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GM研
なのはまんが大王
同人誌サークル:みはるワークス
 ジャンル:あずまんが大王/魔法少女リリカルなのは 
作者:OOE、GAN、KIKI

「なのはまんが大王」とは?

 大ヒット作となった「魔法少女リリカルなのは」の原点ともいえる作品「とらハ(とらいあんぐるハート)」の時代から、あずまんが大王のネタとのコラボレーション4コマ漫画を出し続けてきた、サークル「みはるワークスさん」が、なのは時代になっても決して変わることのない、作品とキャラクターへの愛で描き続けた作品があります。これまでのイベントで発行してきたコピー本【出張版】の再録と描き下ろしを加えた、待望にして新旧いずれのファンからも大好評を博したオフセット版、それが「なのはまんが大王」なのです。

 かくいう私も「なのは」が「とらハ」のスピンアウト作品だという事を知らずに「A's」からファンになった世代でしたが、原点への興味を持つきっかけになったのは、この作品を読んだことでした。良いネタとの出会いは、時として新しいジャンルを知る最高のきっかけになるのかも知れませんね。

ここには"萌え"も"燃え"も無い。 あるのは力の抜けた笑いだけ!

 とらハまんが大王2巻のセルフキャッチコピーにあった「ここには"萌え"も"燃え"も無い。あるのは力の抜けた笑いだけ!」という表現のとおり、この作品では相互の原作の誰を誰に当てはめるとか、設定がどうのこうのとか、難しいことを考える必要はまったくありません。ヴィータの役ドコロはちよちゃんのようでもあり、ともちゃんのようでもあるけど、ヴィータはヴィータであることに何ら変わりはありません。むしろネタの方が後から付いてくるような自然さで、結果として「あずまんが大王」と同じ種類の笑いの雰囲気を醸し出せているのですから。

 個人的に一番お気に入りなのは、「フェイトがまだサンタを信じていたらどうするんだ?と、リーゼとロッテが夢を壊さないように、サンタの設定をめぐって口論(漫談?)になる」という下りです。本来はボケとツッコミの役回りが分かれている二人が、勢いと物の弾みで繰り広げる掛け合いは新鮮でした。「プレゼント代は?一晩で世界中を回れるのか?」という問いに逆ギレして、「サンタはロストロギアを使ってるのよ!」、「なにィ犯罪者なのか!?」…というように、いつの間にかフェイトを置き去りにしてるオチの味わいは、紛れも無く「あずまんが」の空気感でした。

愛ってなんだ?躊躇わない事さー

 天然万能素材「あずまんが大王」のネタを他の作品に当てはめる手法は、同人ではそれほど珍しいものではなく、何を書いてもネタもキャラも合うし、笑いの質も安定しますが、だからこそネタが被りやすくて飛び抜けた個性が発揮しづらいジャンルであるとも言えます。しかし、この作品ではネタのベースで2つの原作の魅力が上手くミックスされているのはもちろんですが、たとえネタが被っていたとしても読感は一味違うものになっています。それは、技術論ではなく、それぞれの原作への愛の成せる業であり、その愛を躊躇わず、ストレートに読者に伝えているからなのだと思います。

 その象徴的なひとコマが、ゆかり先生役(月村忍)の「新設定と新キャラ追加で人気を維持するのは難しいぞーこの中の何人かは悔いの残る第二期になるだろー」と言っていた忍さん自体が出番なしで自爆、という下りです。脇役あってのメインだし、出番がないことすらネタにできるからこそ、コミックス版で1コマだけの再登場であっても素直に喜べる。長く愛されてきたシリーズだからこそ自然に身についたお笑いの素地は、「とらハ」からのファンの方はもちろん、「なのは」で都築ワールドの魅力に初めて触れた方にも、是非この幸せな笑いのコラボに触れてみて欲しいと思える逸品です!