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週刊GM研 Vol.99
2003/07/05


【News Headline】
  • テレ朝社長「タトゥーになめるな!」ドタキャン騒動の行方
  • 【mini Review】
  • DVD : 
  • みんなのうた「笑顔」(DVDシングル)
  • 雑誌 : 
  • 電撃萌王 vol.6
  • 雑誌 : 
  • 週刊ファミ通 7月18日号(vol.761)
    【COLUMN】
  • PSPにPSX、ソニーの新戦略をどうみるか?

  • ■News Headline

     【テレ朝社長「タトゥーになめるな!」ドタキャン騒動の行方】 
     只今人気沸騰中のお騒がせロシアの少女デュオ「タトゥー」が6月27日放送のテレビ朝日系「ミュージックステーション」の生放送中にオープニングまでは出演したが、その直後に局外にいたプロデューサー、イヴァン・シャポヴァロフ氏が直接2人に電話をかけて出演拒否の意向を伝え、2人は出演することなく番組途中で帰ってしまった問題で、テレビ朝日の広瀬道貞社長は、「日本のテレビ局全体が軽んじられる決着は望ましくない」と怒りを表明。所属のユニバーサルレコードから納得のいく謝罪が得られない場合、損害賠償も辞さない構えである。

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     なんでも、タトゥー側の言い分としては、「自分達だけの特番だと聞いていたのに、その他大勢のわけのわからん日本人歌手と同列に扱われたのが我慢ならなかった」ということらしい。タモリのやる気のないトークには特に言及は無かったが…まぁ、これが本音なのか、それともあらかじめ予定に織り込まれていたドタキャンだったのかは、判断しかねる。そもそも、このタトゥーというデュオは、過激な行動をプロモーションの一環として売ってきた経緯があり、今回のドタキャン騒動についても、タトゥーファンの間からは「期待通りまたやってくれたぜ!」という声も上がり、かえってカリスマ性を増しているようだ。騒ぎが大きくなればなるほど宣伝効果も大きくなるわけであり…タトゥー自身の思惑はさておき、テレ朝はまんまと踏み台にされてしまったわけです。

     私としては、タトゥーなんて名前は全然知らなかったし、歌を聞いてもこれっぽちも感銘を受けなかったので、タトゥーについて特にコメントする気にもならないのですが、強いて言えば、テレ朝のブチ切れぶりの論点のずれっぷりにはツッコミを入れずにはいられません。『Mスタは権威のある番組。それが海外のアーティストに軽んじられてしまうことはテレビ朝日だけでなく、日本のテレビ局全体が軽んじられてしまうということにもなる。これは好ましくないと思う』…って、アンタ何様のつもりですか?権威?今のMステにそんなもんあるのかい?完全に系統が固定された出演者、タモリのやる気のなくて笑えもしないトーク、ジャニーズJrの下請けに成り下がって…何も聞かされないで出演する方もする方だが、出演者の危険性を熟慮しないで日本に呼ぶ方にも問題があると思うぞ?生放送がリスクを背負っているということを、長年のぬるま湯番組編成で忘れていたのでは?(他局だが、27時間テレビで生放送中に鶴瓶がフルチン騒動を起こしたばかりだし…)スポーツ中継と捏造系ニュースしか能の無いテレビ局が「日本のテレビ局全体〜云々」と声を荒げる様は、とんだお笑い種ですな。他人の振り見て我が振り直せ、そんな言葉も知らんのかねぇ…


    ■mini Review

     【みんなのうた「笑顔」】歌:岩崎宏美/アニメーション:新海誠 
     個人製作アニメ「ほしのこえ」で一躍アニメーション界の新星として注目を集めるようになった「新海誠」氏がオープニングアニメーションを手掛けた事で話題になった、NHKの「みんなのうた」の主題歌「笑顔」がDVDシングルになって登場!この短いオープニングアニメーションには、電車などの人工物が通り過ぎていくのを利用した場面転換、差し込む柔らかい夕陽の陰影、空の広がりを表現する雲と空の境界…などの新海氏が得意とする手法がふんだんに盛り込まれていると同時に、ラストシーンでヒロインの女の子がくるくると回るシーンで、ストップモーションを駆使するという意欲的な試みがなされています。新海さんといえば、デジタルを駆使したノンリニアの回転表現が得意技なのですが、そこを敢えてストップモーションを使用することで、効果的にヒロインの感情の動きを表現したこのシーンは、新海アニメの新境地を切り拓いたとしてかなり注目されると思います。

