サクラ大戦物語 ミステリアス巴里
PS2製作 : セガ / セガワウ / RED   2004年3月18日発売
 推理・ドラマ  アドベンチャー  20時間 
 プロデューサー:広井王子   キャラデザ:藤島康介

「サクラ大戦物語 ミステリアス巴里」とは?

 「サクラ大戦物語 ミステリアス巴里」とは、不動の人気を誇る人気恋愛アドベンチャーゲームの名作「サクラ大戦」を、推理アドベンチャーゲームに特化させた外伝的な位置づけの作品です。物語の舞台は、「サクラ大戦3」の舞台となった花の都巴里。あの激戦から半年…ようやく平和を取り戻した巴里の街に、新たな陰謀の影が迫る! しかも、今度の危機には、巴里華撃団は出撃不可能なのです!

 物語の主役は、私立探偵の「明智小次郎」です。単身巴里に渡ってシャノワールで働いている妹:「明智ミキ」が前座に昇格した晴れの初舞台を見るために巴里にやってきた彼は、ミキの同僚「エルザ」の失踪事件を追っているうちに、連続殺人事件に巻き込まれて殺人容疑をかけられてしまう。果たして、彼は真犯人を突き止めて無実を証明し、「パピヨン」という謎のキーワードの先に見え隠れする組織の陰謀を阻止できるのか?

戦闘構造との分離がもたらしたテンポの欠落

 今作は、光武による戦闘シミュレーションパートが存在しない、純然としたアドベンチャーゲームという構成になっているのですが、やはり、どうしても気になってしまったのが、進行上の「もっさり」としたテンポ悪さです。章単位の区切りが曖昧で達成感が感じにくいし、小次郎とミキのパートがコロコロ入れ替わるのも、謎が見えているのに話がなかなか進まなくてストレスを感じてしまうという、ザッピングの悪い面が出てしまっている場面が多々見られました。

 また、アドベンチャーゲームの基本格子である「フラグ」の取り扱いにも問題があります。自由移動ではフラグを順序良く立てないと何も進まない構成なので全く自由ではないし、しかもほぼすべてノーヒントというのはいただけない。必然的に総当りなってしまうので、「捜査している」というより「おつかいさせられている」と感じてしまいます。場所移動による時間経過と時間制限の概念がないのが唯一の救いですが…多用されるLIPSについても、中途半端にサクラシステムをアドベンチャーの枠にはめようとして、肝心のテンポの良さをスポイルしてしまっているような気がします。都市防衛構想・蒸気に代わる原子力エネルギー・ドイツのスパイの暗躍…などなど、「サクラ大戦5」につながるであろう世界設定と謎の断片を垣間見ることもできるだけに、ゲームシステムのトータルデザインを煮詰め切れていないことが残念でなりません。

恋愛構造との分離がもたらした「無目的化」

 私は歴代の花組メンバーの中でも特に、巴里花組の面々が大好きだったので、エリカの天然っぷりと暴走っぷりや「おはようボンジュール」などを再び見ることても嬉しかったし、随所にファンをニヤリとさせる演出が施されており、ファン心理では常にニヤニヤしながら楽しめました。おなじみの巴里花組の5人に加えて、新キャラの「明智ミキ」「エルザ」、敵役の「ベルナデッド」、さらにサブキャラだったメルとシーとのエンディングも用意されているなど、量的な部分ではとても満足しています。しかし、残念ながら、この作品には決定的な矛盾が存在しているのです。

 それは、巴里花組のメンバーにとっては、「大神一郎」という絶対的な想いを寄せる存在があるため、いくら遊び手側が熱くなろうとも、今回の主人公の明智小次郎とロマンスが成立することはないし、それはあってはらないことなのです。それは十分に理解していても、「キャラを攻略すること=目当てのあの子とハッピーエンドを迎えること」を目的として除外してしまうと、ゲームを進行させていく上での気力が湧いて来なくなってしまうのです。キャラクターへの思い入れがその全てと言っても過言ではないこの手のゲームでは、これは致命的な構造的な欠陥と言えるでしょう。

 私は常々、「サクラ大戦はギャルゲーじゃない」という持論を唱えてきましたが、どうやらその持論を改める必要がありそうですね。ベタでお約束なお話だけど、豪華絢爛な作り込みによる力押しがサクラ大戦の魅力であり、ギャルゲーと定義してファンを限定してしまうには惜しい作品なのですが、その濃いすぎる味付けを受け止めるには、根底にキャラへの愛着という下地がなければならないのです。だからこそ、マルチな商品展開のためだけに作ったような半端なゲームで満足するほど、濃い味付けに慣れたサクラファンは甘くない!ファンを舐めるな!と声を大にして言いたいものです。

First written : 2004/04/27