないからと言って世界を閉じてしまうことは、ゲームにとって「負け」を意味するのではないでしょうか?

     次週、「メディアミックスがギャルゲー業界を滅ぼす?」へ続く


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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