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週刊GM研 Vol.47
2002/05/18


Index
【News Headline】
【mini Review】
  • 同人誌
  •  : あずかんな大気A ゆ〜のす
  • 同人誌
  •  : 毒田モロ男のビンボーな生活 Dr.モロー
  • 同人誌
  •  : 指輪の約束 綾野貴一
  • 雑誌
  •  : ドリマガ vol.357
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 vol.702
    【COLUMN】


    ■News Headline

    【三大ハード値下げ戦争勃発!】  

     5月20日から開催される世界最大のデジタル・エンタテインメント・トレードショウ「E3(Electronic Entertainment Expo)」を目前に控えて、ゲーム業界は慌しい動きを見せている。まずは、14日にソニーが、PS2を北米市場で299ドルから199ドルに値下げすると発表。それに対抗して翌15日にマイクロソフトが、Xboxを199ドルで販売することを発表した。任天堂はまだ声明を出してはいないが、E3当日に大々的に対抗値下げ(アナリスト予想:149.95ドル)が発表されるとの見方が強まっている。

     さて、上記の話はあくまで北米市場での事であって、日本市場での価格改訂には微妙に温度差があります。PS2は29800円→オープン価格に変更、Xboxは34800円→24800円に値下げ、ゲームキューブにいたってはノーリアクションです。個別にその狙いについて分析してみましょう。

     まずはPS2についてですが、すでに国内1000万台を出荷して1人勝ち状態であり、今でも週間6〜10万台を順調に販売しているので、焦って動く必要はないと判断したようです(現実問題として、PS2はソニーグループの決算を支える屋台骨なので、ハードで利益が出るうちにちょとでも搾り取っておきたい、というのが本音でしょう)。オープン価格といっても、卸値が決まっている以上、販売店の自由に価格が設定できるわけではありません。実売価格は、25800円〜27800円前後になることでしょう。

     次はXboxについてですが、大胆に早くも1万円の値下げに踏み切りました。「週刊GM研vol.44」でも値下げの必要性を書いたばかりですが、まさか本当にやるとは思いませんでした。すでにXboxを買ってしまった人への補償手段として早期購入ありがとうキャンペーンを発表していますが、欧州での補償キャンペーンに比べて明らかにショボイです!コントローラで3500円、ゲーム1本で6800円にしかなりません。ずいぶん安い感謝の気持ちですねぇ(呆れ。さすがに、これで初回出荷分25万台は完売する…はずです(まだ限定版を売っている体たらくでは怪しいものですけどね)。

     ネットワーク戦略を発表しただけで値下げについてはノーリアクションの任天堂ですが、たとえE3で北米市場での値下げを発表したとしても、日本市場での今すぐの値下げは可能性は低いと思います。値下げのもっとも効果的な時期、夏休み商戦に投入される「マリオサンシャイン」に合せての値下げの線が濃厚でしょう。「値下げ待ち」による買い控えを防ぐために沈黙を守っているのでしょうけど、それはビジネスとしては正解であっても、消費者に対しては不誠実なのではないでしょうか?


    ■mini Review

    【あずかんな大気A】 ゆ〜のす / ゆ〜のす通信  
     「あずまんが大王」の同人誌は数あれど、その中で私内ランキングで不動のトップに輝く作品、それが「あずかんな大気」です。AIRのキャラをあずまんが大王に置き換えて、原作に通じる微妙な「間」と「ノリ」と、無理なくオリジナルを絡めるセンスが抜群に良い! シリーズは「6」まで出ていますが、今回は番外編「A」となっていて、あずまんが大王のキャラとの夢の(?)共演が実現! 「交換留学」でちょびっとだけ交わる2つの世界を、ザッピング形式で同じネタを両サイドで展開する構造が面白いし、ゆかり先生x晴子先生の暴走ネタも最高です! あずまんが大王が好きでAIRをやったことがある人なら、面白さ120%保証!読まなきゃ損です、いや、ホンマに。

    【毒田モロ男のリッチビンボーな生活】 Dr.モロー / モロモロ  
     コミケカタログの穴埋め漫画で御馴染みの(どんな紹介だよ!)漫画家「Dr.モロー」さんが,司書房のえっち漫画雑誌「コミックドルフィン」に連載している日記漫画です。商業誌連載なのに、なぜか単行本は同人誌扱いです(10年もやってるのに?)。今回の春レヴォでバックナンバーがすべて(1991〜2001年:計10冊)揃ったので、まとめて読んでみたのですが…お、面白すぎ、この衝動買い家族!(でも、実際に自分の親だったら絶対嫌だけど)。一番面白かったのは、「1997」の税務署(後で国税局にパワーアップ)との1件です。同人誌は無税収入と思い込んでると痛い目に遭うかも?(儲かってるのは一部の大手だけですけど)

    【指輪の約束】 綾野貴一 / 龍楽園  
     今回の春レヴォでの新規開拓枠、最大のホームランです!「みずいろ」の雪希シナリオエンドの続きを、日和サイドからの解釈でハッピーエンドを描いていますが、これが日和ストの私には完璧にツボにハマリました。イイ!実にイイ! 丸顔に微妙にアレンジされたキャラといい、巧みなトーンの使い方といい、一体どんな人が描いたんだろう!…って、よく調べてみたら、アンソロ界では常連さんだったんですね。私は基本的に商業アンソロは読まないので気付きませんでした。「Mizuiro Book Vol.1」と題されているので、他のキャラの組み合わせでシリーズ化されるようです。次のみずいろ本は秋の予定との事。楽しみにお待ちいたしておりますよん♪

