Weekly Web Magazine
週刊GM研 Vol.74
2002/12/08


【News Headline】
  • スクウェア・エニックス衝撃の合併発表
  • 【mini Review】
  • DVD
  •  : まほろまてぃっく 〜もっと美しいもの〜(1)
  • 雑誌
  •  : わしズム Vol.4
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 12月20日号(vol.731)
    【COLUMN】
  • スクウェア・エニックス

  • ■News Headline

     【スクウェア・エニックス衝撃の合併発表】 
     11月26日、スクウェアとエニックスが2003年4月1日付けで経営を統合し「株式会社スクウェア・エニックス」となることが発表されました。合併比率はエニックス1に対し,スクウェアが0.81。昨年は映画の大失敗で大赤字を出してSCEに救済されたスクウェアも、今期は黒字に転換して経営状態は改善されており、ほぼ対等の合併という事が妙に強調されていました。2005年3月期で連結売上高800億円純利益150億円を見込む、FFとDQ、世界を代表する2大RPGを擁する世界最大のゲームメーカーが誕生することになります。

     さて、ここまでは表向きのニュース。報道やゲーム誌では押し並べて歓迎ムードで書かれていますが、ちょっと胡散臭いと思いませんか?合併発表で急騰した株価にはインサイダーの匂いがするし、スクウェアの経営権の一部を保有しているSCEの影がちらつく。(直後にドラクエ8がPS2で出ると発表されたのも無関係ではない)。形式としてエニックスを存続会社としてスクウェアが解散するということになっているが、この図式にこそ今回の合併劇の真意が隠されているのではないだろうか?

     私は、アナリストとして今回の合併が経営上有益なものであることは評価している。エニックスはドラクエという伝家の宝刀を持つものの、約4年に一度しか抜けない刀なので、その間をリメイクや出版だけで食いつなぐのは苦しい。片やスクウェアは、速いペースで作品を出せるが、その人気を持続させる出版力がない。「お互いの弱点を補う」という点では、今回の合併は理論上非の打ち所はないはずなのだが…

     しかし、私はゲーマーとして大きな危惧を抱いている。それは、両社はゲームの開発思想も手法も大きく異なっているからだ。すべてを自社開発してきたスクウェアとは違って、エニックスはアーマープロジェクト(堀井雄二)やトライエース(スターオーシャン)などの外注の開発会社を抱えるゲームパブリッシャーである。合併後もしばらくは現行の体制のままソフト制作を続けて、徐々に開発資源の融合を進めていく方針のようだが、もし、今後、エニックスがプロデュース権を握って元スクウェアを開発会社のように扱うようなことになれば、内乱勃発の火種になりかねない。

     今回の合併で一番喜んでいるのは、もしかすると堀井雄二なのかもしれない。ドラクエ8の開発に何年かかろうとも、その間は元スクウェアが開発費を稼いでくれるんだから、経営上の理由で開発を急かされる事もなくなる。ドラクエ8がまだ何も決まっていない段階で画面写真を出して製作を明らかにした(正式な製作発表ですらない)のは、SCEへのポーズと言う意味以外にも、エニックスがスクウェアに対して優位性を確保しようという牽制という意味も含まれているのかも知れない。

     はてさて…いずれにしても、「セガバンダイ」のように直前になって御破算になるような失態を演じることだけは避けていただきたいものである。


    ■mini Review

    DVD 【まほろまてぃっく 〜もっと美しいもの〜(1)】  
     TVアニメ「まほろまてぃっく」のシリーズ第二期「もっと美しいもの」のDVD第1巻が発売になりました。TVアニメと言っても、BSデジタル(BS-i)しかも深夜放送枠なのでリアルタイムで観ている人はほとんどいないと思いますが… シリーズ第一期はガイナックスの高い技術力で原作を忠実に再現していて、個人的にお気に入りだったのですが、さて、第二期の出来は如何に?ありゃ?何か違和感が…ごそごそ(本棚から単行本を取り出す)、ああ、なるほど〜第二期はまほろさんの妹=「370(安藤みなわ)」をプッシュするために原作とは構成を大幅に変えてあるんですね。でも、そうなるとこの先のシリーズ構成はどうなるんだろう?ガイナックスの放送スケジュールを見てみると、飛ばしたエピソード「夢はおっきく」「夢見るお年頃」はちゃんと組み込まれているので、第二期も原作を忠実にトレースする方針のようです。連載継続中の原作との絡みもあるので、第二期の落し所をどうするのかで作品としての評価も変わってくると思います。

     今回もOPの絵コンテを庵野秀明が手掛けていますが、コンテも主題歌も第一期OPに比べて見劣りする気が…それと、声の演出のタイミングの取り方が雑になっているような気もするのだが…各巻2話収録で5000円という割高な価格設定も変わってないし…(特殊なファン層だから安くすれば売れるというものではないけど、なんだかなぁ〜)

