GM研 ゲームレビュー
BITTERSWEET FOOLS
SIMPLE2000シリーズ THE 恋愛アドベンチャー

対応機種 : ドリームキャスト/プレイステーション2
販売/開発 : D3パブリッシャー/minori
プレー時間 : 10時間

「BITTERSWEET FOOLS」とは?

 「Wind」をヒットさせてPCギャルゲー界の中堅ブランドの仲間入りを果たした「minori」のデビュー作が、D3パブリッシャーの低価格シリーズ「SIMPLE2000シリーズ」として家庭用ゲーム機への移殖が実現しました。移殖時の変更点は、Hシーンの削除、フルボイス化、シナリオ加筆。キャラクターデザイン・原画には、同人誌「GUNSLINGER GIRL」シリーズの「相田裕」を起用。オープニングムービーには、個人製作アニメ「ほしのこえ」の大ヒットで今や知らない者はいない「新海誠」が担当しています。新進気鋭のクリエータが競演するインタラクティブ・ノベル、それが「BITTERSWEET FOOLS」です。

※DC版には第九話「秘密の名前と一つのペンダント whimsical present.」第十話「薔薇がみる夢 There's no rose without a thorn.」の2話を追加収録。PS2版には第十一話「絵の中の希望 Holy Family with the young Saint John.」、第十ニ話「幕間劇 道徳の交差 crossing shadows.」の2話が追加収録されています。(非相互補完です)

裏の世界に生きる者たちの”ほろ苦い”恋物語

 物語の舞台となるのは、イタリア中部の大都市・フィレンツェ。芸術と歴史に彩られたこの街で、過去を引きずりながら裏の世界を不器用に生きる者たちがいる。非合法の危険な仕事を生業としながら、達観…いや、諦観にも似た穏やかな現在…だが、どんな未来にも繋がらない日々を送っていた。そんな彼らのもとに、舞い込んできた少女達が運んできた小さな温もりが、次第に彼らを変えていく。少女達の真っ直ぐな想いと無垢な魂は、いやがおうにも彼らの古痕を疼かせる。凍らせていた過去と、眠らせていた感傷に…

 それがどれほど愚かしい事なのか知りながら、彼らはお互いを求めずにはいられない。裏の世界に生きる者たち「FOOLS=愚か者たち」の「BITTERSWEET=ほろ苦い」恋物語、それが「BITTERSWEET FOOLS」なのです。

最高の素材と、最低のゲームデザイン

 誤解の無いように先に言っておきますが、私はこの作品が「読み物として」大好きです。しかし「ゲームとして」大嫌いです。それは、『「主人公=プレイヤー」というスタイルを排除し、映画の観客のようなポジションで物語の世界へと誘う』というこの作品の設計思想が、完全に消化不良を起こしているからです。そもそも、どうしてマルチエンディングでもないのに、ルート分岐を設けて物語を小出しにする必要があるのか?まったく理解できません。折角丁寧かつ繊細に描かれてている登場人物の心情の機微が、つながりの悪いルート設計のせいで台無しです!移殖作なのに誤植がいっぱいだし、既読スキップのフラグ管理もデタラメだし…

 キャラクターデザイン・人間関係・性格付け・雰囲気・舞台設計・音楽…すべての素材が上質なのに、味付け(ゲームデザイン)が悪いとすべてが台無しになってしまう。システムがダメだとゲームとしては成り立たない。その好例と言えるだろう。「2000円だから仕方がない」と甘く評価することはできない。なぜなら、追加されたシナリオを全て見るためには、DC版とPS2版の両方を買わざるを得ないので、結局4000円かかることになるのだから…(何のための低価格路線なのやら…)。「ゲームであることを期待しない」そう割り切れば2000円分以上の価値があるのも確かです。無条件でオススメするわけにはいかないが、値段と目的を十分に考慮した上で検討してみる価値はあるかもしれません。

Last update : 2002/09/19