みずいろ
DC製作:NECインターチャネル   2002/3/7発売
 恋愛・ドラマ  恋愛アドベンチャー  32時間 
原作:ねこねこソフト

「みずいろ」とは?

 パソコン18禁ゲーム市場で「White」「銀色」を続けてヒットさせて、「ねこねこ信者」と呼ばれる独特なファン層を持つブランドに成長した「ねこねこソフト」の第3弾にして、初の家庭用移植作品、それが「みずいろ」です。PCエロゲーという淘汰の激しい市場を勝ち抜いてきた中堅ブランドが、敢えて「普通さと日常性(あくまでエロゲー基準比ですが)」を前面に打ち出したこの作品は、ねこねこソフトの名を広く一般に知らしめる出世作となりました。

 今回の家庭用移植においても「過剰サービスのねこねこソフト」の異名は健在であり、新キャラ・新シナリオの追加はもちろん、おまけの不条理ギャグサウンドノベル「探偵 片瀬健三郎」や、ソフトと公式ガイドブックに連動した応募者全員サービスCDなどなど、声を付け足すだけの手抜き移植がのさばるこの業界にあって、「みずいろ」のような例は稀有な存在と言えるでしょう。

独特の文法と強烈な存在感

 この作品の最大の特徴は、独特の文法と強烈な存在感を示すキャラクターにあります。「しょんぼり」とか「どきどきどき」とか「ぐっすん」とかとか…擬態語を声に出して表現してみたり、「ポンコツさん」とか「マイ妹」とか「目覚まし機能付き幼馴染」などなど、萌えゲーム市場の最前線で磨かれた独特のセンスが軽快&痛快で笑いっぱなしです。

 システム面でみてみると、過去パートの選択肢によって、現在パートでのヒロインが確定するオムニバス方式なので、ルートによってキャラクターの設定すらもまるっきり変わってしまいます。しかし、ギャルゲーのシナリオは普通、シナリオごとに担当者が違うのだから、シナリオ間の整合性を取るよりも、まったく別物と割り切って設定にバリエーションを持たせる効果を狙うのは面白い手法だと思います。でも、その分、核となるべき設定が弱くなってしまい魅力が分散してしまうというデメリットもありますが…

離れえぬよう、流されぬよう、ぎゅっと…

 主題歌のサビでもあり、作中にもさりげなく効果的に使われていて、作品全体のテーマにもなっているのが、「離れえぬよう、流されぬよう、ぎゅっと…」という言葉です。互いの気持ちが離れてしまわないように、平凡な日常に思い出が流されないように、繋いだその手をぎゅっと握り締める…今の穏やかな日常が変わらずいつまでも続いていくことを願いながら、それを言い訳にして、いつまでも過去に縛られて変われない自分・一歩踏み出す勇気が持てない自分がいる。淡く揺れる白の掛かった青(みずいろ)の季節… それが「みずいろ」です。

 日常会話部分が長すぎて中だるみするとか、選択肢の意味が希薄でゲーム性に欠けるとか、終盤の展開が読めてしまうとか、粗探しを始めたらキリがありませんが、強い刺激や濃い味付けばかりが目立つこのジャンルにおいて、「みずいろ」には一服の清涼剤のような存在意義があるのかも知れません。ある程度はギャルゲー文法のお約束や特殊属性の知識が必要なので、決して万人受けする作品ではありませんが、ギャルゲーに疲れてしまった方や、刺激に慣れてしまった方に、是非オススメしたい逸品です。

First written : 2002/03/24
Last update : 2003/11/03


みずいろ ヒロイン選評

順位名前脚本人物コメント
1位早坂 日和旧:B
新:A
AAA主人公の幼馴染み。ねこねこソフトの代名詞「ポンコツさん」の存在感は強烈!強烈すぎて、他のヒロインが霞んでしまうほどです。のほほ〜んとした日和語の感染力は強力で、私も終始顔が緩みっぱなしでした。旧・日和シナリオは、「普通」という作品の基本コンセプトから外れた飛び道具だったので、泣けた割に高く評価するわけに行かなかったが、DC版で追加された「新・日和シナリオ」では、ちゃんと「普通」路線でも最強ヒロインの実力を如何なく発揮できた。アフターストーリー「みずいろ」も必見!
2位片瀬 雪希AAAAずぼらな主人公には勿体無さ過ぎるくらい良く出来た義理の妹。こんな妹に何百回となく「お兄ちゃん」と呼ばれ続けていると、なにやら妙な気分になってきてしまいます…ハッ、いかんいかん!私は萌えをゲームに持ち込まない主義なのに、なのに…(敗北) 雪希ルートは、正確には「雪希&日和」シナリオと呼んだ方がいいかも知れませんが、最も「みずいろ」らしいシナリオであり、絶品であり、号泣ものです。
3位小野崎 清香主人公の喧嘩仲間。巨大なリボンと無い胸が特徴(主人公談)。巨大リボンのことを主人公が形容する言葉のバリエーションがやたらと多くて面白い。ただ、言葉の掛け合いが多いためシナリオの消化にやたらと時間がかかってしまうし、意地の張り合いで遅々として進まなくて見えてこない展開と、砂絵という特殊な素材について説明が少なかったのが残念(清香ママは密かにお気に入りなんだけど…)。
3位進藤 むつき主人公の後輩で雪希のクラスメイト。ルートによって「やかま進藤」と「おとな進藤」という正反対の性格設定になるので戸惑うかも。個人的には元気な進藤さんの方が好みな私としては、進藤ルートの「おとな進藤」のモジモジぶりにイライラしてしまいました。嫌いなシナリオじゃないけど、かなり早い段階で展開が読めてしまうし、それに気付いてやれない主人公に更にイライラ。物語主観と主人公主観のスタンスのズレが生じてしまう。
5位石川 冬佳DC版の新キャラで、家庭教師の女子大学生!…という狙いまくりのキャラ設定ですが、超論理的に主人公を論破する鉄壁の教師ぶりには、主人公と同様に混乱に陥れられました。このシナリオの主役は、むしろ人が変わったように真面目人間に変身していく主人公の方かも。「あぁ御姉様!」属性のマゾの方専用?
5位神津 麻美ぽややんとした人見知りな先輩。スローモーすぎる喋り方とか、過去パートが存在しないとか、終盤の展開の動機付けが弱いとか…決定的にダメなところは何もないのだが、飛び抜けて良いと思える部分もない。おっとり年上属性の方でないと、ちと辛いかも。