     岩崎宏美さんの優しい歌声で歌い上げられる「笑顔」は、すごくいい歌詞です。これだけ聴くと、まるで男女間のバラードのようにしか聞こえないけど、新海さんが作り出した映像では、男女の歌をハムスターと飼い主に置き換えることで、歌から受ける印象を完全に違うものにすることに成功しました。新海さんの映像を見てしまった後では、もうそれ以外のものをイメージする事さえできないくらい、しっとりと心にイメージが染み込んでいきました。卓越した技術力だけじゃなく、豊かな発想力と繊細な感性と圧倒的な存在感を、新しいファン層に対しても示す事に成功したといえるでしょう。完全新作「雲のむこう、約束の場所」が今から待ち遠しい!!

     【電撃萌王 vol.6】メディアワークス 
     今度の表紙はスク水ですか…まったく、買い辛いったらありゃしない(日本橋では店員も同じ穴のムジナなので何の抵抗もないのだが)。ちなみに、こういう萌え業界で一般的に形容される「スク水」は、水を逃がす「スカート」構造を持つ旧タイプであって、素材の進歩によって水着の水はけが良くなった現在では、ほとんどの学校ではもう使用されていない「空想の産物」になりつつある。詳しくは、同人サークル「くらっしゅハウス」の同人誌「CLASH-HOUSE SUMMER STYLE」を参照してみてください。

     さて、今月も「みづきたけひと」さんの「こはるびより」のためだけに買ったようなものなのですが…うーむ、今回もいつものようにイイ味出してますなぁ。「二次元美少女の立体モノが好きであって、三次元そのままのお人形が好きではない」という分析はなかなか鋭い。まぁ、いずれの属性であってもヘンタイであることには変わりはないんだけど(苦笑)。

     売れっ子同人作家をただ寄せ集めただけで、なんのポリシーも感じられないeb!のマジキューよりはナンボかマシだけど、強烈なウリがあるわけでもなく、目を引く企画があるわけでもなく…良くも悪くも代わり映えしない。でも、こういう雑誌が生き残っている間は、まだまだ萌え業界も安泰ということなのか?

     【週刊ファミ通 7月18日号(vol.761)】 エンターブレイン 
     今週も「USER'S EYE」に憤慨。PS2版の「君が望む永遠」の読者評価が載っていましたが…(悪かった点)「ラストで拍子抜けした」というコメントには大いに疑問があります。一般ギャルゲーの「最後に奇跡ドーン!めでたしめでたし」という文法に飼いならされてしなった不幸な方なのだろうか?「君望」はラストに至るまでの苦しい過程がすべてのゲームです。ラストはその苦しみの果てに選び取ったひとつの結果に過ぎないのです。その「あっけなさ」に幸せを感じられないようでは…それまでの苦しみが台無しです。(ここが×)「主人公の性格になじめなかった」というのも…何か違うような気がします。あの性格になじめる人は普通いません。でも、主人公への反発や嫌悪があるからこそ、主観を抑えて客観的に登場人物たちの苦悩を真剣に受け止めることができたわけで…ちなみに、DC版とPS2版の相違点の詳細については、こちらを参照してください

     「ギャルゲー先生リターンズ」の第2回のテーマは「姉的存在編」。これがなかなか興味深い内容でした。「妹萌え」全盛のギャルゲーですが、妹のような破壊力はないものの、一歩引いた立場から主人公の事をアレコレ気に掛けてくれる「姉」の存在も見逃せません。キャラ人気はあまりないけど、ゲームのスパイスとしては必要不可欠な存在です。「お姉さん」「お姉様」「ねーちゃん」という3タイプの分類も面白い。でも、サンプルが少ないため「全部Piaキャロ3」というのが釈然としない。それに、なぜ、かなめ姉さん(TLS3)のことが書いていないのか不思議でならないのだが…

     eb!の新しいファミ通のTVCMのセンスの無さに閉口…あんなダメCMのために、ゴールデンの高い広告費を払う意味がどこにあるんでせうか?


