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Review circle gmken. He whispers some words in your heart, and makes your gentle OTAKU days.
GM研
その後のEVANGELION
同人誌サークル:美術部
 ジャンル:新世紀エヴァンゲリオン 
作者:しづきみちる


「その後のEVANGELION」とは?

 1997年7月、新世紀エヴァンゲリオンの完結編となるはずだった劇場版が公開されました。しかし、大多数のエヴァファンがあの救いの無いラストシーンに落胆し憤慨したあの夏の日を境にして…空前の隆盛を誇っていたエヴァジャンルからサークルが次々と離れていく中で、あるところに、あのラストに創作魂を刺激されたハッピーエンド好きの同人作家さんがいました。終わってしまったものはもう仕方が無い。でも、本当にそうなのかな?アスカとシンジの人生はまだ終わっていない。やっと本当の始まりを迎えたと考えれば…続きを自分で考えてみよう。「もし、シンジとアスカがその後の世界で、二人だけで生きていくとしたら…」という発想から生まれた、終わりから始まった”終わらないアフターストーリー”、それが「その後のEVANGELION」なのです。

西暦2016年 新世紀0年
二人の 二人きりの 二人だけの物語

 「その後のEVA」の物語の舞台は、劇場版ラストのサードインパクトにより一組の男女を除くすべての人類が補完されていなくなってしまった世界です。西暦2016年、新世紀0年。アスカとシンジ。二人の、二人きりの、二人だけの、二人ぼっちの物語。無駄とは知りつつも人類探しの旅に出た二人。世界がこうなってしまったことに責任を感じているシンジを、振り回したりからかったり、不器用で素直じゃないやり方で励まそうとするアスカと、そんなアスカのすべてを受け入れて優しく微笑むシンジ…新世紀になっても”あいかわらず”な二人の旅は、やがてアスカの故郷ドイツを目指すことになる…ふたりはつづくよ、どこまでも…

 この旅の終着駅のドイツのネルフ本部にたどり着いた二人はちょっとだけオトナになりました。シンジはちょっとだけ逞しく、アスカはちょっとだけ素直に。いつでも付かず離れずいつも通りの日常を過ごす二人の姿は、恋人というよりすでに夫婦のような距離の近さがあって、それがまた恥ずかしくて何度も喧嘩もするけれど、何度でも唇を重ねて、何度でも肌を重ねて…囁くように語らう言葉に嘘はありません。”パジャマトークの魔術師”と呼ばれるしづきさんが描く枕語りは、ある意味でえっちぃよりも何倍も恥ずかしいかも知れません。それは全てを曝け出せる相手への偽らざる愛の言葉なのですから…

幸せの在り処(ありか)

 エヴァほど盛んに「if」が語られた物語は他にはありません。原作は誰の理解も望まず、すべてを壊すことで完結してしまいましたが、終わりがあるからこそ、今までの記憶は思い出になって、ひとりひとりのエヴァが始まったのです。物語には必ず終わりがあるけれど、日常には終わりはありません。ゆえに、この作品の最終巻のタイトルは「NEVER END OF EVANGELION」なのです。

 ここで、私のお気に入りのアスカの台詞をご紹介しましょう。「後悔はしてないわ。私は私の意志でこの世界を選んだんだから。神様に選ばれたつもりもないし、神様に取り残されたわけでもない。私がここにいたいと思ったからここにいるの。生きていれば幸せになるチャンスはいくらでもあるんだから…」と…ヒトは生きていこうとするところに、その存在があります。幸せの定義は難しいけれど、幸せとは具体的なものではなく抽象的なもので、「待つ」ものではなく「そうあろうとする」ものなのだと思います。意志を持って生きる命の奇跡。それがヒトの幸せというものなのかも知れませんね。語りあい、見つめあい、許しあい、繋ぎあい、築きあい、信じあい、求めあい、触れあい、想いあい、そして…あい。この作品との出逢えたことで同人の愛を知る事ができたことに、改めて深く感謝したい私のバイブルです!