THE END OF PEPPY ANGEL
新約文書S
同人誌サークル : PEPPY ANGEL
 アナザーストーリー  エヴァンゲリオン  全19巻 
作者 : (作画)桜月りん&(原作)GRAN

「THE END OF PEPPY ANGEL」とは?
(C)1996-2004 桜月りん&GRAN

 私が初めて同人誌の存在を知ったのは2000年の夏のことでした。当時、まだ同人の世界の右も左も分からなくて、既に下火になりつつあった「エヴァ」を唯一の手がかりにして、私は初めて一般参加したコミケ会場で、1冊のエヴァ本と出会いました。それは偶然という二文字で片付けるにしてはあまりにも幸運で、運命と呼ぶような得体の知れないものでもなく…敢えて言葉を選ぶとしたら、それはファン同士のつながりが起こすべくして起こした、小さな「奇跡」だったのかも知れません。

 本家のエヴァは完結編となった劇場版で、何もかもを突き放して、キャラもファンも誰彼構わず傷つけて終わってしまいましたが、だからこそ、あの日を境にしてファンたちは求め始めたのです。自分達が本当に納得のできる「もうひとつの結末」の姿を…潮が引くようにエヴァブームは過ぎ去ってしまってからも、気骨のある同人作家さん達の手によって、いくつもの可能性が紡がれ、そしていくつもの世界と結末が生まれました。

 そして、その中でも一際眩い輝きを放ち続けたひとつの作品が、長い長い物語に幕を下ろす日が遂に訪れました。その名は「PEPPY ANGEL」。最後までシリーズ名を持つことなく、サークルの名と同じ名称で呼ばれ愛され続けた作品です。それはまさに、煩悩という名の愛で駆け抜けた8年半でした。本作品については、約3年前に正規レビューとして一度書かせていただきましたが、今回シリーズ完結記念ということで作品に最大の敬意を表して、初めて同一作品の再レビューを行うことにいたします。

父にありがとう、母にさようなら…
そして、僕達が帰る場所、本当に望むもの…

 まだこの作品を知らないという方のために、簡単にシリーズの概要を簡単にご紹介しておきましょう。この物語では、エヴァ特有の謎の部分にはあまり触れず、あくまでもキャラクターたちの心の成長に主眼を置いています。 その中心となるのは、シンジ、アスカ、レイこの3人です。孤独な魂は寄る辺を求めているのに、傷つくことを恐れて他者を拒絶してしまう。たとえ幾度愛の言葉を語ろうとも、何度体を重ねようとも、決して心の奥底には届かない。偽りの言葉と刹那の欲望で、真の孤独が癒されることは決してない。その優しさを、この温もりを、ただ信じられたらどれほど楽になれるだろう…でも、心を相手に委ねれようとすれば、醜悪な自分の内面を曝け出してしまう…ゆえに、シンジとアスカは互いを激しく求め、そして激しく拒絶し続けてしまうのです。

 やがて、二人は人類補完計画の果てに、互いの心の壁(ATフィールド)を飛び越えることを決意する。それは心が砕け散るほどの痛みを伴うものである。しかし、それでもなお、二人は選択しようとしている。弱かった過去の自分にさよならを告げるために。大切な人と共に、明日を歩き始めるために…原作が描ききれなかった、真の心の成長の領域にまで踏み込んだ、もうひとつの結末。「新約死海文書」とも言うべき作品、それが「PEPPY ANGEL」なのです。

 私はかつてのレビューで、この物語はエヴァンゲリオンの「if」であって「if」ではない…そう書きました。そして、「もうひとつの結末」とも書きましたが、それは本編のエヴァとまったく違う結末になる、という意味では書いていたわけではありません。そしてその予見通り、この完結編での人類補完計画という着地点は、原作とほぼ同一のものとなっていますが、そこに至るまでの「前提」が異なることで、その結末の先に続いていく「未来」はまったく次元の異なるものへと昇華されていたのです。シンジとアスカの二人は、とことん苦しみ抜いた果てに高く険しい壁を乗り越えて、読者の誰もが望んでいた選択をしてくれました。父にありがとう、母にさようなら… そして、僕達が帰る場所、本当に望むものとは…これ以上は、レビュアーとして私の口からは語ることは出来ません。この長大なる物語が紡いだ魂の言葉(ロゴス)を、ぜひあなた自身の目で心で確かめて下さい!

煩悩という名の愛で駆け抜けた8年半の歴史

 このレビューを書くにあたっては、仕事で夏コミに行けない私の代わりに本を買ってくれた友人の助けもあり、夏コミ直後に本が届いて真っ先に完結編を読んで、もっと早い段階でレビューを公開したかったのですが…完結編を読み進めて行くほどに、あまりにもたくさんの想いが込み上げてきて、何度も手が止まってしまいました。1冊の同人誌を読むのにこれほど時間が長く感じたことはありませんでした。何度も読み返しながらなんとか読み終えたものの、レビュアーとして冷静に語る言葉が見つけられなくて…ずいぶん時間が過ぎてしまいました。今でも、レビューを書きながらまた思い出して泣きそうになってみたり…

 その後、674ページもの異例の特厚本となった総集編を含めて、何度も本編を通して読み直しました。最終原稿の執筆経過を伝える桜月さんのWeb日記をハラハラしながら見守っていました。作者にとっても、読者にとっても、長年苦楽を共にしたキャラクターたちは、自分たちにとって子供同然となっていたのです。確かに終わってしまうのは本当に淋しい。でも、「よかったね」の嬉しい涙でお別れが言いたいから…作者のお二人のその葛藤に、ファンのひとりとして、改めて煩悩という名の愛で駆け抜けた歴史の重みを強く感じました。だからこそ、この物語はその長き旅路の果てに、多くのファンの心に最高の形での完結を与えることができたのだと思います。

 最後に、8年半もの長い間、本当にお疲れ様でした。 そして、最高の作品と結末をありがとうございました!


 物語は続いていく。
 私達が覚えていく限り、どこまでも、いつまでも…

※画像使用許諾:2004/09/19
First written : 2004/09/19
Last update : 2004/12/25