Weekly Web Magazine
週刊GM研 Vol.55
2002/07/14


【News Headline】
  • 毎日2時間以上は大脳活動に影響?
  • 【mini Review】
  • 漫画
  •  : 彼氏彼女の事情キャラクターブック
  • 書籍
  •  : もうひとつのMONSTER
  • 雑誌
  •  : ドリマガ 7月26日号(vol.361)
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 7月26日号(vol.710)
    【COLUMN】
  • 同人誌の価格について

  • ■News Headline

     07/08 【毎日2時間以上は大脳活動に影響?】  
     ゲーム時間が長いほど、大脳の前頭前野の活動が、テレビゲームをする時に目立って低下する。 ゲームでは視覚と運動の神経回路だけが働き、「考える」ことが抜け落ちる、と日大教授森教授が発表した。毎日2時間から7時間ゲームをする人のグループは、ゲームをしなくてもベータ波は常にゼロに近く、前頭前野がほとんど働いていないことを示した。とありますが、これはゲーム好きの私にとっては少々納得しがたいものです。

     そもそも、脳波で脳の活動を判別できるという考え方自体に問題がある思う。AERA誌のトップ記事でもゲーム脳特集をしていて、その時使われているゲームは「テトリス」であると判明しましたが、テトリスのように多大な集中力を要するゲームを毎日2時間〜7時間もやっていれば、ごく自然に人間の脳は防衛本能によって考えることを拒否します。また、テクニックの熟練によって脳で考えるよりも早く指が反応するようになるので、脳を使う必要がなくなるわけです。

     脳が未発達の子供達への影響を懸念する声もありますが、それも大きな間違いです。子供が家に引き篭ってずっとゲームをしているのは、脳の活動というよりも情操教育への悪影響の方が大きいし、むしろ、そういう環境を作ってしまう家庭自体に問題があると思う。ただ単に約2時間与えられる映像を見るだけの映画よりも、遊び方によっては100時間以上も能動的に遊べるゲームの方が、遥かに脳を使っていると思いますよ。ただし、現在は「ユーザーフレンドリー」だとか「ライトユーザー」とかに迎合して「観るだけ、ボタンを押すだけ」という作業型のゲームばかりになってしまっているのも、また事実です。

     こういう結果が出たからといって、情報を鵜呑みにしたり、頭ごなしに否定していては、何も解決しません。これを問題提起として今後に生かすことによって、ゲームは一過性のものではなく文化として残っていけるのではないでしょうか?


    ■mini Review

     【彼氏彼女の事情 キャラクターブック】   
     「彼氏彼女の事情」の公式パーフェクトガイドブックが発売されました。公式研究本ならではの多数の原画引用と細かい用語解説、津田雅美先生のロングインタビュー、劇中劇「鋼の雪」の舞台シナリオ化や、さらには連載開始前のプロット(設定資料)も津田先生の解説付きで一挙公開されていて、ファンなら大満足の恐ろしく盛りだくさんの内容です。これで1000円(税別)は安すぎるくらいです! 本誌連載も「有馬編」がいよいよ佳境に突入していることだし、A5変形版の性質上、あまり重版されない可能性もあるので、カレカノファンは逃さずに買っておきましょう。

     【もうひとつのMONSTER】 浦沢直樹/ヴェルナー・ヴェーパー
     サイコサスペンス漫画として空前の大ヒットを記録した「MONSTER」の副読本にしてアナザー・ストーリー、それが「もうひとつのMONSTER」です。「ヨハン・リーベルト事件」の真相を追う記者:ヴェルナー・ヴェーパー氏が「MONSTER」本編に登場した人物へのインタビューを通して核心へと近づいていくというドキュメンタリー構成で、本編の謎を別の角度から補完していますが、巻末には、絵本「めざめるかいぶつ」の翻訳版も収録されていて、新たな謎が示唆されていたりと、これはもはや単なる研究本にとどまるものではありません。むしろ、謎はさらに深まるばかりです。深遠なる人間の狂気の本質に迫るこの作品に、本当の意味での「終わり」は存在しないのかも知れませんね。

     【ドリマガ 7月26日号(vol.361)】 ソフトバンクパブリッシング 
     別名:セガマガと呼ばれるだけのことはあって、「サクラ大戦ワールドプロジェクト」特集は主要スタッフインタビュー多数で大充実! ネットニュースや他誌の表面的なニュースでは知り得なかったディープな情報がテンコ盛りです。構想だけ聞くと眉ツバものに聞こえかねい「サクラ大戦ワールドプロジェクト」ですが、こうして製作現場の声を聞いてみると「あぁ、本気で作ってるんだなぁ」と納得できました。

     E3特別2Pバージョンも終わり、今週から通常1Pに戻った「セゲいち」ですが、前号の担当ホンゴーさんが書いた柱「次号より新展開」で大困惑! 既に生産終了から1年半以上にも経つDCをイメージしたキャス子に、新展開と言われてもなぁ…むしろ、よくぞまだ現役で頑張っている(一部のジャンル限定ですが)事の方が奇跡と言えるでしょう。セガはソフトメーカーになってしまったし、3大ハード戦争も安定期に入ってしまったので、ゲーム機漫画としては苦しくなるかも。 ちなみに、ドリキャスから「ピー」という音が出る現象は、本体メモリの電池切れではなく、ビジュアルメモリの電池切れだと思うのですが…

