Weekly Web Magazine
週刊GM研 Vol.40
2002/03/16


Index
【News Headline】
【mini Review】
  • CD
  •  : 太田裕美 2000 BEST
  • CD
  •  : Xenosaga オリジナルサウンドトラック
  • 漫画
  •  : 探偵学園Q(4) さとうふみや&天樹征丸
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 vol.693
    【COLUMN】


    ■News Headline

    スクウェア、任天堂との歴史的復縁が実現】 GAMESPOT 

     スクウェアは現在,任天堂のゲームボーイアドバンスに向けゲームを供給する準備を行っていることを明らかにした。リリースによると,同社は“ゲーム企画開発会社(商号:ゲームデザイナーズ・スタジオ(仮))”を資本金1,000万円,河津秋敏51%(スクウェア執行役員を兼務),スクウェア49%の資本構成で設立,同社を通じて任天堂のGBA向けゲームソフト供給への準備を行っているという。なおスクウェアでは,「FF XI」「FF XII」については,プレイステーション2をメインプラットフォームとして発売することに変更はないとしている。

     ここで両社の確執の歴史を簡単に振り返ってみましょう。スーパーファミコンから次世代機への移行の際、映画的ゲームを目指すスクウェアと、玩具的ゲームにこだわる任天堂の溝は埋まることは無く、衝撃的な「ファイナルファンタジーVII」のPS移籍宣言が行われ、PSの日本市場制覇の決定打になった。以来断絶関係にあった両社だが、高騰を続けるゲーム開発費と縮小を始めたFFファン層への対応策として、独占的な携帯機シェアを持つ任天堂との復縁交渉は数年前から水面下で続けられていた。しかし、スクウェアが映画で大赤字を出してSCEからの資金に救済されたことにより、復縁実現の可能性はなくなったと見られていたのだが…

     任天堂の山内社長が約200億円の私財を投じてゲームベンチャー向けの無担保投資ファンド「ファンド・キュー」プロジェクトに、スクウェア取締役の河津秋敏氏が「新しいファイナルファンタジーを作ってみたい」と申し出て実現の運びとなった。新たに設立したスクウェアの子会社「ゲーム・デーザイナーズ・スタジオ」を経由する形で、ゲームキューブとGBAを連動させるFFを開発中で、今年のクリスマスに発売予定。他にもGBA用タイトルを2本制作で、そのうちの1本は「ファイナルファンタジー・タクティクス」であるという…

     この発表を受けて、スクウェア株は連日のストップ高を記録している。19%のスクウェア株式を保有するSCEも、FF11以降のシリーズ本編はPS陣営で発売するとの約束を取り付けて、任天堂ハードへのソフト供給を容認する構えである(スクウェアが儲かればSCEの儲け、失敗しても開発資金は任天堂持ちなのだから、ビジネス面では反対する理由はない)。かつてスーパーファミコンの外付けCD-ROMとして開発されたPlaystationを一方的に反故にされた遺恨はあるが、そのお陰で今のSCEの世界制覇があるのだから、世の中何がどう転ぶか分かりませんなぁ。

     私はスクウェアに対して厳しい意見ばかりしてきたが、それは期待の裏返しでもある。シリーズの呪縛から解き放たれた新しい「ファイナルファンタジー」がどんなものになるのか、期待して待ちたいと思います。

    もくじへ戻る


    ■mini Review

    【太田裕美 2000 BEST】  太田裕美 / Sony Music Entertaiment 
     なぜか突然、太田裕美。私が物心つく前の曲が大半なので、リアルタイムの記憶や想い出はまったくありません。作詞の松本隆氏を「Wink」でしか知らないし、作曲の筒井京平氏を「いたスト2」でしか知りません。それなのに、聴いていると胸を突くような郷愁を覚えました。大量消費されて何も残らない流行歌に成り下がった現代のJ-POPよりも、シンプルだけど人の情感に強く訴えかけるひと昔前の歌謡曲の方が魅力的に見えてしまうのは当然なのかも。「雨だれ」「さらばシベリア鉄道」「9月の雨」などは、歌詞の情景が目にありありと浮かんできました。時代を経ても良いものは良い!

    【Xenosaga オリジナルサウンドトラック】  光田康典 
     あぁ、相変わらず光田康典さんのゲーム音楽は良いなぁ。ロンドンフィルの演奏の良さはド素人の私にはまるで分かりませんが、ジョアンヌ・ホッグの儚い歌声と、アイリッシュサウンドを堪能できました。今回はゲームがフルボイスなので、音楽は一歩下がった位置づけになっている。そのため、どうしても前作「ゼノギアス」のサウンドトラックに比べるとパンチ力に欠けるという感は否めない(宗教的な楽曲も今回は使いどころがなかったしね)。特に良かった曲は「Battle」(やっぱり一番回数を聞いた曲だし)、「温もり」(ピアノ好きにはたまらない!)、「The Resurrection」(聖楽曲こそ光田ワールドの神髄!)、「The Miracle」(CMでも良く流れていた)といったところ。やっぱり「ゼノ」は光田音楽がなけりゃ始まらない!サウンドトラックもいいけれど、せっかく5.1ch対応ゲームなんだから、ゲーム本編でも5.1chでサウンドを楽しみましょう(金と近所迷惑をクリアする必要がありますけどね)。

