ラブやん
漫画作者:田丸浩史
 オタク・ギャグ  史上最低の痛恨恋愛漫画  1〜7巻 
連載:月刊アフタヌーン

「ラブやん」とは?

 ロリ・オタ・プーの非モテ三拍子がそろった、大森カズフサ(25歳)。いかにもティピカルな現代的駄目三重苦の業を背負った男のもとへ、ラブ時空から凄腕の愛の天使(キューピッド)ラブやん見参!しかし!カズフサの片想いの相手は小学生(青木萌ちゃん11歳)だったのです!この恋を成就させるのは聖なる任務なのか?犯罪なのか!?いや、そもそもカズフサには脈なんてこれっぽっちもありゃしないのですが…キューピッド黒帯二段:恋愛成功率100パーセント(自称)を誇っていた愛の天使:ラブやんの前に、史上最低の試練が鼻を刺す、じゃない、そそりたつ、じゃない、立ちふさがる!

 単行本4巻帯のコピーの「全メディア黙殺!」にもあるように、倫理も理性も良心も、あらゆる意味でレッドゾーンギリギリの作品です。オタク人にとっては痛すぎる。でもそこがたまらなく面白い!史上最低の痛恨恋愛漫画(褒め言葉)、それが「ラブやん」なのです。

最強無敵のダメ男と、ダメ天使と愉快(怪)な仲間たち

 男女をカップルにするための最適な方法を瞬時にどっかから受信することのできるラブやんだったが、なぜかカズフサに限ってはひとつも方法を思いつかない。せめて一般論で特訓やアプローチを指導するも、あらゆる常識と理解の枠からはみ出してしまっているカズフサのヘタレっぷりで全て玉砕…そのダメさ加減に引きずられて、ラブやんの天使株も大暴落。すっかりダメ天使扱いされるようになってしまったのです。

 カズフサに手を焼くラブやんを見かねて、ラブ時空の面々も天使長が自ら出向いたり、ラブやんを鍛え直そうとキューピッドの達人を派遣したりとテコ入れを計るも、カズフサのダメっぷりには微塵も変化はナッシング。むしろ、周囲の変な人たちを引き寄せているだけのような気がする。店の奥に学校の教室がある謎のメガネ喫茶「委員長」といい、厨房で本当に牛を叩いて捌くアメリカン食堂のジャモジさん(名前と顔の元ネタはジャ○おじさ○)といい…むしろラブやんを取り巻くダメ環境は加速するばかりです。ところが、地球を征服しようと襲来した宇宙人の代表となぜか(お医者さんごっこで)戦って、カズフサの予測不能の行動に得体の知れない恐怖を抱いて侵略を断念させたり…(でも、全員の記憶が消されてしまったのでヒーローにはなれず)カズフサのダメオーラは人類の枠さえ超えてしまっているのかも?

この痛さは自虐ではなくエンタテイメントになる

 こういう文字面だけでの紹介や分析だけを読んでいると、ただ痛いだけの自虐ギャグ漫画のように思われるかもしれませんが、この面白さはギャグ漫画のエンタテイメントとして、ギリギリの危うい一線で踏み止まっているからこそ、身に覚えがありすぎるネタの数々を、濃いオタク読者が自虐性を強く意識することなく素直にギャグとして笑えるのだと思います。確かにカズフサは典型的な悪いイメージをフル装備したオタクだし、まじめに考えるてみると同じ趣味の道を生きる者達にとってはその存在はあまりにも痛すぎます。しかし、だからこそ理解できることもあるのです。

 それは…一向に更正の気配無く、退かぬ、媚びぬ、顧みぬカズフサの姿勢は、自分自身と知人・親類縁者でさえなければ、「漢(おとこ)よのぉ〜」と笑って済ませられるからです。この分野の魅力とともに危険性も知っている「理性」という歯止めの反作用が働くからこそ、単なる自虐だとは感じないのだと思います。つまり、この漫画のオタクネタで笑えなくなってしまった人は、本格的にヤバイのかも知れませんが… このノリについて行けるのは幸か不幸か?悩みも深いがその分笑いも大きい。そんな罪作りな逸品です!

First written : 2005/03/20
Last update : 2005/08/18