実況パワフルプロ野球11
PS2
GC
販売/開発:コナミダイヤモンドヘッド
 野球・育成  スポーツアクション  68時間 
公式HP:パワプロ通信

「パワプロ11」とは?

 「パワプロ11」とは、野球ゲーム売上No.1に座に君臨し続けている、説明不要の人気シリーズの最新作です。今年のプロ野球はまさに激動の1年でした。近鉄とオリックスの合併問題から急浮上した、オーナー主導の1リーグ制への流れ。これに反対して史上初の選手会のストライキが決行されるという非常事態…野球というスポーツと文化の在り方が真剣に広く問われて、半世紀ぶりに新球団が誕生して新風を巻き起こした一方で、野球ゲーム界はというと、停滞感は否めませんでした。売上でもクオリティでも独走し続けてきたパワプロですが、いくら1本で頑張っても比較対照が自分自身にしかないという状態では、大きな変化は望むべくもありません。さて、そんな状況でNo.1プロ野球ゲームが取った道とは?

※前作までは、処理速度と操作性の面で断然ゲームキューブ版をオススメしていましたが、今作のPS2版にはHDDインストールに対応していて処理速度でのアドバンテージがあるので、一概にどちらが優れているとは言えません。内容面ではまったく変わらないので、自分が持っている方のゲーム機を選ぶか、周囲に対戦相手がいるなら機種統一を図るとか、よく考えて選ぶことをオススメします。

もっと手軽に、もっと楽しく!新世代サクセスモード

 パワプロ11の基調路線は従来通りです。選手のモーションを大幅に追加して、より野球らしい細かい動きを再現して、ただ観ているだけでも鑑賞に堪えうるレベルに仕上がっています。そして、このシリーズの魅力の9割を占めるとも言われるサクセスモードについても、「もっと手軽に、もっと楽しく!」のコンセプトをさらに押し進めると同時に、猪狩守・早坂あおいなどのシリーズ歴代の名物キャラクターから新世代へとバトンを渡すという意味合いもあります。変化としては小さくて過渡期の作品であるとも言えますが…現時点でのベストを作り続けてるパワプロの設計思想に基づくクオリティは、やはり今回も健在です。

 まず、サクセスモードで選手を作成するまでの時間が大幅に短縮されました。月3回行動と試合数の絞込みなどのバランス調整によって、フル育成でも90分以内で済んでしまいます。また、継承選手の作成による「メモリカードを肥やす」という定石は今回も健在ですが、よりわかりやすく「入部選手リスト」に載っている中から継承選手が選ばれるようになっているので、より戦略的な育成ができるようになっています。選択大学は3つ(+全日本)で少なめだが、パワフル大学に弱小・普通・強豪の3段階があり、帝王大学にも真・帝王大学編が用意されていてバリエーションは豊富。されど、個々にメリットやデメリットなどのメリハリが弱く、結局はプレイヤーのテク次第になってしまうわけですが…また、サクセス後のおたのしみであもるオートペナントもバランスが見直され、実在選手でも50本台の本塁打数を出せるようになりましたが、自作チームでオートペネントを回そうにも、設定した選手起用方針をCPUの監督が守ってくれないバカさ加減は相変わらずです。総合すると…延長線にあるから普通に楽しいけど、それ以上でもそれ以下でもない、そんな印象ですね。

サクセスモード引退宣言?

 攻略本の記事だけではなく独自の育成理論を構築して、百にひとつ千にひとつの確率イベントの網を何度も潜り抜け、アクシデントに一喜一憂した末に理想の選手を作り上げていく…それこそがパワプロの魅力であることは、長年サクセスモードを遊び続けてきた者として身に染みて分かっているし、水や空気のようにごく当たり前のものだと思っていたのですが…これはいたって個人的なことですが、本業が忙しくてゲームを遊ぶ時間が激減していく日々が続いているのですが、その中でサクセスという極めの道を往くのは、正直かなりしんどかったですね…

 確かに、サクセスモードの改良によって1回のプレー時間は大幅に短縮されました。しかし、それは逆に、TRYとOUTの繰り返しが激しくなっただけで、むしろ精神的な負担は増してしまったし、私のように「最強選手よりも能力に特徴をつけることで思い入れのあるキャラクターをつくりたい」というスタイルでサクセスモードに臨んできた者にとっては、偶然と確率の産物でしか得られない能力があまりにも多過ぎて、茨の道は更に険しくなってしまいました。回数でしか補えない確率なんて無意味だと思う。運任せのその先にある高みに向かって自らの限界に挑戦していくのが、パワプロの本概なのではないでしょうか?それが出来ないゲーマーは去れ!というのでは、野球ゲームに未来はない。サクセスモードは正念場を迎えているのかもしれない。ファンはまだ飽きてはいないが、続ける理由を見失いかけているのです。このサクセス新世代への過渡期の先にあるものが、単なるキャラクターの入れ替えに終わらないことを、シリーズのファンとして切に願います。

First written : 2002/11/06
Last update : 2004/12/25


※恒例の作成選手データは、GM研通信vol.3にて書き下ろし収録いたします。