    【ドリマガ vol.357】 ソフトバンクパブリッシング  
     ドリームキャストマガジンから「ドリマガ」にリニューアルして1周年を迎えました。総合誌宣言をしてどうなる事やらと心配していましたが、この1年はドリキャスが生産中止されたにも関わらず最後の底力を発揮してくれたので、ドリキャスマガジンの読者をつなぎ止めつつ、セガの総合ソフトメーカ化と歩みを共にする形で、緩やかな流れで総合誌への移行を果たすことができました。営業面でも黒字だったし、西村編集長もその功績で、ドリマガ、ザ・プレ、GMAESPOTを統括する総編集長に出世。

     今後の課題は、濃いセガ色を残しつつ、いかにして記事を一般化していくかでしょう。無理に部数を伸ばそうとして危ないネタ(セガいちetc)を自粛したり、週刊化してクオリティを下げて欲しくない。くれぐれも、兄弟誌「ラズベリー」がリニューアルして大失敗した轍を踏まないようにして欲しいですねぇ…

    【週刊ファミ通 vol.702】  エンターブレイン 

     
    ドラマティックサッカーゲーム日本代表選手になろう!
    (浜村)9 (谷塚)8 (戦闘)7 (カミ)8
    要するにサッカーのサウンドノベルですが、選択肢の文字出現パターンが斬新だったり、選択肢が目押しになっていたり、時間制限があったりして、試合の緊張感を上手く出しています。シナリオは怪我あり恋ありライバルありのスポ根もの。店頭デモ版では試合シーンしかできなかったけど、行動と結果が予想しづらくて「正解を求めるアドベンチャーゲーム」としても「思いのままに試合をコントロールするアクションゲーム」としても中途半端に感じてしまったのだが… 
    ※コメントの内容は私の主観によるものであり、ファミ通レビュアーとは無関係です。

     今週号の最大の見所は、近藤るるるの復帰作「たかまれタカマル」第二回、「S.M.L.の編集長がファミ通を「クソがっ!」と言って破り捨てたところ」です。連載本誌でこんなことをしていんでしょか(汗。これからどんな展開になるのかワクワクして見守りたいが、雑誌内雑誌批判としてちゃんと機能するかどうかは未知数です。

     「期待の新作TOP30」に、「悪代官」が29位に初登場!続編と誌面の露出度でガチガチに固められたこのコーナーでは、こういう「ネタゲー」が支持されるなんて、とても珍しい現象だと思います。作品発表以来、ずっとアンケートハガキに「悪代官」と書いてきた私としては、とても嬉しく思います(ちなみに、今週のアンケートには「かまいたちの夜2」「ユーディーのアトリエ」「悪代官」の3本を記入)。このままの勢いで大ヒットの予感が!?


    ■COLUMN

    【メディアミックスの弊害について】 
     今ではすっかり使い古された言葉になってしまった「メディアミックス」という言葉ですが、現在はすでに改めてこんな言葉を使わずとも、私たちの周りにはメディアミックス関連商品で埋め尽くされています。ドラマCD・フィギュア・トレカ・テレカ・ぬいぐるみ・ガチャガチャ・画集…

     ゲームがそれ単体で資金の回収が難しくなってくると、ゲーム会社は関連グッズの売上によって発生するライセンス料で元を取ろうとします。特にギャルゲーという遊び手が限られるくせに競争が世界一激しい世界においては、一度売れたらユーザーを大量のグッズで囲い込んでトコトン搾り取ろうとします(NECiのPCエロゲの家庭用複数機種移殖は「ヒットの後乗り」という、おたくの足元を見た憎むべき所業です)。

     無限の利益を生み続けると思われていたメディアミックスでしたが、実はこの仕組みには決定的な問題点があるのです。それは、ユーザーが1つの作品の関連商品を次々と買い求めるために財布が圧迫され、他のゲームに対して使えるお金が減ってしまう事です。結果として、グッズ屋さんなどのゲーム周辺産業だけが成長し、逆にゲーム販売店とゲーム製作会社にとっては市場が縮小するという、構造不況を招いてしまったのです。

     かくいう私も好きなゲームのグッズには目がありません。大して聴きもしないドラマCDとかも疑いなくポンポン買ってきました。しかし、ある日気がついてしまいました。そのゲームの本体価格に対して、グッズに使ったお金を比較計算してみると…(鼻血) 物によっては数十倍というものまであって、さすがにへコみました。そのために幾多の作品との出会いの機会を損失をしてきたかに思いを馳せると、人生をやり直したくなるくらいです!

     毎週大量のゲームが発売され、新作ゲームの商品寿命がわずか1ヶ月といわれるゲーム不況時代にあって、グッズ展開は商品寿命を延ばすためにどうしても必要なものですし、開発資金の回収も当て込んでいるし、ファンサービスとしても必要不可欠なものです(中には、自社製品にまったくやる気のない会社もありますけど)。しかし、行き過ぎたグッズ展開が自らの首を締めていることに、会社サイドもユーザーサイドも早く気付くべきです。

     1兆円産業、日本が世界に誇る娯楽産業、などと外面だけ良くなっても、その実態はすでに止めようもないほど進行した地盤沈下によって、いつ何時崩壊が始まってもおかしくない状況なのです。メディアミックスという利益の幻想に浸って、開発側が商品性を優先させてゲームそのものの可能性の希求を怠り、ユーザー側が自分の趣味しか追わなくなってゲームに面白さの発見を無くす… そんな未来を招く危険性を孕んでいることを、自覚して欲しいものです。


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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