マリア様がみてる(アニメ版)
アニメ発売:ジェネオンエンタテイメント
 学園・ドラマ  少女ライトノベル  第一期、第二期 
放送:テレビ東京系

「マリア様がみてる(アニメ版)」とは?

 かつては”乙女の聖域”とさえ呼ばれ、男性読者が気軽に読むことなど到底できなかった少女小説という分野に、センセーショナルな革命をもたらしたライトのベル、それが「マリア様がみてる」(以下、マリみて)です。詳しい説明は、原作小説版のレビューに譲るとして、今回はTVアニメ版のマリみて(以下、アニみて)についてご紹介いたします。そもそも、少女小説がアニメ化されるのも異例なら、視聴率が1%にも満たないのに第3期シリーズ確定という長寿作品になったのも異例です。DVD時代にあってLDサイズの限定版を出すのも異例。何かと異例尽くしのこの作品が支持されているのは何故でしょう?

 「マリア様がみてる」のDVDシリーズには通常版の他に、完全予約限定版のコレクターズエディション(以下、CE1)も存在します。通常版のvol.1とvol.2を収録しているため、通常版とはナンバリングと発売時期がずれているのでご注意下さい。CE1の特徴は、とにかくデカイということ。DVD時代になって標準サイズはコンパクトになったのに、わざわざLDサイズを採用しています。カバーの中面には、ひびき玲音先生の描き下ろしイラストをフルカラー・フルサイズで収録しているものの、映像特典の「マリア様にはないしょ。」は、通常版に収録されているものと同じなので…限定版としての価値の妥当性には多少疑問が残ります。もっとも、コレクターはそんな事は気にしないものなのでしょうけど…はてさて、この巨大なケース、どこに収納したらいいものやら…

アニメだからできること、アニメだからできないこと

 さらに細かくチェックしていくと…第1巻の内容を3話にまとめるという構成上、原作のいくつかのシーンが、残念ながらカットされています。蔦子さんが機転を利かせて祐巳ちゃんを新聞部の取材から逃がすシーンでの「ナツメさん」や、カレーの試食に祐巳ちゃんの分も用意されていたことで山百合会のメンバーとして認められていることを実感するシーンや、祐巳ちゃんのシンデレラの衣装の胸に詰め物をするシーンや、柏木が「自分は男しか愛せないけど結婚はするから、さっちゃんは好きに男を作っていいよ」と、かつて祥子様に言った回想シーン…このように、さりげないけど重要なキーポイントが抜けているし、終盤での間の取り方にもいくつか疑問があるし、祐巳ちゃんの百面相はもっと賑やかでもいいような…

 第2巻では、祐巳ちゃんの百面相の演出に、格段に力が入っていると感じるのはなぜでしょう?バス停での祥子様とのやりとりの百面相は漫画的演出でとても面白かったし、お腹の虫がなるシーンでも大笑いさせてもらいました。今回の話の主役は、前エピソードでは一言しかセリフの無かった由乃さんだけど、猪突猛進・先手必勝の由乃さんの本領発揮はむしろこれからだから、この先の活躍に期待していましょう(ちゃんと声優さんが「病弱由乃さん」と「鉄砲玉由乃さん」の演技を使い分けてくれる…かな?)。欲を言えば、由乃煩悩な令様の狼狽振りがチト物足りなかったのと、黄薔薇さまの奇行が省略されて伏線として弱かったことくらいですかね。それにしても、リリアンかわら版ってカラー印刷で何気に豪華仕様なんですね(笑)築山美奈子様もいい味出してるし、瞳子ちゃんの縦に揺れるドリル縦ロールも、第2期に1カットだけ可南子も登場していたりと、芸の細かさも光ります。第2期ラストでの祥子様のお婆様の回想シーンは、アニメならではの好演出だと思いますよ。

 しかし、アニメだからこその限界だと感じる部分も多々ありました。小説版はザッピング形式で書かれているため、ところどころシーン演出の順番に違和感が出てしまいます。1本の時間軸で構成する以上仕方の無いことですが、演出効果としては弱くなってしまいます。更に細かい点では、志摩子さんのお父さん(住職)が少し男前すぎる気がします。あの顔で花寺の講演で爆笑を取るのは…ちょっと想像しにくいですねぇ。そういえば、「タクヤ君」の下りが全部バッサリカットされていましたが、では後日の新聞部の真美さんのエピソードもカットということでしょうか?2年目の学園祭での二人のコンビも見れないのかと思うと、ちょっと残念なり。

原作を声付きで読むためのオプション

 アニみての評価については、事前に多くの同人誌作家さんの評価でも知っていたので、祥子様の目が青いことも、声優さんの声のイメージの違いについても、静止画ではどうにもイメージが合わなかった作画についても、「まぁ、そういうもんだ」と納得した(諦めた?)上で鑑賞することができました。声についてはそのうち慣れるでしょうけど、柏木さんのホスト声だけは、ちとやりすぎという気も…それと、リリアンの校舎ってあんなに和風でいいのかな?という気もします。薔薇の館の外観もイメージに合わないような…瓦葺きはないだろうと。古さの中にも歴史の重みを感じさせる明治初期の西洋建築、というイメージだったんですけど…もっとも、これだけ細かく指摘できるということは、それだけ「マリみて」の世界が好きでしょうがないという証明でもあるわけですけど。

 あ、そうそう。この世界にまったく免疫の無い人は、アニメ版を観てみてから小説版を読んでみようかな?などと軽く考えてはいけません!絶対に! 限られた条件の中で頑張ってアニメ版が作られているのは理解できますが、ロサ・キネンシス・アン・ブウトン・プティ・スール(紅薔薇のつぼみの妹)などの専門用語が連発されるアニメ版の最初の数分だけで、初心者は観る気をなくしてしまうでしょうし、時間枠の制限もあるため、原作の肝となっていた脇役や前提となる伏線を描ききれていないので… 小説→同人誌(もしくは公式漫画)→アニメ、この順番で、アニメ版は原作を声付きで読めるようになるための贅沢なオプション、というくらいに割り切って楽しむことをオススメします。

First written : 2004/11/28
Last update : 2004/12/25