薔薇の蕾の紅茶会
同人誌サークル:TUGUMIX
 マリア様がみてる  椿組トリオのお茶会   
作者:林つぐみ

(C)2006 TUGUMIX

「薔薇の蕾の紅茶会」とは?

 乃梨子、瞳子、可南子。周囲からは通称で「椿組トリオ」とも、「未来の山百合会」と呼ばれている三人。その三人がどういうわけだか放課後の教室でお茶会を開くことに。これは、これまでは乃梨子にしか懐くかなかったツンツン瞳子が、かつての天敵の可南子さんが瞳子をフォローしたりで仲が良くしているように見えるのが、瞳子の一番の友達だと思っている乃梨子にとっては見るに耐え難い嫉妬!な状況であり、じれた乃梨子が二人の仲を邪魔しよう(探ろう)と企画したものだったのですが…いざとなると話が弾まないこと請け合いで…

 話題は自然と、唯一お姉様を持つ乃梨子の話に。お互いをただ見つめるのではなく、同じ目線で同じ物を見つめられるのは、まるで熟年カップルのように素敵だという可南子の分析に頷き、他人のことだと冷静に分析できるのに、自分のこと(祐巳様のこと)になると素直になれない瞳子。そんなふぞろいな蕾たちの幕間劇、それが「薔薇の蕾の紅茶会」です。

ライバル?友達?それとも…

 溜息混じりにあてこすり(遠回しに悪口や皮肉)をする可南子に、痛いところを突かれて瞬間着火した瞳子との間に、いつもと同じように繰り広げられる「仲良く喧嘩しな状態」の中にあっても、今の乃梨子にはそれがライバルとしての言葉ではなく、自分とはちょっと言い方が違うだけで、可南子さんも自分と同じように瞳子を応援してくれてるんだと気付くことができたのです。そんな乃梨子が自分らしく瞳子に友達としてかけた、まっすぐで素直なコトバ…それは、恥ずかしさよりも温かさと爽やかさに溢れたものでした。瞳子の表情と同じように、読んでる方が照れてしまうかもしれませんが…

 また、そういう立ち位置でのTUGUMIXさん的可南子像を知っている読者にとっては、半年後の2006年冬コミで発行された、可南子の切さが炸裂するストーリー漫画「FRAGILE:」に泣かされてしまうこと必至です。その時々に感じたことをストレートに表現する作風なので、無理につなげて考える必要はありませんが、今作のような日々の積み重ねの先に、あの揺れる想いがあると思えば、ますます感情移入してTUGUMIXさんの作品を読めると思います。

隣に誰かが居てくれるということ

 同じ1年生ズの括りで収録されている笙子ちゃんのエピソードも必見です。祐巳ちゃんを撮る蔦子さんの写真は、誰の目に見ても特別なものだけど、蔦子さんの隣で時間を過ごすようになった笙子ちゃんにとっては、それはより一層特別なものに感じられて…自分は隣に居てはいけないとさえ思ってしまう。そんな笙子ちゃんにかけた蔦子さんの台詞…カッコ良すぎです!「決戦は愛曜日」からの流れを知っているファンにとっては、それこそガッツポーズものでした。フィンダー越しの微笑みと、隣に居て手から伝わる温もりは、どちらも特別なもので、比べられるようなものではないのだから…

 これは、本作に限ったことではありませんが、TUGUMIXさん作品の定番とも言える裏表紙の「オマケマンガ」も必見です。いつだって修羅場で本音ダダ漏れなぶっちゃーけトークが満開ですが、でも、そうして変に気取ったり身構えることなく、いつだって本当に大好きな作品とキャラへの気持ちを素直にぶつけて描いているからこそ、読者にも理屈抜きで「描きたい」と思ったテーマを伝えられるパワーが生まれるのでしょう。作者とキャラ、作者と読者。同人のその距離の近さが面白さにつながっていることを改めて認識できるオススメの逸品です。


※画像使用許諾:2006/10/20
First written : 2007/03/21

※このページで使用している画像は、GM研が作者様より直接使用許諾を受けているものです。
画像の著作権は作者様に帰属します。作者様に無断での転載、及び画像ファイルへの直リンクを禁じます。