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週刊GM研 Vol.83
2003/03/01


【News Headline】
  • 米マイクロソフトがセガの買収を検討?
  • 【mini Review】
  • 書籍
  •  : ガンパレードマーチ シナリオブック 夢散、少女、英雄幻想
  • 雑誌
  •  : ドリマガ 3月14日号(vol.376)
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 3月14日号(vol.743)
    【COLUMN】
  • 連載:ギャルゲーは倒れたままなのか?(第2回)

  • ■News Headline

     【米マイクロソフトがセガの買収を検討?】 
     先日、電撃発表された、セガとサミーの事業統合の一件ですが、その舌の根も乾かぬうちに、またしても新聞筋からどえらいニュースが飛び込んできました。それは、かねてから噂のあった米マイクロソフトとエレクトロニック・アーツによるセガ買収に関するものでした。セガもマイクロソフトもこの報道を否定しているが、マイクロソフトが米投資銀行に買収の可能性について調査するよう依頼しているのは事実であり、数週間のうちに、両社の幹部が話し合いを持つ可能性も否定出来ない。

     サミーとの事業統合についても、業界内部どころか社内の幹部でさえ知らされていなかった。得てしてこういうトップ合意は見切り発車で行われるものであり、実務レベルの統合作業の段になって問題が明らかになるものだ。セガバンダイのようにご破算になった前科があるだけに、しばらくは予断を許さない状況が続きそうです。


    ■mini Review

     【ガンパレードマーチ シナリオブック 夢散、少女、英雄幻想】 
     延期に延期を重ねてきたガンパレードマーチのドラマCDのシナリオブックがようやく発売されました。このドラマCDのシナリオはゲームで使われなかった没シナリオなんですけど、没シナリオでもここまでやってしまえば本シナリオよりも面白く見えてしまうから不思議ですね(本シナリオはゲームという制約上、シナリオの伝達力に問題があるだけなのかもしれないが)。で、このシナリオブックですが、時間をかけただけあってかなり良い出来栄えになっています。ガンパレ特有のセンスのいいセリフがノーカットで完全収録されているし、ガンパレ的専門用語の注釈満載だし、ドラマCDでも明かされなかった幻のシナリオ3・未来篇も収録されており、まさにガンパレ関連商品のファイナルを飾るにふさわしい本に仕上がっています(TVアニメはまったくの別物なので数には入れていません)

     【ドリマガ 3月14日号(vol.376)】 ソフトバンク パブリッシング 
     今週から3週連続発行の”プチ週刊”がスタートしましたが、週刊でも誌面の濃さはいささかも損なわれていません。PS2版「サクラ大戦」怒涛の47P大攻略も良かったし、「斎藤由多加のシーマンとドリームキャストの思い出」は、同種の記事を掲載している週刊ファミ通よりも面白かったし、その中でも小島秀夫&松野泰己の通称「天才対談」がとても面白かった。私は、この両氏をゲーム業界で数少ない「本物の天才」だと認めていますが(天才≠人格者≠経営手腕)、さすがに最近の小島監督のメディア露出の多さには、ちと辟易ぎみです。さすがに、同じ号に2回も対談で出てくるのは如何なものか>小島監督

     さて、ドリマガでは1ページだけの紹介となった「トゥルーラブストーリー サマーデイズ アンド イエット...」ですが、なぜかファミ通とは違う画面写真が2枚出ていました。有森さんとの会話画面では、相変わらず「・・・なんですって」という中身を省略した会話になることが判明。もう一枚、篠坂さんの画面写真はツッコミ所が満載です。どんな場面で使う気なのか興味は尽きませんが、そもそも第一弾の紹介ビジュアルで出すような絵ではないと思うのですが…

     【週刊ファミ通 3月14日号(vol.743) エンターブレイン】 
     ここ何週かに渡って継続審議されてきた「週刊ファミ通購読中止法案」ですが、スクープやインタビューやTLS情報で決議を先送りしてきたものの、しかし、今週号で遂に全会一致で法案が可決されてしまいまい、約10年以上に及んだ購読の歴史に終止符が打たれることになりました。今後はその週の内容次第でその都度購入の是非を判断することになりますが、ここ数年は理由も無く義務感と惰性だけで買っていたので、これからは、よほどのことがないと購入の動機には結びつかないと思います。

     しかし、このコーナーを存続させるために、気になる記事はすべて立ち読みで情報収集をする必要がります。不思議なことに、こうして立ち読みしている方が記事を記憶して内容を吟味できるし、普段なら読みもしないページまで読んでしまう。これはおそらく、買ってしまうと「いつでも読める」という油断が生じるからだろう(実際には、雑誌を読み返す事なんてありえないのだが)。ま、これで年間約17000円の予算が浮いたわけであり、このお金で新作ゲームを3本買った方がよっぽどゲーム業界のためになるというものです。