    ■COLUMN

     【PSPにPSX、ソニーの新戦略をどうみるか?】
     国内出荷は1200万台を越え、全世界出荷台数は5000万台…完全に世界の家庭用ゲーム機市場を独占し、PS2の性能を活かしたソフトラインナップも充実して円熟期を迎えたPS2。ライバルメーカーの任天堂やマイクロソフトは、すでに次世代機の開発と存在を否定しようとはせず、次世代機の早期投入で局面の打開を図ろうと躍起になっているが、それに対して王者SCEが示したのは、携帯ゲーム機「PSP」と、DVD+HDDレコーダ付PS2「PSX」という意外な新戦略だった。

     まず、PSXについてですが、こういう商品が今までなかったことの方が、素人目には不思議な気もするかもしれないが、ゲーム業界にはこれまでにも「レーザーアクティブ」とか「メガPC」とか「PCFX」とか…ゲーム機能を「おまけ」として無残に散っていった前例があり、禁じ手でありタブーだったのです。それに、基本的にテレビゲームは他の娯楽産業とは、遊び手の時間を奪い合うライバル関係にあるわけであり、PS2が「DVDも観れるよ」という仕様を取った時には業界には否定的な意見の方が多かったのも事実です。

     PSXが登場した背景には、ソニーと東芝とIBMが共同開発している、PS3のコアプロセッサMPU「CELL」の量産実用化のスケジュールが大幅に遅れているため、PS2の延命が必要になったという裏事情があるわけだが、それだけでなく、パソコン需要が頭打ちになってしまって、VAIOブランドが伸び悩んでいることと、DVDレコーダの分野では松下に大きくリードされてしまっていることと、PSの生みの親である久多良木健氏がソニーグループの次期CEOレースの主導権を握るため…などなど、いくつもの要因があるわけです。

     PSXの市場投入は2003年の年末商戦の予定だが、既存技術を組み合わせるだけなのでスケジュールが大きくずれ込むことは考えにくい。ネックになりそうなのは価格の面だろう。すでにPS2が一家に一台普及してしまっている状況では、「おまけ」がハンデになって割高感が出てしまうのは避けられないだろう。少なくとも10万円を切るくらいのインパクトを出さないと、マニアでも手が出ない。

     それに、今回の相手は「たまにしか観ない」DVDとは訳が違う。日常的に観る「テレビ」を相手にして、娯楽時間の奪い合いをしなくてはならないのだ。しかも、テレビはただ垂れ流しにしておけばいい。そこに映像記録編集の楽しみが加わると、「何かをする」というエネルギーが全部そっちに流れてしまい、ゲームを「ちょっとやってみようかな」という気力なんて残らない。それこそ、ゲームが副次的なものになってしまい、年に数本の有名大作ゲーム、もしくは、短時間で軽く遊べるもの、この二種類にゲームの在り方が限定されてしまう危険性をも含んでいる事を認識しておいて欲しい。

     もし、PS3がPSX戦略の延長線上にあるものだと仮定するならば…それは王者の驕りと言うしかありません。ハードメーカーは新しい遊びの可能性を提案するものであって、ゲームの在り方を限定したり特定の方向に誘導しようとするのは、何か間違っている気がするのですが…

     間違っているついでに、PSPについてですが…これはまだ発表段階なので判断材料が乏しいのですが、どうも嫌なプンプンします。UMD(ユニバーサル・メディア・ディスク)の話題が先行していて、「21世紀のウォークマン」などと次世代音楽メディアの次期標準規格の座を虎視眈々と狙っているようですが、標準規格になりきれなかったMDといい、メモリースティックといい、分裂してしまったDVD規格といい…ソニーの独自規格はいつも混乱をもたらすからなぁ…

     SCEEの社長が、PSPのソフト価格を「2800〜4200円」「一部のソフトは8300〜9700円」とコメントしたのも大いに疑問。幅がありすぎて何の予想の材料にもなりません。GBAとの違いといえば、カートリッジROMではないのでプレス料金は大幅に下げられるだろうけど、なまじ大容量で高スペックなため大作志向で開発費がかさむことに…そういう意味では現行の携帯ゲームとは路線が違うので、携帯ゲーム市場を独占しているGBAとの共存は可能かもしれない。

     だが、それはソフトメーカ側にとってはキツイ選択を迫られる事になる。家庭用と携帯用をどう作り分けていくのか、ここにさらにネットゲームという選択肢まで…選択肢の多さ、性能高さ、可能性の幅が必ずしも+の方向に働くとは限らない。エンタテイメントは産業である前に、娯楽であり作品である、その基本を努々(ゆめゆめ)忘れてはならない。


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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