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週刊GM研 Vol.44
2002/04/20


Index
【News Headline】
【mini Review】
  • 漫画
  •  : GTO 藤沢とおる
  • CD
  •  : 永遠のフィルムの中で 井上涼子
  • 雑誌
  •  : PALLETA vol.3 
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 vol.698
    【COLUMN】


    ■News Headline

    変態監禁男…仮想世界と現実社会を混同か】 ZAKZAK  

     若い女性を首輪や鎖でつなぎ、約2週間にわたって暴行を加えていた男が北海道警江別署に傷害と監禁の疑いで逮捕された。逮捕時も別の女性2人を監禁しており、被害は複数女性に及ぶとみられる。同署は、男の自宅から女性を性的に“調教”するアダルト系パソコンゲームを押収し、関連を調べている。

     この事件は、以前から「ゲームが若者に及ぼす悪影響について」取り上げてきたマスコミの、格好の餌食となりました。しかし、この記事を読めば読むほど、私は首を傾げてしまいます。容疑者の経歴を読んでみると、「21歳なのに、4人もの女性と結婚、離婚を繰り返していた」とか、「真夜中に裏庭にあるサンドバックを叩いていた」とか(なぜ裏庭にサンドバックが?)、被害者の女性が「監禁中、首輪をつけられるなどゲームと同じような待遇を受けた」と証言しているそうだが、なぜ被害者の女性に「ゲームと同じような」なんて知識があるのでしょう?

     この事件から浮かび上がる容疑者像は、いわゆる「おたく」性質とはかけ離れたものです。その手のゲームが大量にリリースされているのは事実だし、その内容もすごくエスカレートしているのも事実です。私は非エロのギャルゲーは相当数こなしていますが、エロゲーはほとんどやりません。これは単に私の個人的な嗜好によるものであって、エロゲーの存在価値を自体を否定する気はありません。

     私に言わせれば、この容疑者はゲーマーとして三流だと思います。ゲームというものは逞しく想像力を働かせて楽しむものであり、現実すら超える架空だからこそ楽しいのであって、それを「現実世界で実践してみよう」などという気を起こすなんてありえないのです。※妄想と実践は全くの別物です。妄想で済ませられる想像力の持ち主は、欲望を溜め込んでしまう一般人よりも、むしろ安全とすら言えます。

     ゲームがあまりにも一般的なものになってしまったのが、問題の根幹にあるような気がします。ファミコン時代、もしくはそれ以前からの年季の入ったゲーマーは、表現力の乏しい昔のゲームで想像力を鍛えられているけれど、最近の若いモンはいきなり超美麗なグラフィックを観て育っているので、想像力が割って入る余地がない。そうして育った現代っ子は、仮想と現実を混同するというよりも、「こうしたらどうなる」という想像が働かないのだ。

     ゲームとは、世界最高のエンタテイメントになりうる素晴らしい娯楽だが、その反面、影響力も非常に大きくて、遊び手の趣味嗜好に大きく左右されます。この先ゲームが文化として成熟していくためには、次の世代に対してゲームの作法そのものを伝えることから始めなければならないのではないでしょうか?


    ■mini Review

    【GTO(24)(25)】 藤沢とおる / 週刊少年マガジン  
     週刊少年マガジン誌上で大好評を博していた「GTO」も、この単行本でいよいよ完結です。マガジンを発行部数日本一の週刊少年誌に押し上げたこの作品は、「湘南純愛組」というヤンキー漫画と同じキャラクターを使い、設定を変えることによって大化けさせるという、現代マガジンの路線を象徴するものとなりました。「教育とは、なんぞや?」という難解なテーマに対して、決して模範的な答えではないけれど、元ヤンキーが力技でねじ伏せていくのは読んでいて気持ちよかったです。実際の教育現場における問題は、漫画よりも実態はもっと酷い深刻なものですが、教師側も生徒側も「学校」とうものの意味を考えるきっかけにしていただきたいものです。

    【永遠のフィルムの中で】  井上涼子 / データムポリスター 
     「ルームメイト」シリーズで(ごく一部の地域で)御馴染みのデータムポリスターが、シリーズ完結を記念して限定2000枚でHP上通販をしていたCDです(※3/20で受付は終了しています)。私はゲーム本編は一度もやったことがないのですが、行きつけのニュースサイト「森の十字路」の管理人さんが絶賛していたことと、3枚組み全37曲という凄まじい仕様に惹かれて勢いで買ってしまったのですが… これが思わぬ大当たりになりました。イイ!すごくイイ! ハッキリ言って「ときメモ」のボーカルトラックなんぞ比べ物にならないほど素晴らしい出来です。全ての曲に「三井ゆきこ」さんという方が関わっていて統一感も完璧だし、曲個々の歌詞のレベルも非常に高い。どうして、あんな販売本数でシリーズが存続できているのか不思議だった「ルームメイト」シリーズですが、なるほど、実はこういう部分で光るモノがあったから、根強いファン層を確立できたんですな。行き当たりバッタリなプロモーションしかできないTLSの販売元も、是非見習っていただきたいものです(既に後の祭りですけどね…)。

    【PALLETA vol.3】  エンターブレイン 
     リニューアル3号目となる今号では、前々回、前回のような大物企画はなくなりましたが、これこそある意味では「旧げーむじんPARTNER」らしい誌面づくりであり、昔からの読者としてはなぜか安心してしまいました。どマイナーなギャルゲーに混じって、唐突に「ゼノサーガ」の高橋哲哉監督のインタビューが載っていたりと、なかなか愉快な誌面構成ですが、雑誌としての牽引力となると?疑問がないわけでもなかったりして。eb、softbank、電撃、3社によって激化する「萌え雑誌戦争」の最中ですが、PALLETAがクリエータ主観の雑誌として独立独歩の地位を築けるかどうか、今号あたりが正念場になるかも?