     さよならファミ通…


    ■COLUMN

     【連載:ギャルゲーは倒れたままなのか?(第2回)
    「Leaf、Key、PCエロゲーブランドの勃興」】
    前回の記事

     「ときメモ」の登場によってもたらされた空前の活況に沸いた家庭用ギャルゲー市場。しかし、本体となるべきゲームを進化させようとはせず、キャラクターグッズを大量投下する強引なコナミ商法によって遊び手の購買力は圧迫され、それがひいては同ジャンルの他社製ギャルゲーの没落へと繋がってしまった。新興タイトルはシリーズを重ねるごとに販売本数を半減させてしまい、マイナー路線を打ち出して狭くても確実な層を確保することでしか存続できない、そんな厳しい時代を迎えてしまったのです。2万本で上出来、3万本で大ヒット、などという目を覆いたくなるような惨状、それは現在進行で続いているのです。

     しかし、あの時には確実に存在した50万人もの「ギャルゲーゲーマー」たちは、一体どこに行ってしまったのか?一過性のブームが終われば去っていく人がいるのは当然の理だが、ことギャルゲーというジャンルに限ってはその一般常識は当てはまりません。なぜなら、その味を一度知ったら容易に離れることなどできない高い中毒性を持っているからです。そう、彼らは消えてなくなったわけではなく、ただ単に目を向ける方向を変えただけなのです。そして、その1つが「PCエロゲー」だったわけです。

     「ときメモ」以前にも、パソコンゲームにはエロゲーというジャンルが存在しました。しかし、当時はPC98-21などの限定された環境でしか遊べないものであり、一部のブランドを除けば1万本どころか1000本規模という零細市場に過ぎませんでした。その状況が一変したのは、Windowsが普及して一般人がパソコンを使い始めたという環境変化と、「To Heart」の大ヒットによってLeafというブランドが成立した事象を抜きにしては語れません。

     Leafはそれ以前から「ビジュアルノベル」という独自ジャンルで注目されていたわけですが、良い意味で「ときメモ」の影響を色濃く受けた「To Heart」によって、家庭用ギャルゲーから流出したギャルゲーゲーマーの取り込みに成功し、純愛系PCエロゲーというジャンルを確立し、Leafの名は一大ブランドへと急成長を遂げました。

     これ以降、PCエロゲーと言えばほぼ例外なくノベルスタイルのアドベンチャーゲームを指し示すようになりました。コナミ帝国の支配によって没落していった家庭用ギャルゲー市場からは、次々とPC業界への人材の流出が始まりました。ハードの加速度的な進化によって高騰の一途を辿る家庭用の開発費とは違い、PCエロゲーでは少人数・低コストで開発でき、商品単価が高くて購買力が高い固定客がいる。冷静に考えれば、これほどオイシイ儲け話はありません。

     しかし、固定されたシステムの中で独自色を出すことほど難しいことは無い。少人数ゆえの独り善がりな作品、アマチュアに毛の生えたような乏しい技術力、まともな宣伝さえできない資金力…そんな数あまたの3番煎じ、4番煎じの死屍累々の果てに、1999年に登場したkeyブランドの「Kanon」は、芸術の域まで極まった音楽演出とキャラクターへの「萌え」という概念を前面に打ち出すことで、PCエロゲーの概念に大きな変化をもたらすことになり、Leaf、key、この両者は「葉鍵系」と呼ばれてギャルゲー業界の双璧として並び称される巨大ブランドとなりましたが…

     たが、しかし、その両者が確立したスタンダードが、ギャルゲーというジャンルをまったく別のものにしてしまったのも事実です。その文法を模倣したブランドたちには、奇抜なテーマと世界観と萌えるキャラクターを作ることがギャルゲーそのものだ、という誤解が蔓延し、感動と奇跡が大安売りされ、自己を投影する疑似体験ではなく、単なる他人の物語となり… 百花繚乱のブランド乱立の中、売れるゲームとは「原画やキャラデザが良くてグッズ・メディア展開で上手く立ち回る大手ブランド」に過ぎず… 強い刺激で盲目化された「信者」だけを相手にするジャンル、その閉塞感は日を追って増すばかりです。

     かくして行き詰まってしまったPCエロゲーが生き残りのために選んだ道、それが「家庭用移植」だったのです。しかし、それが更なる深刻な事態へとギャルゲーを追いやってしまうのでした…

     次週、「PCエロゲーの家庭用移植が招く死に至る病」へ続く


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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