ゼノサーガ エピソードI 力への意志
PS2ナムコ   2001/7/26発売
 冒険・SF  RPG  36時間 
開発:モノリスソフト 監督:高橋哲哉

「ゼノサーガ」とは?

 1998年2月にスクウェアから発売されたRPG「ゼノギアス」の世界観を受け継いだ作品、それが「ゼノサーガ」です。1998年の発売当時、その圧倒的なスケールと緻密な世界設定と、哲学的で謎だらけの難解極まるシナリオは、多くのコアなゲームファンたちの心を鷲掴みにしました。未だに「RPG史上最高のシナリオ」との呼び声も高く、かくいう私もその1人でした。全六部作構想(ゼノギアスは「エピソード5」に相当)の実現を、多くのファンが熱望していたのですが…

 ところが、スクウェア社内には、「ゼノ」シリーズの製作ができない複雑な事情がありました。大作を1本完成させるたびにスタッフが別チームに離散してしまう、会社主導の人事体制では、スタッフを再集結させて続編を製作するのは難しいのです。FFのように社運を賭けて2ラインを同時に動かしてタイムタグを無くすような芸当はできないし、ゼノギアスの監督・脚本の高橋哲哉氏も、ディレクターとしての才幹買われて他の仕事に追われる日々を過ごしていた。しかし、『天才:高橋哲哉になんとかして「ゼノ」シリーズを作らせてやりたい!』と、当時スクウェアのプロデューサーだった杉浦博英氏(現:モノリスソフト代表取締役)の呼びかけで、「ゼノギアス」スタッフが再集結して独立し「モノリスソフト」を設立。その理想にナムコの中村雅哉社長が全面バックアップを約束し、スクウェアとの資本提携を含めた総合支援でシリーズの権利問題も円満に克服。ここに、異例のビックタイトルの発売元移籍が実現し、「ゼノサーガ」が生まれたのです!

壮大なSFスペースオペラの”序章”

 宇宙の創生から終焉までの歴史を描いた一大叙事詩、それが「ゼノサーガ」です。2001年に人類が事象変異機関「ゾハル」を発見してから、4000年後の宇宙世界が「エピソードI」の舞台です。「ゼノサーガ」はゼノギアスの世界観を受け継ぐ作品ですが、シリーズ構成をイチからやり直しているので、ゼノサーガの「エピソード5」がゼノギアスにあたるとは限りません。2001年7月の「エピソードI製作発表会」で使われた映像の一部が、エピソードIには収録されていなかったことから推察するに、エピソードI自体が前後編(前中後編?)に分割されているのかも知れません。でも、それは、このエピソードIでは何も完結しないという意味でもあるわけですが…

 同じ映像型のRPGのファイナルファンタジーは、「ゲームに映像を挿入するタイプ」のゲームですが、ゼノサーガは「映像にゲームを挿入するタイプ」のゲームです。一般的な基準から見ても、ゲーム的な部分も良く出来ていますが、この特殊な作品においては、そういう面での出来不出来は無意味ですし、ゲームバランスが悪いとか、画面切り替えやロードが遅いとか、それらは些細な問題に過ぎません。(勿論、良いに越したことはないけど)。ゲーム部分は映像までの「良く出来た余興」くらいの気持ちで割り切ってしまうべきです。あくまで本命は世界観と映像なのですから。そう割り切れない人には、「映像が綺麗でテーマが小難しい、バランスの悪いゲーム」で終ってしまうので、オススメできません。

物語に誠実であるという意味

 「エピソードI」という名前が示す通り、この作品では物語は完結しません。いや、正確に言うと、”始まったばかり” です。エンディングで新キャラが出て来るし、更なる伏線と新たなる謎が続出するし、最後には「TO BE CONTINUED」って…せめて「スターウォーズ」のように、毎回ある程度の結論を出してくれるものだと思い込んでいたので、この結末には少々戸惑いました。この生殺し状態で数年後の「II」まで待てとおっしゃるのでせうか?

 賛否両論が巻き起こった「ゼノギアスのDisc2」のように、ゲームらしさの全てをなりふり構わずかなぐり捨ててでも、ユーザーの理解力を遥か彼方に置き去りにしてでも、力技でねじ伏せる圧倒的な説得力(ゼノ節)の何とも言えない快感を期待していた人にとっては、少々物足りない結果になってしまったのかもしれない。あの前代未聞の手法は、 「賛成2:反対8」くらいに評価が分かれていましたが、私はアレは怪我の功名だった全面的に評価しています。少なくとも、作品が物語を完結させることに対して誠実だったから。

 物語に誠実であるという意味…それは、創作に携わる人間にとって永遠の命題です。作りたいものを作れるというのは幸福なことですが、それはファンの期待に応え続けることであり、人材・資本などの環境を維持していくということでもあります。それができている、もしくはそうあろうとしている作品を、ファンは決して見放したりしません。ゲームが人を選ぶのではなく、人がゲームを選ぶのですから。私は、たとえ何十年かかってもいいから、ゼノサーガが完結する日を来ることを待ち続けたいと思います。

First written : 2002/03/14
Last update : 2003/10/31