    【週刊ファミ通 vol.698】  エンターブレイン 
     
    絶体絶命都市アイレムソフトウェア
    (大宮)8 (針生)8 (奥村)8 (杉原)8
    大地震で孤立した都市から脱出する3Dアクションアドベンチャーゲーム。以前からファミ通がプッシュしてきた新感覚のサバイバルアクションだが、肝となるべきグラフィックが弱いので危機感やインパクトには欠けます。
    ワールドサッカーウイニングイレブン6コナミ
    (酒井)9 (嵐山)9 (菅谷)8 (羽田)10
    今や敵なしの世界最高のサッカーゲームの最新作。シミュレータ並にリアルな選手の挙動、ボールの動き、能力設定、何をとっても文句のつけようがない。その分、難易度も恐ろしく高いんですけどね。大きな変化はマスターリーグモードくらいですが、目に見えない微調整が加えられていてシリーズファンは悶絶ものでしょう。
    HALOマイクロソフト
    (酒井)9 (嵐山)8 (菅谷)7 (羽田)9
    いわゆるDOOM系の一人称3Dガンシューティングです。Xboxの力技で映像は大迫力で超美麗。いかにも欧米人が喜びそうなゲームですな。しかし、肝心要のネット対戦機能がついていないし、リンクケーブルで16人対戦が可能と言っても、そんな環境は家庭レベルでは構築不可能です。
    My Merry Mayキッド
    (酒井)7 (嵐山)7 (菅谷)7 (羽田)7
    ある日突然送られてきた人工生命体の女の子と共同生活!というありがちな設定だが、キッドお得意の切ない系で良くまとめられている。スキップを極めた「キッド・システム」で快適に複数回プレーが可能。時間軸を遡って進行するストーリーに乗り切れないとの声も。タイトルが非常に読みにくて困るのは私だけ?

     その他では、「日米間プロ野球」「ルーン」「サーヴァランス」、などなど月末は発売本数が多すぎて(今週は特にゴールデンウィーク前ですしね)、佳作まで手が回らず手抜きになってしまいます。当然、買えるゲームはさらに絞り込まれてしまい、未プレーのまま過ぎ去ってしまいます。その辺をもう少し考慮していただきたいものです。

     久々の掲載となった「ドキばく」は、いつにも増して修羅場モード全開です。今号から3号連続掲載をするそうなので、さらにやる気のない腐乱死漫画が堪能できそうです。次号はいよいよ通算700号!(※合併号なので699号は存在しない) ページ数は倍増の400ページだし、近藤るるる先生も復帰予定です。最近マンネリ気味の誌面も、これを契機に少しは改善される(のかなぁ?)


    ■COLUMN

    【Xboxの迷走はどこまで続くのか?】 
     マイクロソフトは、欧州でのXboxの価格を、4月26日から479ユーロ(約5万6,000円)から299ユーロ(約3万5,000円)に値下げすることを明らかにした。同時に、オーストラリアでも399オーストラリアドル(約28,000円)への値下げが行われる。以前の価格でXboxを購入したユーザーへは、マイクロソフト製のゲーム2タイトルとコントローラ1個がセットになったスペシャル・パッケージで差額を埋めるようにするとのこと。

     欧州でのXboxの出荷が始まったのが3月16日であり、わずか1ヶ月で38%もの大幅値下げをしたことになります。この緊急決定の背景には、欧州の有名ゲームメーカー(THQ)のCEOがマイクロソフトに対して「こんな値段で売れるか!こんちきしょう!(意訳)」と詰め寄って値下げを求めたという事実があるのだが、今回はその話は置いておきましょう。

     異例の緊急値下げゆえに、高い定価で買わされた消費者が憤慨しないように差額の補償手段を用意したりしているが、そもそも不思議でならないのは、どうして量産効果も上がっていない(それどころか出荷計画は200万台近い大幅な下方修正を強いられている)のに38%もの値下げが出来るのか? では、479ユーロという価格は何を根拠に設定された値段だったのか? ハードマニアを狙い撃ちにしたボッタクリ価格なの?(深読みしたらキリがない)

     今回の値下げはあくまで欧州でのことであり、日本での価格変更はないらしいですが、ハードの週間販売台数が4000台を割り込むという厳しすぎるこの現状を打破するには、値下げの可能性は完全に否定は出来ない。ただし、Xboxの場合は、ディスクに傷がつく問題に対する明確な解決は未だになされておらず、信用回復ができていないので、値下げしたからと言って短期的な効果は望めないだろう。しかし、今マイクロソフトがやる気を見せておかないと、日本のゲームメーカーからの信用をつなぎ止めることすら難しくなる。

     北米では100万本を出荷した「HALO」が4月25日に日本でも発売されるけど、肝心要のネット対戦機能が付いていないし(リンクケーブルで16人対戦なんて環境をどうやって構築しろとおっしゃるので?)、欧米人大好きの3Dガンシューティングは日本人の国民性には合わないのでハード販売の牽引役にはなれないだろう。

     Xboxは、ゲームキューブのように未来に確実な大作ソフトが控えているわけではない。これまで何度もゲーム機の世代交代を経験してきた日本のゲームユーザーのハードを見る目は非常に厳しくて、未来に期待が持てないハードは絶対に買ってもらえない。だが、本当に遊びたいゲームが1本でもあるならば、それ1本と心中覚悟で買ってくれるという性質もある。今のXboxに必要なのは、ユーザーに夢を見させる未来のカレンダーなのです。

     5月のE3でなんらかのアクションがあるのか、今後とも注目していきたい。


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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