MISSING PARTS the TANTEI stories
ミッシングパーツ ザ・探偵ストーリーズ
DC製作:FOG   2002/1/17発売
 推理・ドラマ  恋愛アドベンチャー  18時間 
開発:オーツー/システムプリズマ

MISSING PARTS とは?
(C)2002 FOG/O-TWO/SYSTEM PRISMA

 FOGとは、「久遠の絆」を代表作とするゲームメーカーであり、知名度は低いけど陰陽道や旅行記を純和風テイストで丁寧に仕上げて、ゲームマニアを唸らせる良質な作品を世に送り出してきました。そんなFOGの最新作「MISSING PARTS the TANTEI stories(通称:ミパたん)」は、従来のFOG路線とは違って、都会的に洗練されたスタイルで描かれた本格推理アドベンチャーゲームです。しかし、発売前の印象はあまり良くありませんでした。システムはコマンド総当り式のクラシカルスタイルだし、今時のアドベンチャーゲームと違って、主題歌もなければキャラボイスも入っていません。短編2話で5,800円という価格設定である上に、すでに生産を中止してから1年が経過したDreamcastでの発売(しかもシリーズもの)は如何なものか?…と思わないでもありませんでしたが、そんな不安はすべて杞憂でした。

旧くて新しいアドベンチャーゲーム

 「ミパたん」は推理モノのゲームとしては、「トリックや謎を解き明かす」というよりも、「推理ドラマを観て楽しむ」というタイプですが、その塩梅が実にちょうどいい。「推理小説」というよりは「サスペンス劇場」に近いかもしれません。犯人もトリックも想像するのは難しくないけど、犯行に至るまでの動機をドラマチックに魅せてくれます。軽妙な笑いあり、連続殺人事件のスリルあり、ほのかなロマンスあり、そして涙あり… 今回収録された全2話を終えた頃には、本気でこのシリーズ(全6話)の継続に期待したくなってきました。

 伏線の複雑さでは、第二話「赤いカメオ」の方が上だけど、緊迫感は第一話「鳴らないオルゴール」の方が上のように感じました。その辺は好みの問題でしょう。どっちも推理モノとしては、水準以上の出来栄えであることは間違いありません。第一話が火曜サスペンス劇場だったとすれば、第二話は正統派の推理モノです。犯人像が浮かび上がってこないのに、次々と状況証拠だけが出てきて、捜査は更に混乱してしまいます(だからこそ、推理の断片(パーツ)がつながって謎を解けたときの快感も大きくなります)。肝心な部分の推理は探偵(見習い)の真神恭介がやってくれるので、推理音痴の方でも問題なく楽しめることでしょう。このゲームはあくまで「推理の雰囲気」を楽しむものなので、このくらいの難易度がちょうどいいのでしょうね。

 推理も確かに良く出来ていますが、このゲームの最大の魅力は、あまりにも面白すぎるキャラクターたちにあると思います。何気ない言葉のやりとりの端々に詰め込まれた、笑いの地雷がドッカンドッカン爆発しっぱなしなのです。森川刑事を新たに「下僕3号」に命じてさらにエスカレートする成美姐さん、昼行灯不良刑事ぶりを如何なく発揮する氷室刑事、どんな食材でも組み合わせで最終兵器ランチにしてしまう奈々子、いつもハイテンションな相方の哲平(下僕仲間)…などのレギュラーキャラは勿論のこと、エピソードごとのゲストキャラもいい味を出してます。第一話のゲストヒロイン「嘉納潤」ちゃんには「ときメモ3」のどのキャラよりも萌えてしまいました… キャラボイスもポリゴンモーションも無くてもキャラクターは成立するという、当たり前のことを再認識させられました。

マイナーなりの戦い方

少ない制作費でも良いゲームは作れる。「ミパたん」は、その見本のような作品だと思います。2D絵でもズーム機能やカメラ位置を変化させる工夫で動きを表現してみせて、キャラボイスは一切使用しないけど、その代わり、シナリオとキャラクター作りという、アドベンチャーゲームの根幹要素に全力を傾けることで、非常に高い完成度を実現しています。製造が中止になったハードなので、セールス的には大化けは望めないだろうけど、セガへのロイヤリティが限りなく無料状態になったDreamcastならばこそ、マイナーにはマイナーなりの戦い方ができるのです。

 問題は、全六話(つまり3本)構想をどのようなペースでリリースできるかどうかにかかっている。いかに熱心なFOG信者といっても、何年も待ってくれないだろうし(と言うより、Dreamcast本体を箱にしまってしまうだろう)、1話完結方式とはいえ、、あまり時間を空けてしまうと全体の本筋を忘れてしまいますからね。理想では半年間隔、悪くても1年半で完結させて欲しいものです。

※画像使用許諾:2002/04/12
First written : 2002/04/12
Last update : 2003/11/03

キャラクター選評

真神恭介
 鳴海探偵事務所の唯一の探偵。見習探偵という立場ながら、探偵事務所の看板を背負うハメになる。生来のお人好しが災いして、成り行きで成美のアンティークショップの雑用を兼務することに。変わり者と事件を呼び寄せるのも名探偵の条件?

鳴海京香
 「鳴海探偵事務所」所長の鳴海誠司の娘。行方不明の父になりかわり、開店休業状態の貧乏探偵事務所で所長「代理」を務めているが、探偵業に関してはまったくの素人である。頼まれると嫌と言えない性格と時代劇マニアは父親の影響?成美とはある事件以来犬猿の仲である。

月嶋成美
 アンティークショップ「セクンドゥム」の店主。働いているところはほとんど見られない謎の人。夜行性で明るいのが苦手(なぜ苦手なのかは今回は語られず)。黙っていれば妖艶な美女だが、酔うと暴れ出して手がつけられない。京香とはある事件以来犬猿の仲である。

嘉納潤
 第一話のゲストヒロインで、名門・木原家に兄とともに引き取られている盲目の少女。ピアノに非凡な才能を示す。家の中では肩身の狭い思いをしているが、黙って耐えている大人しい性格。先日死去した木原剛三氏の後継問題を巡る骨肉の争いに巻き込まれることとなるが…

春日野唯
 第二話のゲストヒロインで、オーディション番組で補欠合格したアイドル候補生。ひたむきに努力する姿や素直な性格が受けて人気急上昇中だが、候補生のひとりが謎の自殺を遂げたことで、奇妙な幽霊騒動に巻き込まれていくことになるが…

白石哲平
 成美の「目利きの師匠」である「柏木久蔵(通称:ご隠居)」の自称弟子(居候)にして、常にハイテンションで関西弁を操る。恭介の悪友その1かつ成美姐さんの下僕1号。どうやら相当な無茶をした過去があるようだが、今回は語られず。

鴨居奈々子
 恭介が常連客であるネットカフェ「サイバリア」のアルバイト女子高生にして、恭介の悪友その2。ヘンな新メニュー創作を作っては、常連客を実験台に使うため皆から恐怖されている。天然系でまったく悪意はないらしい。なぜクビにならないのか不思議。