ファイアーエムブレム 聖魔の光石
GBA販売/開発:任天堂/インテリジェントシステムズ
 戦略・育成  シミュレーションRPG  53時間 
公式HP

「FE聖魔の光石」とは?

 シミュレーションRPGの始祖であり、未だに根強い人気を誇り続けるファイアーエムブレム(以下、FE)シリーズの最新作、それが「FE聖魔の光石」です。原点回帰をテーマにして始まったGBA版のFEも今回で3作目。基本となるシステムは全くと言っていいほど変わっていませんが、今作では、ファミコンでのシリーズ第2作「FE外伝」以来となる魔物ユニットと、エピソードの幕間での自由行動マップ制を復活させるなど、原点回帰をテーマにしたGBAシリーズFEの総決算とも言える内容になっています。

 かつて魔王を封じたと伝説で語られる5つの聖石。それから時は流れ、人間同士の争いごとは絶えなかったが、世界を揺るがすような破滅を迎えることもなく、一定の平和が保たれていた。しかし、ある日突然、グラド帝国は長年の友好国のルネス王国に侵攻し、各国の守護石として封印されていた聖石を破壊して周り始めた。亡国ルネスの王女エイリークと王子エフラムの兄妹は、この世界の危機にいかにして立ち向かうのか…

変わらないFEの微妙な変化

 FEの最大の魅力といえば、完成された戦闘システムと戦術バランス、そして、育て甲斐のあるキャラクターたちです。戦いを勝ち抜くためには仲間を育成しなければならないが、弱い仲間を前線に送り出すことは大きなリスクを伴います。しかし、1人でも欠けることを許さないのがFE戦士:ファイアーエムブリャーの矜持! 例え闘技場で何百ターンもの勝利を積み重ねても、たった一度のミスですべてが水泡に帰す…温めのバランスになったと言われるGBA版FEでも、その厳しさは健在です。

 また、今作にも微妙な変化がいくつか見受けらます。自由行動マップに出現する塔や魔物とのEXバトルを設けることで、ユニット数制限のあるレギュラーマップでは活躍の場がない日陰者のキャラをいくらでも鍛えることができます。今回初の試みとして登場した「見習い」ユニットについては、LV10になると次のマップで自動的にクラスチェンジできて、更にそこから通常の育成も可能なので、通算LV50まで鍛えることができます。また、クラスチェンジにも2種類の上級職を選択できる形式になったため、育成の幅が更に広がりました(もっとも、選択する悩みもそれだけ増えてしまいましたけど、それは嬉しい悩みというやつですね)。ちなみに…「妹」を主人公にしたのは、萌えの潮流への任天堂なりのささやかな演出…なのでしょうか(笑)

今日も明日もいつものFEで?

 ファイアーエムブレムというゲームほど、何も変わらないことで支持され続けているシリーズゲームは、私の知る限り存在しません。初代の段階でシステムとして完成されていたゲームに手を加えるということは、新作を1本作ることより難しいことなのかもしれません。完成されたシステムというものには、単純な足し算は通じません。無用の付け足しは蛇足でしかなく、かといってどこかを削ればバランスが崩壊してしまう。そして、一度でも外してしまえば支持を失うのがシリーズゲームの宿命なのです。クリエーターの表現欲で暴走しがちな昨今の大多数のゲームとは違い、厳しい目を持つファンを年1本のペースで確実に満足させ続けているGBA版のFEは、ある意味ではゲームの進化の正しい方向性なのかもしれません。

 この原稿を書いている時点では、ゲームキューブ版のFEは未発売なので、どんな設計思想を持ったゲームなのか判断することはできませんが、果たしてこの先もFEが変わらないことをFEファンが望んでいるのかどうか…その試金石になるようなゲームであることを期待したいと思います(個人的には、ニンテンドーDSでFEがどう変わるのか期待したいですね)。

First written : 2004/11/07
Last update : 2004/12/25

※恒例の名言集付きキャラクター選評は、GM研通信vol.3にて書き下ろし収録いたします。