     【週刊ファミ通 7月26日号(vol.710)】 エンターブレイン 
     「ファミ通.comゲームユーザーの意見箱」のコーナーで「FFXIのプレイ料金をどう感じますか?」のアンケート結果が出ていました。内訳は高い:68.6%、妥当な値段:28.6%、安い:4.8%でした。「1日あたりに換算すれば約40円」と言われると安く感じられないこともありませんが、「暇を持て余して月に100時間以上遊ぶ人も、忙しくて月1時間しか遊べない人も同じ料金というのは納得できない」という意見も正論だと思います。実際に体験した人の賞賛の声は上がっているものの、総ユーザー数は10万人弱で頭打ちになっています。急激なユーザー数の拡大はもう望めないので、今後は現行ユーザーにどれだけ継続して遊んでもらえるかが焦点となるでしょう。

     当初4回の予定だった「のーてん!プレイガール」は連載延長が決定! 絵の塗りもギャグも安定してきましたが、元ネタになっているゲームがマイナー(「GC版:バイオハザード」「GC版:巨人のドシン」)なので、一般性となると少々問題があることと、ゲーム誌らしい漫画がファミ通っぽいのかどうかというのが、連載定着への今後の課題でしょう(よく考えたら、これってトンデモナイ矛盾ですね)。

     ファミ通独占スクープ「アンリミテッド・サガ」は、久々に「おぉ!」と唸るような新鮮なコンセプトを打ち出してくれました。機種変更のたびに毎回意欲的な新システムと新デザインを見せてくれたサガシリーズ。今回も技術面で大きく進化しています。アドビシステムズと提携して、3Dポリゴンでもなく、2Dドット絵でもなく、アニメーションでもトゥーンシェードでもない、イラストテイストの「動く絵画世界」を実現しています。また、ドルビーサウンドと提携して、「プロロジックII」システムによってフル5.1chサウンドも実現! 製作総指揮を取る河津さんの「賛否両論はかまいません。何にもナシがいちばん困る」というコメントにも痺れました。…あれ?河津さん、ゲームキューブのFFの話はどうなったんでしょう?もしかして破談??


    ■COLUMN

     【同人誌の価格について】 
     昨日、夏コミ発行の新刊同人誌「非存在コミケ学入門」の入稿が終わりました。同人誌を作るのはすでに3回目であり作業のコツも掴んでいるので、スケジュール進行も予定通り進んでいたのですが… 結局、最終日にはどんどん欲が出てきてしまい、時間ギリギリまで粘って、原稿をいじり倒してしまい、貫徹する破目に…

     締め切りがないといつまでも描き続けてしまうタイプの人は、締め切りがないと結局、何も形に残せなくなってしまいます。自分だけを満足させるためなら芸術家に徹してもいいのですが、漫画は読者があって初めて成り立つものです。描き上げた後はいつも不安と後悔でいっぱいですが、そのくらいの状態がちょどいいのかも知れませんね。今後も、作品に対しては謙虚に、表現に対しては貪欲に追求していきたいと思います。

     さて、ここからが本題です。

     私は同人誌の価格や原価について事あるごとに、同人誌のコストを話題に上げているためか、たまに「利潤至上主義のあきんど野郎」と某有名掲示板で陰口を叩かれたりしています。一時はそういう書き込みを見つけると同人誌活動を辞めたくなるほど落ち込んだりしたものですが、私は元気です(by 魔女の宅急便) …もとい!気にならないと言えば嘘になりますが、数人の悪意のために大多数の読者を裏切るようなことはできませんからね。発行部数の多い少ない、売れる売れないは問題ではありません。たとえ1人でも楽しみに待ってくれる読者様がいる限り、期待に応えるのが筋というものでしょう。

     誤解しないでいただきたいのは、同人誌というのは基本的に儲かりません。行列のできるような大手サークルや、専門店委託で全国展開をしている中堅クラス以上ならまだしも、発行最小単位の零細サークルでは原価回収すら覚束ないのです。現に、GM研発行の同人誌の純粋原価率(印刷代のみ)は80%を越えています。ここにイベント参加費+売り子さんの人件費+交通費+食費+画材代などの必要諸経費を計上したら、たとえ完売したとしても完璧に赤字です。

     同人誌の価格を最終的に決めるのは作家の胸三寸です。それでも、自由だからこそ、明確なビジョンを持って継続的に同人誌活動をしていくために、そして、自信を持って手頃な値段で読者様に本を提供するためにも、コスト意識を強く持たなくてはならないと思います。本を何冊刷るのか?それが大きな問題です。たくさん刷れば刷るほど1冊あたりの原価は安くなりますが、売れ残ればすべて在庫を丸抱えするという、経済的にも物理的にも大きなリスクを背負うことになります。

     重要なのは、その本に対して値段に見合っただけの価値があると、読者様に判断していただくことだと思います。同人誌は商業誌漫画の単行本とは段違いに薄いし、値段も割高です。しかし、その1冊に込められた情熱は並大抵のものではありません。日常を犠牲にして、1ヶ月近い製作時間をかけて作られるそれは、ひとつの価値観の創造でもあるのです。そして、同人誌文化を支えているのは、そういう多様な価値観に対して投資をしてくれる人々なのです!


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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