風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!
DC販売/開発 : セガ / チュンソフト   2002/2/7発売
 冒険・和風  ダンジョンRPG  78時間 
音楽:すぎやまこういち

風来のシレン外伝とは?

 『1000回遊べるRPG』という肩書きを持つ「不思議のダンジョンシリーズ」のDC最新作、それが「風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参」です。ニンテンドウ64の「風来のシレン2 鬼襲来シレン城」に登場していた「女剣士アスカ」を主役に抜擢して、シレンと同じ純和風の世界観に様々な新システムを搭載。あまりにもトコトンじっくり作りすぎて、生産中止が決まって1年も経ったハードでの発売となってしまいましたが、それは、チュンソフトにとっては別に今に始まったことではないので、シレン信者(シレンジャー)なら気になりませんん。むしろ、それだけ時間をかけて完璧なバランス調整がされているという期待感になるのですから。今では、ハードの終わり間際に最後の一花を咲かせる恒例行事となってしまいました。名作と呼ばれ続けて、エスカレートし続けるユーザーの期待を、毎回大きく上回る新鮮な驚きを提供し続けてきたこのシリーズ最新作の出来はいかに?

知力・体力・時の運+α

 豊富な特殊エクストラダンジョン、組み合わせ無限大のアイテム合成、モンスター型ロボットを改造できる「エレキ箱」などなど…「アスカ見参」はシリーズ過去最高の難易度とボリュームとなっていて、かなり上級者向けのバランス調整になっています。ダンジョンが自動生成され、毎回レベルが1に戻るこのシリーズには、明確な終わりというものがありません。物語上のエンディングは一応ありますが、本番はむしろ、そこから先にあります。まだ見ぬアイテムを求めて、未だかつてない強敵と闘うスリルを求めて、自分の限界を計るために、今日も明日も明後日もやの明後日も…さらなる深い階層に足を踏み入れていくのです。そこに快感を憶えた時、もうあなたはこのシリーズの魔力から一生足を洗うことはできないでしょう。

 不思議のダンジョンシリーズは、「マゾ」のためのゲームです。どんなに鍛え上げた装備を持っていても、一瞬の判断ミスによって全てを失ってしまうかもしれません。何が起きたのか、にわかに理解できず、呆然と立ち尽くし、しばらくして失ったモノの大きさを歎き、やがて自分のミスを悔やみ、不貞寝して枕を濡らすことに…でも、翌日には何事もなかったようにまたゲームに戻ってきてしまいます。究極の目標に到達するためには、「知力・体力・時の運」、このすべてを兼ね揃えてもまだ足りない。1000回に1回も起こらないかもしれない特殊な危機すら切り抜ける広くて深い知恵と、いかなるピンチにも冷静に対応できる強靭な精神力、そして確率を超越した強運… このゲームには、「絶対」とか「安心」などという甘ったるい言葉は存在しません。最近の軟弱なゲームにお嘆きの諸兄に、是非オススメしたい逸品です!

ネットワークの新しい可能性

 今作最大の目玉システムは、Dreamcastの通信機能を生かした「風来救助隊」システムです。これまで不思議のダンジョンシリーズの鉄則だった、『死亡→すべての所持アイテムを失ってやり直し不可』を救済するこのシステムは、死んだ時に「ネットでSOS」を選択すると、自動的にチュンソフトのホストサーバーに接続して、救助依頼がアップされます。救助隊資格を持ったユーザーは、ホストサーバーにアップされている救助要請リストの中から救助要請をクエスト感覚で請け負い、救助に成功すれば、ネット内通貨の報酬がもらえてレアアイテムと交換できる…という仕組みです。 ※(サービス開始当初は、救助要請に対して救助隊過多状態だったので、あっという間に救助してもらえましたが、救助する側にとっては救助というよりタイムアタックと化していました。ユーザー数が減少していく数ヶ月先にも現状のような迅速な救助体制を維持できるかどうかが、このシステムの課題といえそうです)

 ユーザー同士の相互補助によって機能しているこのシステムは、ネットワーク機能をネット対戦や全国ランキングにばかり使っていた従来の手法よりも、遥かに魅力的だと思います。例え姿カタチは見えなくても、チャットのようなオンラインコミュニケーションはできなくても、オフラインで同じゲームに夢中になっている同志がいるという現実をリアルに共有することできます。言葉すら必要ないコミュニケーション…それは、とても素晴らしい発明なのではないでしょうか? 『面白さ百発百中』という、チュンソフトのキャッチフレーズに嘘偽りなし!1000回遊んでもまだ足りないかもしれません。普通、レビューを書き上げた後もそのゲームを続けることはほとんどないのですが、このシリーズだけは例外です。チュンソフトさん、一生ついて行きますヨ!

Fist written : 2002/02/25
Last update : 2003/10/23