逆転裁判2
GBA製作 : カプコン   2002年10月18日発売
 推理・法廷  法廷バトルアドベンチャー  12時間 
 企画・脚本:巧舟   プロデューサー:稲葉敦志

「逆転裁判2」とは?

 「法廷バトル」という新ジャンルを確立して、しかも、わずか7人という少人数で製作された「逆転裁判1」でしたが、ユーザーによる口コミで評判が広がってスマッシュヒットとなり、CESA特別賞を受賞するという思わぬ好評を呼んだことで、続編の製作が決定しました。システムもドラマ性も、そして逆転裁判シリーズの肝と言える「バカバカしさ加減」も、すべての面でスケールアップして再登場を果たしました!

 前作で成歩堂に破れて失踪した御剣怜侍・失脚した狩魔豪に代わって、アメリカで弱冠13歳で検事になってから負け知らずという華麗なる経歴を持つ、新たなる最強のライバル:狩魔冥が新登場。愛用のムチで、弁護士も裁判長も刑事も証人も容赦なくしばき上げる強烈なキャラクターの登場により、法廷はまたしても踊りまくり、形勢は二転三転で逆転しまくり。それが、「逆転裁判2」なのです。

「サイコ・ロック」で更に進化したシステム

 今作では、探偵パートに新たに追加された、関係者が心の奥底に隠した嘘を見破る新システム「サイコ・ロック」と、「つきつける」コマンドで人物名も選択可能になったことで、推理モノとしての難易度が大幅に向上しました。このゲームでは、コマンド総当りというアドベンチャーゲームの文法は通用しません。探偵パートではLボタンでお手軽に「ゆさぶる」ことはできないので、手持ちの裁判記録の情報だけではなく、自分の頭の中で情報を整理して、いつサイコロックの解錠に挑むのかを判断する必要があるのです。また、ライフゲージ(?)が5段階ではなく、ポイント制になったことにより、重大な場面での1度の選択ミスや不用意な揺さぶりだけでも、一発でゲームオーバーになってしまう厳しさが良い緊張感を生んでいます。ひとつの証拠品であっても、状況によって新たな意味合いを持つ奥の深さは、推理モノとして本作が確実にレベルアップしている証明だと思います。

 その他にも、すでに敏腕弁護士としての実績がある成歩堂龍一を記憶喪失に陥らせることで、第1話をスムーズにチュートリアルとして楽しませる初心者に配慮した構成の上手さも際立っています。一応「2」から始めても問題のない作りになっていますが、物語の連続性を最大限に楽しむためには、「1」から順番にプレーすることを強くオススメします。

ドラマ性もバカさ加減も、すべてがスケールアップ!

 「1」でも特に好評だった、バカのバカによるバカバカしいバカげたバカさ加減(by狩魔冥)は、今作ではさらにエスカレートしています。ひととおりの乗り物にひかれ、ひととおりの食べ物にあたり、ひととおりの試験に落ちてきた「不幸の見本市」と呼ばれる須々木マコ巡査といい、法廷でもウケを取ろうとするピエロのトミーといい、前作でも大好評だった「トノサマン」は、「小江戸剣士ヒメサマン」を経て、「トノサマン・丙!(ヘイ)」で全日本ヒーローオブヒーローを受賞。そして、そのライバルは、忍者なのに真っ赤なギターがトレードマークの忍者ナンジャ!室町時代に自慢の美声でスターダムにのしあがるって…是非見てみたい(笑)

 …という、前作以上に余りにも濃すぎるキャラクターたちのおかげで、終始笑いっぱなしなのですが、それはそれ、笑いの中でも決めるところはビシッとカッコよく決めてくれます。かつて、御剣怜侍が検事という自らの使命に矛盾を感じたように、成歩堂龍一も弁護士としての使命の矛盾と限界に直面することになります。殺し屋に真宵ちゃんを人質に取られて脅迫され、明らかに有罪の依頼人を弁護して無罪にしなければならないという最大のピンチに現れたのは…(ネタバレのため自主規制) 笑いで温められた空気によって、劇的なシーンの興奮は何倍にもなって感じられることでしょう。

 「」への布石として一部明かされた、千尋さんと真宵ちゃんの実家の倉院流霊媒道の家元の座を巡る怨念と、DL6号事件の真相…過去と未来をつなぐという意味でも、「2」はとても良く出来た作品だと思います。

First written : 2004/04/20
Last update : 2004/08/21


「逆転裁判2」キャラクター選評に”待った!”

※この選評は重度のネタバレで構成されています。このキャラクター選評は、逆転裁判シリーズ1〜3を通じた内容になっています。ゲームの楽しみを致命的に損なう恐れがありますので、ゲーム本編をすべてクリアした方、もしくは多少のネタバレも読み流せるという方のみ、白文字で隠されている部分をマウスで選択反転させてお読みください。なお、この注意書きを無視してネタバレ部分を読んでしまった場合の不利益に対して、GM研は一切責任は取りかねますので、くれぐれもご注意ください。

 綾里 春美 (あやさと はるみ) 霊媒師

 “倉院流霊媒道”分家の娘として生まれる。真宵ちゃんの従姉妹にあたる天才霊媒師である。愛称は”はみちゃん”。真宵を実の姉のように慕っているが、母:キミ子の本家に対する怨念によって複雑な立場に。それにしても、はみちゃんが千尋さんを降霊させると、服が小さすぎるため胸元がとてつもなくエロくなってしまいます。あそこまで変化してしまって、法廷で「気のせいです」では済みませんよね(笑)古式ゆかしいというか、時代かかったというか…箱入り娘ゆえの純粋さで、成歩堂と真宵ちゃんの仲を完全に誤解していますが、そうでもしないと何も起きそうにない二人なので、そうして意識させてくれる相手というのは貴重なのかもしれませんね。喜んでピョコンと跳ねるアクションと、普段の聡明な気丈さとは裏腹の子供っぽい泣き顔は、逆転シリーズに不足がちだったロリ要素を補完には十分すぎる効果があったと思います。

