逆転裁判3
GBA製作 : カプコン   2004年1月23日発売
 推理・法廷  法廷バトルアドベンチャー  14時間 
 企画・脚本:巧舟   プロデューサー:稲葉敦志

「逆転裁判3」とは?

 推理アドベンチャーゲームで「法廷バトル」という新ジャンルを確立した「逆転裁判1」、すべての面でスケールアップさせてシリーズの人気を不動のものにした「逆転裁判2」、そして、過去と現在の事件を結び、物語のすべての謎が明らかにされる「シリーズ完結作」という位置付けになっているのが、この「逆転裁判3」です。

 成歩堂龍一が「1」で解決したDL6号事件、「2」で解決した倉院流霊媒道の次期家元の座を巡る陰謀。そのどちらにも共通していたのは、失踪中の「綾里舞子」(真宵ちゃんと千尋さんの母)の存在でした。過去と現在が複雑に入り組んだその因縁は、かつて成歩堂も容疑者として証言台に立たされた「美柳ちなみ」事件にまでさかのぼり、思わぬ形で絡み合い、真実を曝け出すことになります。師匠である綾里千尋が初公判で立ち直れないほどのダメージを受けた事件とは? 成歩堂龍一に敵意を燃やす、全てが謎の仮面検事:ゴドーの正体とは? そして、成歩堂龍一が改めて思い知ることになる「弁護士」の意味とは? 逆転ドラマ堂々完結作。それが「逆転裁判3」なのです。

過去と現在とをつなぐ総決算作

 「2」の時もそうでしたが、今回も第1話を「若かりし日の綾里千尋編」にすることによって、シリーズを初めて遊ぶ人でも問題なくシステムを把握できるように、チュートリアルとして自然に演出する手法が使われています。しかも、この第1話は過去と現在を結ぶ上で非常に重要なポイントになっていて、実は、これは千尋さんにとって「2度目」の公判で、さらに以前の初公判で起きた事件とも大いに関連があるわけですが、敢えて時系列を逆転させて語られるシナリオ構造の妙があるからこそ、この作品によって謎が解明されていくダイナミズムを、より強烈に感じることができると言えます。

 システム面では「2」から特に変更はありませんが、キャラクターたちの濃さとバカバカしさは、新旧合わせて更にエスカレートする一方です。「天斎流マシス」を名乗って絵本画家(のタマゴ)になってしまった矢張といい、闇金融「カリヨーゼ」の社長:芝九蔵(しばくぞう)虎ノ助といい、レストラン「吐麗美庵(とれびあん)」のオーナーシェフ:本土坊(ほんどぼう)薫といい、相変わらず、すごいネーミングセンスを発揮してくれています。ダンボールの弁護士バッチを付けただけの”ニセ成歩堂”にアッサリ騙されてしまう裁判関係者といい、誰が淹れて手渡しているのか謎だらけのゴドーのコーヒーといい、色仕掛けで秒殺されてしまうサイバンチョ(裁判長)といい…笑いどころとツッコミどころが今回も満載です。果たしてイトノコ刑事の恋の行方は?

華麗なる逆転!すべての謎がひとつになるとき…

 逆転裁判は、まさに「法廷エンタテイメント」とも言うべき笑いのツボをしっかりと押さえた作品ですが、そこはそれ、決めるべきところでは今回もビシッ!と決めてくれています。特に、最終話「華麗なる逆転」は最高の出来でした。シリーズがこれまで培ってきた、人物の関係・特徴をフルに活用して、弁護士と検事という立場も、”絶対にあり得ないはず”という常識さえも逆転させてしまうことによって、帰ってきた御剣怜侍と狩魔冥という好敵手の存在によって、徐々に見えてくる、ただひとつの真実… そしてゴドーの真の目的と正体とは?(ネタバレになるので、これ以上は書きませんけど…)

 すべての謎がひとつになり、大逆転に次ぐ大逆転の果てに真実を掴み取った時、成歩堂龍一は弁護士という仕事の「本当の意味と重み」を知ることになります。しっとりと心に染み込んでくるような大きな達成感と、思わずニヤニヤと笑ってしまう小さな微笑ましさと、いつもの決め台詞で締めてくれる感動必至の大団円を、どうか見逃すことなかれ!

First written : 2004/04/21
Last update : 2004/08/21


「逆転裁判」キャラクター選評3に”くらえっ!”

※この選評は重度のネタバレで構成されています。このキャラクター選評は、逆転裁判シリーズ1〜3を通じた内容になっています。ゲームの楽しみを致命的に損なう恐れがありますので、ゲーム本編をすべてクリアした方、もしくは多少のネタバレも読み流せるという方のみ、白文字で隠されている部分をマウスで選択反転させてお読みください。なお、この注意書きを無視してネタバレ部分を読んでしまった場合の不利益に対して、GM研は一切責任は取りかねますので、くれぐれもご注意ください。

 ゴドー

 「3」のメイン検事。自称「完全無敗:伝説の検事」だが、検事局の人間でさえ誰も詳しい経歴を知らない。立場上では新人のはずだが、あまりにも堂々としているので、仮面を被っていることも、公判中にコーヒーを飲みまくることも誰もツッコめない。ちなみに、法廷中に飲むのは17杯までと決めているらしいが、では、一体誰がコーヒーを淹れて、彼に手渡しているのかは永遠の謎です。なぜか成歩堂のことを「まるほどう」と呼び間違え続ける。正体についてはあまりにもバレバレなのでここでは敢えて書きませんけど…その壮絶な生き様、カッチョ良すぎです!男もほれる漢というやつですね!

