Never7 -the end of infinity-
PS2製作 : KID
 恋愛・ドラマ  サイコスティックADV  48時間 
キャラクターデザイン:影崎夕那 ディレクター:中澤工

「Never7 -the end of infinity-」とは?

 「Never7」とは、名作の呼び声高いKIDのSFアドベンチャー「infinity」シリーズの元祖となる作品です。シリーズ第1作は、「infinity」というタイトルで2000年3月にPSで発売されましたが、2000年12月にはDCで改訂完全版「Never7」として再発売され、2003年6月にはPS2にも移植されました。PS2版は基本的にはDC版/Windows版と同内容ですが、新要素として、DC版ではネットで(もしくは、他のKID製品から)ダウンロードしないとプレイできなかった30本以上のアペンドストーリーが、ネット接続不要でプレイできるし、好評のKIDシステムと呼ばれるシステム環境も更に充実しています。また、infinityシリーズといっても、「Ever17 -the out of infinity-」とは直接的なシナリオ上のつながりはないのですが、キュレイの概念や遺伝子工学の権威:守野博士などの世界観のつながりを楽しめるし、ギャグや元ネタや設定のルーツを知ることもできるので、シリーズのどちらかをやって面白いと感じた人は、相互にどちらも抑えておく事をお勧めします。(お話のクオリティはどちらも飛び抜けて秀逸ですしね)。

永劫の哀しみにピリオドを…

 このゲームの主人公は、大学のゼミ合宿に参加するため、南海の孤島にやって来た大学3年の石原誠。ろくすっぽ授業に出ていなかった彼は、ゼミの目的も内容も知らされないまま、初対面の班員たちとの合宿生活に入ったのだが…合宿初日の朝、最悪の目覚めを迎えた。それは…『目の前で誰かが死ぬ夢』。それが誰だったのか、その場所はどこだったのか、詳しいことは覚えていない。ただ、激しい雨が降っていたことと、その手に銀色の鈴が握られていたことと、その日が6日後の4月6日だったということだけは鮮明に覚えていた…最初は性質の悪い夢だと思っていた。初対面なのに、なぜかファーストネームで呼び合う仲間達との行き当たりばったりの楽しい日々。その中で、誠は一人の女性に惹かれていく…このまま、楽しい時は流れ、4月7日の到来とともに合宿は無事終了する…はずだった。

 しかし、あの悪夢に出てきた銀色の鈴が目の前に現れ、予知めいた怪現象を何度も体験して行くうちに、言い知れない不安は募っていく…そして、4月6日、どうしようもない運命に引きずられるように、その不安は現実の悲劇になってしまった。誠は『彼女』に誓ったはずの想いを守れなかった。彼女からの告白にまだ応えていなかった…引き裂かれんばかりの心の痛みとともに、誠は意識を失った………朝、目覚めた誠は自分の目を疑った。そこはロッジの自室。そして、腕時計の日付は…4月1日?!しかし、今度の誠には、あの6日間の記憶が、鮮明に残されていた…繰り返される同じ時間。誠は残された記憶を頼りにして、4月6日の悲劇を回避するため歴史を変えることを決意する。この無限ループを終わらせ永劫の哀しみにピリオドを打ち、『彼女』とともに4月7日の朝を迎えるために…

真実かどうかではなく、信じられるかどうかということ

 こういう謎系のゲームでは、何をどう書いてもネタバレになってしまうので、どこがどう面白いのか論じる事は非常に難しいのですが…(前の段落で書いたのは、あくまで導入部にすぎません)。ネタバレにならない範囲で面白さの要素を簡潔に説明するとすれば、「infinity=無限」の時間の繰り返しの中で描かれる恋愛によって「謎」の核心をぼかしている構造的な面白さと、無限ループを論理的に説明付けて否定しようとすればするほど謎が深まってしまい、虚構と現実、妄想と真実、その何もかもがわからなくなってしまう構造の面白さがあります。そして、最後の最後まで謎の真相にも彼女への想いにも確信を持てなくて、それでも「真実かどうかではなく、信じられるかどうかということ」という彼女の言葉を信じて、迷わずに大切なものを守ることができたとき、初めて無限の時から解き放たれる…この構図の面白さは、実際にゲームで体験してみないことには、いくら言葉を尽くしても伝えきることはできません。SFアドベンチャー好きの方に是非オススメしたい名作です!

Last update : 2003/11/06