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週刊GM研 Vol.61
2002/08/31


【News Headline】
  • 日本プロ野球選手会が肖像権侵害でコナミと日本プロ野球機構を訴える
  • 【mini Review】
  • CD
  •  : 任意ラヂヲ CD Edition -Phase 01,02-
  • 雑誌
  •  : Game Wave DVD vol.24
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 9月13日号(vol.717)
    【COLUMN】
  • メディアミックスがゲーム業界を滅ぼす(その2)

  • ■News Headline

     【日本プロ野球選手会が肖像権侵害でコナミと日本プロ野球機構を訴える】 
     労働組合日本プロ野球選手会は8月26日、プロ野球選手の肖像権が侵害されたとしてゲームソフトメーカーのコナミと日本野球機構を相手取り、ゲームソフトの販売差し止めなどを求める訴えを東京地裁に起こした。選手会は訴えの中でコナミに対し、ゲームソフトの販売差し止めを求める一方、選手の肖像権をゲームソフトに使用することに関し、使用許諾権が機構側にはないことの確認を求めた。

    日本プロ野球選手会の訴えの詳細

     プロ野球選手の肖像権に関しては統一契約書第16条(別項)に基づき、各球団に帰属するとされている。機構側はこれがゲームソフトにも適用されるとの判断から2000年4月にコナミと3億円で、3年間の肖像権の独占使用契約を結んだ。しかし、選手の肖像権は選手個々が有するとする選手会はこれに強く反発。2000年11月20日に肖像権の自主管理を機構側に通告し、今年3月と4月には独自に公認したゲームソフトがスクエアなどから既に販売されている。選手会側は「独占契約がネックとなり多様なゲームソフトが発売されにくくなり、プロ野球人気及び選手の権利に重大な影響を及ぼす」と主張している。

    今回の訴えに対するコナミの見解

     今回の件に対してコナミはHP上で「コナミとしては、この問題が野球機構および選手会との間で円満に、かつ迅速に解決されることを強く希望いたしております。」と、あくまでこれは機構と選手会の問題であるというスタンスを取っています。

    今回の訴えに対するコナミの見解2

     しかし、数日後にコナミがHP上で示した「家庭用プロ野球ゲームソフトの発売状況について」でコナミが独占契約を締結した2000年以降「発売作品総数はそれ以前よりもむしろ増加傾向ある」として自らの正当性を主張しています。でも、この数字のマジックの裏には、煮え湯を飲まされた他社メーカーの存在がありました。スクウェアはかつて「劇空間プロ野球」ではコナミとのサブライセンス問題がこじれて発売延期を強いられ野球シーズンの旬を逃す破目になり、「日米間プロ野球」ではユニフォーム等の公認が取れず架空の球団名・ユニフォームを使うという苦肉の策を強いられました。

     そもそも「3年間で3億円」などというはした金で権利を独占できるという自体がおかしいのではないでしょうか?サブライセンス契約がいかなる内容であるかはトップシークレットなので知る術はありませんが… 日本の選手会は大リーグのようにストライキをちらつかせて交渉することはしないでしょうし、両者の主張は完全に平行線であり最高裁まで争いそうな勢いです。ここで焦点となるのは、今年度で期限の切れるコナミの独占契約について、あくまで独占契約を継続するのか?それとも選手会に譲歩して自由競争に戻すのか? 長期化する問題に対して機構側がどうするのか?今後とも注意深く動向を探っていくとしよう。


    ■mini Review

     【任意ラヂヲ CD Edition -Phase 1,2-】Triumphal Records 
     とらのあな難波店の3F同人CD売り場をうろついていると、店内放送で流れていたCDにひと目(聴き)惚れ!思わず衝動買いしてしまったのが「任意ラヂヲ CD Edition -Phase 01,02-」の2枚です。2ch用語と放送禁止用語が満載でオタク文化を茶化し倒す、あまりにも強烈な毒電波CDです。どうやら「あれ以外の何か」という同人発祥のプロジェクトから生まれたネットラジオのようなのですが、詳しいことはネットで調べてもあまり分かりませんでした(7月7日に秋葉原のメッセサンオー前で行われた路上ゲリラライブで、万世橋警察が激怒した事件はいくらでもヒットするんですけどねぇ…)。もっと詳しいことが分かったら、またこのミニレビューで取り上げようと思います(つづく、のか?)

