サクラ大戦〜熱き血潮に〜
対応機種 : プレイステーション2
製作/販売 : RED/オーバーワークス/セガ
プレー時間 : 18時間

「サクラ大戦〜熱き血潮に〜」とは?

 「サクラ大戦」とは、1996年9月27日に発売されたゲームであり、原作:広井王子、脚本:あかほりさとる、キャラクターデザイン:藤島康介、音楽:田中公平という、各界を代表するクリエイターたちが手を結び、セガサターンオリジナルタイトルとして最高のセールスを記録しました。「1997年CESA大賞グランプリ」「1997年ゲーム・オブ・ザ・イヤー準グランプリ」など数々の賞を受賞し、その活動はゲームだけに止まらず歌謡ショウにも活動の場を広げました。しかし、サクラを取り巻く環境は決して順境だったとは言えません。セガサターンが失速してプレステに敗北・サクラ大戦の生みの親であり製作総指揮の入交昭一郎氏の引責辞任・DCの製造中止とハード事業撤退宣言・セガ最大の理解者だった大川会長の急逝という逆風の中にも関わらず、多くのユーザーから根強い支持を集めて、シリーズ累計250万本を達成し、セガを代表するタイトルとして過去たる地位を築き上げるに至りました。

 DCの終焉とともに「4」で第一期サクラを完結させ、新たにPS2で第二期サクラである「5」を立ち上げるにあたって、セガは「ワールド・サクラプロジェクト」を発表し、初代「1」を完全リメイクしてPS2に投入して、新規ファンを「5」へとつなげる道筋を立てる構想を発表。そうして生まれたのが「サクラ大戦〜熱き血潮に〜」なのです。

「スーパーリメイク」の真価は如何に?

 今作は単純な移植やリメイクではなく、ほとんど作り直しといっていいくらい手が加えられています。セガは「スーパーリメイク」と言っていますが、その看板に嘘偽りはありません。最先端の2Dデジタルアニメーションと3DCG・3Dポリゴンとの融合、戦闘システムにはARMSを導入し、新シナリオの追加・新イベントも大量追加・音声もすべて新規録音、というように、ファンにとっては痒いところに手が届くどころか、痒いところをかきむしっていたらどんどん気持ちよくなってしまう、そんな豪華絢爛な仕様になっています。しかし、その豪華さやこだわりの部分は、濃いファンにしか理解できません。このタイトルの本来の目的だった「新規ファンがサクラ5にスムーズに入っていくための布石」としては、その豪華さが仇となって、十分に役割を機能させることができなかったのかもしれません。

 私はずっと前から、「サクラ大戦をギャルゲーと同列に扱うな!」と言い続けてきたわけですが、今回、約7年ぶりにリメイクされた「1」をやってみて…なんだかすごい違和感を感じてしまいました。確かに大幅に手直しされているけど、手直しの方向性が全部「ギャルゲー文法」でなされていていて、もう私でさえこれをギャルゲー以外の何物だとは言えない仕様になってしまいました。のっけから好き好き光線出しまくりのさくらさんに何か違和感があるし…2Dアニメ絵に違和感を覚えるほど一々美麗すぎるグラフィックにも馴染めない。戦闘服への着替えのシーンにも疑問(どうして頭からダストシュートに突っ込んでいるのに、出てきたときには足から出てくるのでしょう?)。サクラ3以降のARMSシステムを採用した戦闘パートは説明書要らずなのだが、やたらと機体が詰まってしまう気がするのだが…まぁ、何にしても豪華で贅沢すぎるリメイク作であることには間違いありませんが…

セガの栄光と理想、その彷徨…

 さて、このレビューは諸事情によりゲーム発売から2ヶ月あまり経ってから書いたわけですが、PS2サクラがどうだったのか、出揃ったデータを分析してみると…ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、商業的には必ずしも成功だったとは言えないと思います。「サクラ5」のための「1」という位置付けであるならば、最低でも50万本、あわよくばミリオンも目論んでいたんだろうけど、そのあては大きく外れ、従来からのファン(「4」の最終人口)の微増に止まり、ショップ側も大量在庫の処理に四苦八苦しているようです。こんな状況下で「5」を投入しても、世界展開どころかミリオンなんて望むべくもない。結果として、セガはまたしても変われなかった、そう判断せざるを得ません。

 この作品はあくまでリメイクであって、昔感じた時と違う視点でゲーム内容を語る事はできないため、今回は敢えてレビューらしいレビューは書きませんでした。その代わり、この作品が担わなければならなかった使命に主眼を置いて論理を展開してきました。かつて、入交昭一郎氏がホンダの副社長の座を捨ててセガに移籍し、当時ゲームに疲れ果てて引退を決意していた広井王子を口説き落としてサクラを立ち上げ、DC戦線が苦しい中でも妥協せず納得いくまで「3」を作り込んだ製作者の理想…コアなゲームファンからは根強い支持を受けているものの、逆にそのパワーと伝統が一般ユーザーにとっては敷居の高さになってしまい、市場規模は狭まる一方です。ユーザー満足と売れる文法との板ばさみ。サクラ大戦は「勝負に勝って試合に負けた」ゲームなのかもしれませんね。

Last update : 2003/05/06