 狩魔 冥 (かるま めい) 検事

 40年間無敗を誇った伝説の天才検事:狩魔豪の娘であり、アメリカ育ちの帰国子女。幼いころから父親の英才教育を受け、13歳で検事になってからアメリカ検事局では無敗を誇っていた。年下ではあるが、御剣の姉弟子にあたる。狩魔の名を貶めた成歩堂龍一(かならず本名で呼ぶ)を対決するために強引に来日した。敵方の弁護士だけではなく、証言者も裁判長さえも、トレードマークのムチでしばき上げ、法廷を恐怖に陥れる”恐怖の女王”ぶりを遺憾なく発揮するが、どんなに完璧な理論で追い詰めても食い下がって、粘りに粘って小さな矛盾を見つけて形成を逆転させしまう、成歩堂に不可解な敗戦を続けることになり…検事としてのアイデンティティを失って帰国しようとしていた冥を、御剣が諭した時にたった一度だけみせた、冥の少女としての泣き顔が…脳裏に焼きついてしまいました。マゾ属性の方にはベストフィットすること請け合いです。個人的には、御剣ともうちょっとイイ感じになって欲しかったんですけど、そういう恋愛的な要素は同人誌などで補完しましょう。

 綾里 キミ子 (あやさと みきこ) 霊媒師

 真宵ちゃんの叔母にあたり、真宵ちゃんの母「綾里舞子」の姉であり、春美ちゃんの母。全盛期の黒柳徹子もびっくりのアノすごい髪型は、重くないのだろうか?怒った時の白目も怖すぎです(震)。獄中からも執念を燃やして復讐を遂げようとする下りは「3」への布石であり、二作に渡って敵役を務める、ここまで敵らしい敵というのは、ある意味では珍しいかもしれませんね。ここまで思いっきりクロの犯人が仕組んだ完全犯罪を看破するからこそ、そのカルタシスはより大きなものになるのですから。

 須々木 マコ (すずき まこ)婦警、ウエイトレス

 成歩堂のファンであり、非番のときには傍聴にいくほどの法廷マニアの婦警さんで、一時期は糸鋸刑事の部下でもあった。メガネの似合う活発な女の子だが、その実、ひととおりの乗り物にひかれ、ひととおりの食べ物にあたり、ひととおりの試験に落ちてきて「不幸の見本市」と異名をとる。でも、本人がいたって前向きなので、言うほど不幸には見えないが、むしろ迷惑を被るのは周囲の人物?ちなみに、とんだ誤解で殺されてしまった彼女の恋人だった警官の名は「町尾守(まちをまもる)」です。これまた、すごいネーミングセンスですね(笑)彼女自身の名前もトリックに使われていましたし。警官をクビになってからは、”笑顔とメシを運ぶウエイトレス”として再出発を図るも、勤めた店が「吐麗美庵」だったのが運の尽き。これも不幸娘のなせる業でしょうか?

 亜内 武文 (あうち たけふみ) 検事

 「新人つぶし」という微妙な異名を持つベテラン検事。それって、自分より弱い相手にしか勝てないとい言っているようなものでは…?かつてはご自慢のふさふさリーゼントだった頭部は、若き日の千尋さんに敗戦したショックとともに抜け落ちてしまった。哀愁を誘う哀れなお人だが、大げさなリアクションとやられ役がなんとも似合う人でもあり、しかも何度も使えるので、そういう面では非常に起用しやすいキャラクターであると言えますね。

 マックス・ギャラクティカ (マジシャン)

 国際マジック協会のコンテストでグランプリを取ったゴージャスな魔術師。シルクハット、マント、白いバラの3点セットがシンボルマークで、口癖は「ゴージャス!」。キザで派手で傲慢なイメージで捉えられがちだが、実はバリバリの田舎出の生真面目な日本人であり、舞台に立つ前に牛乳を飲まないと緊張がとれない小心者だったりもする。ゲーム中では実際に、マックスのマジックがどんなものだったのか、見る機会がなかったのが残念ですが…

 荷星 三郎 (にぼし さぶろう) 俳優

 人気子供向けヒーロー番組、「大江戸戦士トノサマン」の着ぐるみの中で活躍するアクション俳優。長年売れない役者を続けてきたが、トノサマンの成功をきっかけに飛躍を目指し、「小江戸剣士ヒメサマン」を経て、念願だった子供番組の体操のお兄さんを務める。口癖は「恐縮です」。厳つい外見とは正反対の気弱な性格。それにしても、なぜヒメサマンの着ぐるみが男性でも大丈夫だったのだろうか?

 虎狼死家 左々右エ門 (殺し屋)

 警視庁が密かに追っている殺し屋。“仕事”をした現場にサザエのカードを残していくことから、この名前がついた。依頼人との信頼関係を何よりも大切にする、妙なところで義理堅い人間でもあるが、依頼人が信頼関係を裏切った場合は容赦なく殺しに来るという…まるでゴルゴですね(笑)無線機で証言台に立った時の、真宵ちゃんの身を案じながら犯人を追い詰めるという矛盾は…とてつもなくしびれるものがありました。