    雑誌 【わしズム Vol.4】  
     「ゴーマニズム宣言」で有名な漫画家:小林よしのりが編集長を務める雑誌「わしズム」の第4号です。巻頭特集はGLAYのTAKUROとの対談です。この対談はGLAYの北京ライブの1週間前に行われたものである。日中国交正常化30周年記念という極めて政治的意味合いの強いあのイベントの直前に、中国共産党が危険視している小林よしのりと対談することがどれほど危険なことか…しかし、北海道からTAKUROが上京して以来、ゴー宣の連載第1回からずっとファンだったという事で、周囲の反対を押し切ってこの対談は実現しました。「メジャーシーンで走り続ける意味と意義」というテーマで300分間にわったて繰り広げられた対談では、TVでは絶対に知ることの出来ないGLAYの音楽に込められた想いを垣間見ることができます。TAKUROの音楽に対する理想と姿勢を通して、逆説的に昨今の音楽シーンを覆う倦怠感の原因が自ずと分かることでしょう。

     この雑誌のテーマは「漫画・音楽・思想。日本を束ねる知的娯楽本」とうことですが、どうしても「小林よしのりの本を読む奴は危ない奴だ」というレッテルを貼られてしまいます。しかし、先入観無しにこの雑誌を読むことが出来れば、思想には右も左も無いということが理解できるはずです。ナショナリズムとアイデンティティは決して切り離すことの出来ない存在であり、その平衡感覚の喪失が現在の日本の混迷の根源にあることを理解できるはずです。

    雑誌 【週刊ファミ通 12月20日号(vol.731)】エンターブレイン 
     まずは「ファミ通エクスプレス」で公開された「ドラクエ8」の画面写真について。今回から開発会社をレベルファイブに変更したことで、どんな画面になるのやらと思っていたら、まるきり「ダーククロニクル」ですね。鳥山キャラの魅力を完全再現できるドラクエの雰囲気にとても良く合う作風だと思いますが…あのアングルが歩きやすいとはとても思えません(ドラクエ7の腰砕け中途半端ムービーよりは遥かにマシですが…)。 ま、実際に発売されるのは早くても3年後でしょう(根拠:2005年3月期の決算予定に織り込まれているから)。

     さて、今週もいつものようにアンケートハガキを書きますか…ん?「おもしろかった記事:6個」「つまらなかった記事:11個」…なんで私はこの雑誌を買ってるんでしょうかねぇ〜 すっかりビックメーカーの御用雑誌と化してしまっていて、毎号毎号同じゲームの代わり映えのしない情報ばかり…こういう誌面づくりをしていて、レビューの公平性を信用しろというのも無理があるというものです。伝統だけで喰っていくのもそろそろ限界か?


    ■COLUMN

     【ゲーム業界大再編は、是か否か?】 
     スクウェアとエニックスの合併劇はゲーム業界を震撼させたが、今回の合併劇はまったく兆候や伏線が無かったというわけではない。以前から両社は資本提携関係にあったし、エニックスがパブリッシャーとしての拡大を目指して合併先を捜しているという噂も裏業界には流れていた。ただ、相手が相手だけにこうもあっさりと縁組が決まるとは予想していなかった。

     SCEの久多良木社長は「ソフトハウスは最終的に6社くらいになる」と言っています。SCE・任天堂・マイクロソフト、この3つはハードメーカーなので別個に考えるとして… スクウェア・エニックス、セガ、コナミ、ナムコ、カプコン、コーエー、バンダイ。この6つを指していると思われます。あれれ?7つあるぞ?…もしかして、この中から更に合併があるというのかぁ!?

     ちょっと組み合わせで遊んでみましょう。コナミとナムコ、禁断の老舗合併で「コナコ」!両社から2文字ずつ取り、伝統の3文字社名を守る素晴らしいネーミングだと思うが、どうでしょう?(発音が難しいけど…) 次!セガとバンダイで「セガバンダイ」再び!(でも、過去最高益を上げてウハウハ状態のバンダイに相手にしてもらえないだろうけど…) あ、でも一番可能性としてありえそうなのは、この7社の中から合併が起きるというよりも、セガが脱落するというのが最も確率が高いのかもしれない(苦笑)

     個人的には、セガはいよいよとなったらマイクロソフトに丸買いされてしまうのも手だと思う。マイクロソフトの無尽蔵の資金力を食い潰してデカイことをやってもらいたい。セガは大変優秀な開発力を持っているが、哀しいほどに商売が下手くそである。ハードから撤退してソフトメーカーに転身した今も、その体質は変わっていない。マイクロソフトは、いくら金をつぎ込んでも一向に伸びないXboxに頭を抱えている暇があったら、セガを買う公算を付けた方が手っ取り早い。再建計画の達成が疑問視されてセガ株が暴落している今こそがお買い得だと思うが、どうです、ゲイツの旦那?

     さて、残るのはこの6社として、その他のゲーム会社はもれなくいずれかのグループに吸収されて、開発会社として存続していくことになるでしょう。すでに、コナミはハドソンとタカラを傘下に収めているし、コナミマーケティング事業の名のもとに多くの企業を取り込もうとしている。大手各社はこれまでは世間体もあって合併という直接手段を行使してこなかったが、今回のメガ合併によってその枷は外れてしまうだろう。形振り構わない開発会社の争奪戦が水面下ですでに始まっている。ゲーム業界の大再編は、今始まったばかりなのかもしれない…


    文責:GM研編集部編集長 gonta

    GM研TOPページに戻る