     【Game Wave DVD vol.24】 エンターブレイン 
     これまで一部の書店でのみで特典として付いてきた特製DVDケースですが、、先月号から雑誌に標準でDVDケースを挟み込む形式になりました(その他にも少し前に人事変更があってからというもの、編集方針がやたらとB級臭くなったのが気になりますが…)。

     「浜さん光のすげぇ〜イイ話」では伊集院光の「HALO自宅16人対戦計画」に大爆笑。50mのLANケーブルで1階と2階のテレビを繋いで8人対戦をしている事はファミ通のコラムにも書いてあったが、さらに寝室のテレビとかみさんの部屋のテレビをも狙っているらしい。「でも、その前にかみさんを撃たなくちゃいけない。強敵だ(笑)」

     「アメザリのGM向上委員会」あいかわらず安い芸人使ってるなぁ…次号打ち切り? 何気に「アーミンのお部屋」もお休みだし、惰性で買い続けるのも厳しい内容になりつつある。予算が無いのは分かりますが、内輪ネタならそれ相応のやり方があるのではなかろうか?(良くも悪くも、ファミ通はタレントの宝庫なんですから)

     【週刊ファミ通 9月13日号(vol.717)】 エンターブレイン 
     まずは「週間売上TOP30」の分析から。合併号の影響で2週間分のデータになっていますが、注目すべきは13位の「悪代官」と14位の「AIR」。な、なんと!オタク界最強のギャルゲーに、我らが(?)愛すべきバカゲーが販売本数で上回るという驚愕の結果となっています。「AIR」がDC版からの単なるベタ移殖版だとしても、「Key信者」をも凌駕するインパクトが「悪代官」にあったことが数字で裏付けられたのです(なぜか、ザ・プレ2の集計結果では逆の結果が出ているんですけどねぇ…(集計対象店の傾向の違い?))

     はやのん先生の「のーてんプレイガール」の隔月漫画枠の後釜は…「なし」…(怒)それでいいのかファミ通よ?!なのに特別定価350円?センスのないアイドルグラビアや使えない攻略小冊子を付けるくらいなら、本業の記事の方をなんとかせんかい!(広告のインパクトに負けるような記事ばかりで、まともに読めるのは一部の連載記事だけ。いやはや、嘆かわしい…)

     表紙裏の広告に「神宮寺三郎Innocent Black」が載っていましたが、その下部に注目。「コナミマーケティング株式会社」って…あぁ、コナミの魔の手が神宮寺にまで… 本当に金の匂いのする所には抜け目が無い会社ですなぁ…(見事に「悪代官」もサポートして一発当てたしね)。まぁ、常日頃悪行三昧なんだから、こういう形で業界に役立てようとしている姿勢は評価してもいいかも知れません(実際にどの程度の見返りを要求しているのか?までは不明ですけどね)。


    ■COLUMN

     【メディアミックスがゲーム業界を滅ぼす(その2)】   
     今週のコラムは、「週刊GM研vol.47」のコラムで書いた「メディアミックスの弊害について」を踏まえた上で、さらに厳しく論を展開してみたいと思います(珍しくコラムらしいコラムですなぁ)。

     現在のゲーム業界の不況について、雑誌筋のお偉いさん達は「続編・シリーズものしか発売されない」という論調で語ることが多いのですが、確かに、ゲームの開発費は高騰を続けており(PS2の平均開発費は1億2千万円)、最低限売れる保証がなければ企画すら通らないのが現実です。最近は人気漫画のキャラクターをメインにした「キャラゲー」やガンダムもの

     メディアミックスの考え方も変化してきました。昔はせいぜいゲームの人気を盛り上げる・販促効果程度に行われていたサービスに過ぎなかったのですが、ゲームが売れなくなった今では、キャラクターグッズやドラマCDや版権などを事業として展開しないと、新作どころか開発費の回収すらままならないのです。

     そういう事情はアナリストとして見れば理解できなくもありませんが、無限の利益を生み続けると思われていたメディアミックスには決定的な問題点があったのです。それは、ユーザーが1つの作品の関連商品を次々と買い求めるため、ユーザーの財布が圧迫され、他のゲームに対して使えるお金が減ってしまう事です。結果として、グッズ屋などのゲーム関連周辺産業だけが成長し、逆に実際にゲームを販売する小売店とゲーム製作会社にとっては、メインとなる市場でのゲームの購買規模が縮小するという、慢性的な構造不況を招いてしまったのです。

     特に、実際にそのビジネスモデルに首までどっぷり浸かっていたギャルゲーでの有り様は酷いものです。過度にエスカレートさせた「萌え」によって、属性によって極度に細分化されてしまったギャルゲーは、もはやPCも家庭用も同人も境目の無い万人アマチュア市場となってしまいました。たまにヒット作が生まれると、ファンを大量のグッズで囲い込み、何度も何度も移殖を繰り返して金を搾り取り、ブランドそのものを神格化して「ゲーム内容を問わない”信者”」を育成しようとする。その結果が招いたものは、存在感だけが肥大化した業界と飼いならされたゲーマーのみ。未来に残せるものは何一つありはしません。

     華やかな外顔(づら)に隠れて、この深刻な病は着々と進行しています。しかし、いかなる時代にあっても希望は存在します。「悪代官」や「鉄騎」などのように無謀とも思える異色作も年に数本は出ていますし、同人ゲームに革命をもたらした「月姫」、たった1人で作り上げたインディーズアニメーション「ほしのこえ」、賛否両論を巻き起こしながら始まったネットゲームへの挑戦は手探りで続けられています。

     未来はバラ色ではないが、歎いていても何も始まらない。ゲームを変えるのはゲームだけであり、ゲームを作るのもゲームを買うのも人間であること、その事実だけは決して変わらないのだから。


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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