    【探偵学園Q(4)】  さとうふみや&天樹征丸 
     「金田一少年の事件簿」でミステリー漫画の金字塔を打ち立て、週刊少年マガジンを日本一の漫画週刊誌の座へと押し上げた名コンビが送る新シリーズ、それが「探偵学園Q」です。日本で唯一拳銃の所持を認められた警視庁公認の名探偵:団守彦が運営する探偵育成学校で、団守彦が自らの後継者を育成・選別するために開設したのが「Qualified class(通称:Qクラス)」である。「金田一」でのトリックの巧妙さが見事だったが、「Q」でのトリック自体はそれほど深くない。でも、5人の名探偵(候補)がそれぞれの個性を発揮して解決に近づいていくのを見守る楽しさがあるとも言える。推理のヒントすら与えない「コナン」よりも、出し惜しみなくヒントを提供してくれる「Q」の方が、ミステリー漫画としては上質だと思います(ドラマ性では「コナン」の方が上手ですけどね)。

    【週刊ファミ通 vol.693】  エンターブレイン 
     今週のクロスレビューは、DC【サクラ大戦4 恋せよ乙女】が36点を獲得(絶賛と惜別の嵐!「第一期サクラ大戦」のグランドフィナーレに相応しい快作!ギャルゲー扱いして敬遠するなんて勿体無いですよ!)。 PS2【ガラクタ名作劇場ガラクタ王国】は32点を獲得(スタジオジブリとの提携で話題を集めた「落書き感覚」ゲームだが、4人中3人が「読み込みが遅い」と苦言を呈しているとは、よほど気になる遅さなのだろう)。 ゲームキューブ【バイオハザード】は39点を獲得(リメイクに止まらない驚愕の映像進化を遂げた「元祖バイオ」。小中学生がメインのゲームキューブユーザーに、どこまで需要があるかという不安があり、事と次第によっては「バイオシリーズGC独占供給宣言」の撤回もありえる?)。

     コラム「浜村通信」にて、いわくつきのビル爆破解体パズルゲーム「ビルバク」の開発秘話が掲載されていた。昨年9月の米国同時多発テロによって発売が無期延期になっていたが、ようやく3月20日に発売に漕ぎ付けた。しかし、それは企画当初の理想とはかけ離れた、妥協を強いられたものになってしまった。アメリカでも3社しか存在しないビルの発破解体業者のひとつ「CDI社」に取材して一子相伝という門外不出の技術を聞き出し、フジテレビや都庁をCGで倒壊させる承諾まで取り付けていたのに、あの事件のせいで全てを破棄することになってしまった。惜しい!惜しいぞ!惜しすぎる!是非、お蔵入りになったその「テロ前バージョン」をやってみたい!あぁ、勿体無い…「GUNPEY」以来のパズルゲームの発明になれたかもしれないのに…(合掌)

    もくじへ戻る


    ■COLUMN

    【TSUTAYA,中古ゲーム売上の2%をメーカーに還元】 
     CDレンタル(+その他)の全国チェーン「TSUTAYA」の経営母体「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」(以下、CCC)が、中古ゲーム販売におけるソフトメーカーへ売上の2%に当る金額を支払うことに決定した。

     一時の訴訟騒ぎは聞こえなくなったが、未だに根本的解決には到っていない中古ゲーム訴訟問題。「メーカーに対して数パーセントの利益を還元する」という妥協案が常に模索されてきたが、訴えているメーカーサイドの足並みは揃わず、中古販売業界団体も一枚岩とは言えなかった。結果、いくつもの団体が入り乱れて意見の一本化ができずにいた。

     CCCがいち早くメーカーへの利益還元の具体的な数字を発表したのは、現在一部の店舗で行っている中古ゲームの取扱を始めてから「リサイクル部門」の売上が2倍になったという実績を全国規模に拡大し、なおかつ、CESAなどが主張している「3〜4%」という還元率に先制攻撃を加える狙いがある。問題の長期化による消費者の問題意識風化に悩むCESA側には、この具体的提案を拒否することはできないだろう。なし崩しでこのまま「2%」で決着される気配が濃厚になってきた。

     問題は、その2%が中古価格に上乗せされることである。消費税のように後付ではく、値段に含まれているのでちょっとくらい値上がりしても気付かないかもしれないだけに、性質が悪い。私としては、不当に安い買取り値と不勉強な中古価格しかつけない「TSUTAYA」や「BOKK OFF」で中古ゲームを買う人の気が知れない。世の中には、「そんな高値で買い取って商売になるの?こんな値段つけていいの?」と驚かさせるくらい頑張っている中古ゲーム屋さんもあるのである。CCCの「自分だけ合法顔(ヅラ)して楽して儲けよう」などという根性が気に食わない。

     「1円でも安く買い、1円でも高く売りたい」と願う金欠ゲーマーと、買取値と在庫の綱渡りで店を切り盛りする中古ゲーム屋との熱いバトル。確かに、短期的には販売機会の損失であり、メーカー側にとって百害あって一利なしである。しかし、長期的にはゲームヘビーユーザーの育成に繋がるのである。私のようなゲーマーが経済力を持った社会人になると、中古で買うことはほとんどなくなり(捜す時間がないから)、未開封の新作ゲームを山のように積んでしまうくらいだ。

     もし、中古ゲームがなければ、あのスーパーファミコン全盛時代の価格暴騰時代を乗り切れなかっただろうし、大学時代にあれほどの数のゲームをこなすことはできなかっただろう。ゲームから一度離れた人を呼び戻すのはとても難しいことだと思う。冷静に考えたら、これほど無益な娯楽は他にありませねんからねぇ… よく、「ゲームの裾野を広げるためにライトユーザーを取り込まなければならない」という意見を目にしますが、私は「広げた裾野を維持するためにどうすればいいのか、分かっているんですか?」と聞き返してみたくなる。そもそも…

     (長くなったので今週はここまで。来週に続く!)

    もくじへ戻る


    文責:GM研編集部編集長 gonta

    GM研TOPページに戻る