魔法少女リリカルなのはA's
アニメ原作:都築真紀/ivory
 ファンタジー  勇気と想いの魔法少女物語  全13話 
キャスト:田村ゆかり、水樹奈々、ほか

「魔法少女リリカルなのはA's」とは?

 わりと最近まではごくごく平凡な小学三年生だった私「高町なのは」は、春先に起こったとある事件がきっかけで、魔法使いになってしまいました。私に魔法といくつもの出会いや勇気をくれたあの時のみんなとは、今は少しだけ離れ離れ。何度も本気でぶつかりあって絆を結んだ優しい目をした女の子:フェイトとは、前回のジュエルシード事件の重要参考人として時空管理局の裁判中のため、ビデオメールの文通を続けていた。あの日、互いに交換した黒とピンクのリボンを大切に身に着けて…

 そんなある日の夜、なのは突然赤い少女、鉄槌の騎士:ヴィータの襲撃を受ける。ベルカ式カートリッジデバイスの圧倒的なパワーの前にレイジングハートは破損し敗北を喫したなのはは、時空管理局の嘱託魔導師となったフェイトに窮地を救われる。だが、守護騎士ヴォルゲンリッターが将、剣の騎士:シグナムとの一戦で、フェイトのバルディッシュも破損してしまった。クロノ執務官とリンディ提督の過去から続く因縁を持つ、第一級捜索指定遺失物:ロストロギア「闇の書」を巡って、再び始まる新たなる想いと絆と戦いの物語、それが「魔法少女リリカルなのはA's」なのです。

時を越えて刻まれた悲しみの記憶…
この手の魔法は悲しみと涙を打ち抜く力

 続編で新たなる強大な敵、新たなる強大な力、という構図は熱血バトルアニメのお約束であり、なのはA'sもその例外ではありませんが、それが持つ意味合いはまったく異なります。新たなる敵である守護騎士たちには、悪人どころか主役を喰ってしまうほどの存在感があります。闇の書の守護騎士プログラムとして、無限の再生と転生を続けてきた彼女達が、永き旅路の果てに初めて巡り逢った奇跡の色。温かい優しさに満ちた日々を与えてくれた、心優しき闇の書の主:八神はやて。主の身体を蝕む闇の書の呪いから救うために、闇の書の完成を望まない主の命に背き、騎士の誇りを捨て誓いを破り、密かに闇の書のページ蒐集を続けていた。そこには正義も悪もない。言葉より、正しさより、強い願いを持つ人がいる。嘘も迷いも何もない。心を決めたまっすぐな瞳… シグナムがフェイトと剣を交える前に涙ながらに語った「こんな形の出会いをしていなければ、私とお前は一体どれほどの友になれただろうか…我ら守護騎士、主の笑顔ためなら騎士の誇りも捨てると決めた。もう止まれんのだ!」という言葉に込められた想いの強さに、思わずぐっと来てしまいました。

 もちろん、主役のなのはとフェイトの存在感も際立っています。魔力の大出力任せだったなのはの戦い方は、絶え間ない訓練と強敵との激闘の中で洗練されて行ったし、時を越えて刻まれた悲しみの記憶を真っ直ぐに受け止めて乗り越えたフェイトの心の強さ。「杖萌えアニメ」というマニアックな見方でも称されるように、レイジングハートとバルディッシュが、危険を顧みずベルカ式カートリッジシステムの搭載を自ら志願して、命と心を賭けて信頼する主人(マスター)を守れる力を欲したこともポイント高し。「この手の魔法は悲しみと涙を打ち抜く力」というフレーズにもあるように、大切なモノを守るために強い心であることを誓うこのアニメは、続編であることの必然性を持った数少ない成功例だと言えるでしょう。

旅立ちのさよならは終わりじゃなくて、始まりの言葉。
祝福の風、願いは離れ得ぬ絆へ…

 前作でもさりげない効果を発揮していた、なのは独特のオープニング前のあらすじでの反復フレーズの演出効果は、今回も健在です。願いだけじゃ想いだけじゃ奇跡は起きないけど、「それは小さな願いでした」→「それは小さな想いでした」→「それは小さな奇跡でした」というフレーズ変化にも見られるように、たとえその一つ一つは小さくても、心からの願いは強い想いに、強い想いは揺ぎ無い誓いに、揺ぎ無い誓いは奇跡を起こす。悲しい運命を変えられるのは自分自身しかいない。大切なのは戦うことを諦めないこと。本当に大切なものを見失わないこと。ずっと願っていた温かく優しさに満ち溢れた夢の世界から、自分の力だけで戻ることを決意したフェイトの背中を押してくれた、消えゆくアリシアの「待ってるんでしょ。優しくて強い子たちが」という言葉に、泣いてしまいそうになりました…

 夜天の魔導書の管制プログラムとして、永く暗い旅路の果てに初めてもらった愛しく優しい温もりと、美しい名前。強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール:リインフォース。闇の書の悲劇を二度と繰り返さずないために選んだ、自己消滅という悲しくも唯一の手段…そして、いつか訪れる未来で出会うための約束…それは、主従の絆を越えた、離れ得ぬ魂の絆。旅立ちのさよならは終わりじゃなくて、始まりの言葉。願いと想いが導いた物語の完結に相応しい美しい心のラストシーンを、是非自分の目で確かめて下さい。

 さて、気になる第3期ですが、これは「絶対にない」と言える終わり方でした。個人的には色々と予想していたものはありましたが、まさかこう来るとは…惜しいなぁと思う反面、とてもなのはらしい潔い終わり方だとも思います。せっかく火が点いた人気作を業界的に放っておいてくれないかも知れませんけど。6年後(15歳)のなのはたちに至るまでのエピソードは、現在急増中のなのはサークルさんたちの同人誌で補完してくれることでしょう(期待を込めた願望)

First written : 2006/02/05