 美柳 ちなみ (みやなぎ ちなみ)

 成歩堂が学生時代に付き合っていた彼女。花柄の日傘とピンクのワンピースが印象的。法廷内なのになぜか彼女の周りには、いつもチョウチョが飛び回っている。オジサンを一撃で虜にしてしまう天使の微笑みの持ち主だが、心は般若・修羅そのものです。あまりにも複雑に入り組んだ人間関係であるため、この短い選評では表現のしようがないのですが、間違いなくこのシリーズ「最凶」のキャラクターでしょう。利用されただけの彼氏としての成歩堂の視点ではなく、千尋さんの視点で事件に対応できたから、善悪の主観での判断を誤るということがありませんでしたが、もしそうでなければ、彼女の恐るべき犯罪は完全に成立していたことでしょう。女の執念、恐るべし…

 星威岳 愛牙 (ほしいだけ あいが)

 自称「名探偵」。これまた凄まじいネーミングセンスですね。口癖は「ズヴァーリ!」。時代がかかった台詞回しで意外とプレイヤーからの人気は高かったりもする、不思議なキャラクターです。探偵の腕前の方はかなり眉唾物であるが、犯罪者としてはなかなかのものだったのかも。同時進行の裁判で、先に軽い刑を確定させてしまおうという壮大なトリックには、とても興奮させられましたよ。それを同時に解決してしまった成歩堂の方が、もっと非常識なのかも?

 天杉 希華 (あますぎ まれか)

 胸元まで開けたバイクスーツが良く似合う、自称:怪人☆仮面マスク「天杉優作」の奥さん。非常にサバサバとした性格で、曲がったことが大嫌い。人生にスリルを求めているらしいが、なぜ優作のような優男と結婚したのかは謎。仮面マスクだとは気づいていなかったようだが、優作の本質をどこかで感じるものがあったのであろう。というか普通気づけよ!と思わなくもない。もしかして天然が少し入ってるのだろうか?

 本土坊 薫 (ほんどぼう かおる)

  レストラン「吐麗美庵」のシェフ、兼店長。名前だけじゃなくてお店の名前まで、これまたすごいンネーミングセンスですね…須々木マコの再就職先でもあるが、店長は巨漢をくねらせて迫って来るオカマちゃんだし、料理の味の方は“本格的な変化球”で、しかも激高なので、当然お客はあまりいなくて多額の借金を抱えている。何しろランチセットが2980円(にくはちセット)ですからねぇ…そこまで不味いと逆に食べてみたくなるもの。誰か再現してくれないかなぁ。

 芝九蔵 虎ノ助 (しばくぞう とらのすけ)

 悪徳金融会社「カリヨーゼ」の社長。通称「ナニワのゼニトラ」。これもまた、すげえネーミングセンスです…業界では“闇金融のプリンス”と呼ばれ、一目置かれる存在らしいが、従業員のはずのうらみちゃんにはなぜか頭が上がらない。髪型が似ているというだけで、偽成歩堂になりすましたというけど、体格も肌の色も言葉遣いも何もかも違うのに、弁護士バッチはダンボールでこしらえたものだったのに、誰も気づかないというのは…いや、まぁゲームだし。ちなみに、カリヨーゼの経営理念は“三日坊主”。イミは『一度つかまえた客は、3日で丸ボーズにムシるべし』

 鹿羽 うらみ (しかばね うらみ)

 頭に包帯を巻いた黒髪の女の子。金融会社「カリヨーゼ」の社員で、取り立てと事務所の窓口を担当で、脅し文句は「今度いただけなかったら、つけますね。…火。」。芝九蔵を”トラさま”と呼んで慕っているようだが、芝九蔵にとっては鹿羽親分に抹殺されたくない一心でヘコヘコしているだけなので…なんだか気の毒に思えてしまったりもします。芝九蔵の出所まで一途に待っていてくれそうだから、そこで改心してくれる…といいなぁ。

 葉桜院 あやめ (はざくらいん あやめ)

 葉桜院の尼僧で、幼いころから預けられている。住職である“毘忌尼”さんのことを、母親のように慕っている。成歩堂のかつての恋人だった美柳ちなみと瓜二つだが、性格はまったく違います。それこそ天使・菩薩のような…成歩堂がかつて夢中になったあのときのままの笑顔で…成歩堂が最後まで付き合っていたちなみのすべてが嘘だと信じられなかったのも無理からぬことです。ちなみとあやめは、時々入れ替わりながら成歩堂と付き合っていたのですから。ただ単に証拠を隠滅するために利用しようとしたちなみの演技と、本気で好きになっていたあやめ。すべての謎が明らかになったとき、あんな事件後ではロマンスよもう一度という気分にはなれなかったのが少し心残りです。

 サイバンチョ (裁判長)

 法廷内における最高権力者…のははずなのに、他人の言うことに簡単に惑わされてしまう、お調子者でアイデンティティの希薄な爺さん。特に可愛子ちゃんのおねだりにはとことん弱い。しかし、ここぞという場面では正しいジャッジを行う的確な判断力を合わせ持っているというから、人間とは不思議なものですね。ちなみに、名前はないので便宜的にサイバンチョという愛称で表記させていただきました。