GM研 ゲームレビュー
サクラ大戦4 〜恋せよ乙女〜
対応機種 : Dreamcast
開発 : オーバーワークス
監修 : レッド・エンタテイメント
販売 : セガ

「サクラ大戦4」とは?

 ゲーム業界を震撼させたセガのハード撤退宣言から早くも1年余り… セガの主力タイトルが軒なみ他社ハードへの転身を始める最中、唯一「サクラ大戦」はDreamcastでの続編製作を断行しました。前作「3」の発売からわずか1年というギリギリの制作期間の中で、「第一期サクラ大戦」を完結させる… それは、近代セガを象徴する看板タイトルに対する開発スタッフたちの最後の意地であり、長年セガを支えてきてくれたセガマニアたちへのケジメだった。ひとつの時代の終わり… そう、「サクラ大戦4」はファンのためだけに作られた、完結という名のアンコールなのです!

完結という名のアンコール

 「サクラ大戦4」は「第一期サクラ大戦」の総決算となる作品です。帝国華撃団の8名と、巴里華撃団の5名、計13名のヒロインが総登場して、怒涛の13分岐で各ヒロインごとにエンディングがあります。その分、ボリュームは従来比約3分の1と抑え目で、7時間もあればクリアできてしまいます。人によっては物足りないと感じることでしょうし、システムは「3」とほとんど同じだし、ストーリーは開始早々から前置きも無くグランドフィナーレに向けて飛ばしまくりで、作品単体として評価しようとすると「?」と思わざるを得ない部分もあり、巷でチラホラ見かける不評の論拠になっているようです。

 しかし、本来「あるはずのなかった最終回」がドリームキャストで遊べるという事だけで、私は満足しています。「4」単体ではなく、「サクラシリーズの総決算」として評価するべきだと思う。すでに撤退を終えたハードで、しかもわずか1年で、ファンのためだけに作られたという事実… これでスタッフの心意気を感じないようでは漢(おとこ)とは言えまい!ファンならそれができるはずだし、ファンならそうしなければならない。舞台は役者と観客が共に創り上げていくものなのですから!

サクラ咲く、サクラ散る…

 「サクラ大戦」のジャンルを「ギャルゲー」だと思っている人が多いようですが、これは大きな誤解です。確かに見た目はそうですし、そういう楽しみ方ができるのも事実ですし、そういう楽しみ方を否定する気もありません。逆説的に言えば、それほどまでにこのゲームのキャラクターは魅力的だったということでもあるのですから。面白を突き詰めてシリーズを重ねることが、皮肉にも一般人には近付き難い敷居の高さになってしまった。セガのハード撤退で仕切り直しの機会が与えられたのは、むしろ幸運なことなのかも知れません。

 今作は涙、涙の最終回というわけではありませんし、従来の宝塚的豪華絢爛大団円というわけでもありません。最大のテーマは「世代交代」です。米田司令官から大神一郎へ。晴れやかに、そして名残惜しく物語は終劇を迎えます。「舞台サクラ大戦」も神崎すみれ役の声優:富沢美智恵さんが今作を最後に引退し、次の世代「第二期サクラ大戦」に向けて動き始めています。終わりだけど終わりじゃない。舞台設定が変わっても、キャラクターが変わっても、変わらないものがある。それが名作の記憶です。当代最高のスタッフが足かけ6年の歳月をかけて完成させた「サクラ大戦」ほど、ファンに恵まれた幸せな作品は無いかも知れませんね。

Last update : 2002/04/11