風雨来記2
PS2販売・開発:FOG  2005年11月10日発売
 旅行・ドラマ   恋愛アドベンチャー  26時間 
キャラデザ:岸上大策、 音楽:風水嵯峨

「風雨来記2」とは?

 かつて、カメラマンだった父親の成功の足掛かりとなり、母親と出逢った北の大地で笑顔を撮った「最高の一枚」…出版業界の祭典「心光展」にノミネートされた主人公:相馬轍は、その最高の一枚を越えるため、北海道の大地を”アイツ”が残したバイクひとつで駆け回り、自分の目で見聞き肌で感じた旅をホームページ「風雨来記」で伝えていった。「最高の場所」と「最高の一枚」をただひたすら求めたこの旅の中で、かけがえのない人に出会い、ともに夢を追い駆け、そして別れた。 あれから4年…相馬轍は、今も旅から旅の生活を続けていた。あの時の一枚が自分たちにとって最高の一枚だったのかどうかは、今でも分からない。でも、何かが足りなかったら大切な人を失ってしまったんだと思う。求め続けなければ辿り着くことはない…でも、どこにあるのか本当に存在するかさえ分からない…「もっと先へ」「今ではないどこかへ」…轍は旅を続けることに迷いを感じ始めていた。

 そんなある日、沖縄で行われる「美ら島展」という自治体PRコンテストへの誘いが舞い込んできた。元ふうらい編集部のスタッフで、沖縄で独立してスタジオを構えた芹沢氏からの要請で、社運を賭けたプロジェクトに轍を名指しで招聘したいという…これは大きなチャンスであり断る理由もない。ここで成功すれば、念願のアラスカへの道も開ける。幻のような場所を追い求めることに迷っていた轍の背中を押したのは、今はもういないはずの”アイツ”…島田光からの手紙だった。「轍のいつか辿り着きたい場所って、ニライカナイを探すようなものじゃないかな?」届くはずのない手紙。悪戯とは思えないアイツの言葉。消印は沖縄…すべての答えを見つけるために、新たなる旅が始まる。それが、「風雨来記2」なのです。

最高の場所…沖縄の理想郷ニライカナイを求めて

 風雨来記の醍醐味と言えば、なんと言ってもその土地の生活・伝統・歴史・文化を、旅人の目線で体験し記者として紹介していく独特のシステムです。風光明媚な実写を多用する”FOG旅情シリーズ”にとって、PS2のグラフィック能力は良く似合っている。よりアニメチックになった絵柄も意外と実写に良く映える。前作は北海道の雄大な大自然だったが、今回は眩いほど光溢れる沖縄が舞台。システム面では、バイク移動が目的地を選ぶだけに簡略化。前作の移動方法は確かにめんどくさかったけど、バイクで旅する感覚をよく現していると思うのだが…カメラマン本来の仕事:WEBコンテストへの取り組みを重視する上では、むしろ必然と言える改変と言えるだろう。また、沖縄の方言(うちなーぐち)がおそろしく本格的すぎて、何を言っているのか分からないセリフが多くて、序盤はかなり混乱すると思います。発音や語感が違いすぎるので馴染みにくいのですが、徐々に何を言っているか意味が分かるようになるから不思議なものです。これも旅の醍醐味なのかもしれませんね。

 この物語の最大のキーワードとなる「ニライカナイ」とは、信心深い自然信仰が残る、沖縄各地で古来より語り継がれてきた、年に一度遥か海の彼方から神様がやって来るという伝説である。それは人々に祝福や生命をもたらす神が住まう理想郷という意味だけではなく、時として大いなる災厄をもたらし、死者の魂が還る場所という畏怖の対象でもある。そんな漠然とした定義に、主人公は自分自身の旅、そしてこの旅で出会ったパートナーたちが抱える想い、今の沖縄・伝統的な沖縄・神秘的な沖縄を伝えることで、やがてお互いに求め続けてきた夢の場所が見えてくる。それがたとえ、二人を分かつものだとしても…

旅の途中、これから続いて行く未来

 風雨来記2の情報はネットに少なすぎるので、たとえ僅かな人のためであってもネタバレはしたくないので、個別シナリオに対するこれ以上の言及は避けますが、今回の作品は泣かせてくれることを前提に臨まない方がいい、とだけ言っておきましょう。前作での主人公は「最高の場所」を見つけるために精一杯の背伸びをしていた。でも、今回は旅の途中で「迷いを振り切る」ための物語だったように思えます。メインヒロインである芹沢暦シナリオで明かされた、「アイツ」こと島田光という永遠の相棒の存在…憧れと嫉妬と、自分が居ていい場所… 上原海琴シナリオでの強く信じ心を震わせる三線唄も、真鶴・天継・テイラーのシナリオでのエケリの轍に対する無限の信頼も…すべては、これから続いて行く未来に向かう決意を現すものでした。

 旅を続けて出会いと別れを繰り返していくこと、その先にある夢を叶えてしまったあとにどうすればいいのか…主人公の悩みと種類は違えど似た者同士のヒロインたち…「夢の途中」で彷徨っていた二人が、やっと見つけた「未来に踏み出す勇気」という答え…それは向かっていく未来が風土に根ざしたものであり、誰かを縛り付けるための約束でも、誰かの重荷になるような誓いでもなく、いつか遠い未来で巡り逢うことを信じて疑わず、ごく自然とそうありたいとお互いに思える「始まり」であったこと…そう素直に思えるシナリオであったことは、ギャルゲーとしてではなく旅ゲーとして、この作品が高く評価されるべきポイントだと思います。設定上では、あと5年以内に身を固めないと主人公はエライことなりそうですが(謎)。北海道、沖縄ときて、「3」があるとしたら、やはり最終目的地はアラスカでしょう。何年後になるか分かりませんけど、遊び手自身の旅の思い出が色褪せることはない。気長に完結編?を待ちたくなる逸品です。

First written : 2006/07/05