倫敦恋奇譚
同人誌サークル:ノースノマド
 創作  おじさまと少女の恋物語  全3巻,総集編 
作者:のわき ねい  (「花嫁指南」へと続刊)

©2003-2004 ノースノマド/のわき ねい

「倫敦恋奇譚」とは?

 舞台は名探偵ホームズが活躍していた19世紀末頃の古き良き時代の倫敦(ロンドン)。ヴィクター・グレン(42歳)は、旧家の三男坊で貿易商社の社長であり、いわゆる上流階級の一員なのだが、社交界に出入りするより大衆パブや大衆演劇を好む変わり者である。かつては詩人になることを夢見ていた文学青年だったが、妻を置いて出た詩人修行の旅の途中、妻が流行り病で死んだと知らされ…それ以来、恋愛に真剣になることはなく、社交界に浮名を流すことはあっても、再婚を勧める周囲の声に耳を貸すことはなく、縁談を持ちかける実姉のバーバラからは不良紳士とも言われていた。

 そんなヴィクターの屋敷に、メイドとしてやってきたのがアン・ハーディ(15歳)でした。少々おっとりしているが気立てがよく素直で聡明で心優しい、そんなアンと過ごす日々の中で、ヴィクターは長らく忘れていた心からの笑顔を取り戻し、やがてアンという女性に惹かれて行く…おじさまと少女の恋物語、それが「倫敦恋奇譚」なのです。

身分の差と年の差、おじさまと少女の恋物語

 「おじさまと少女の恋物語」と書くと、なにやら背徳めいた解釈をされてしまうかも知れませんが、この作品は決してそんな邪な内容ではなく、気持ちがいいくらいジャントルで真摯な恋物語なのです。上流階級と使用人(メイド)という身分の差も、親子ほども離れた年の差も関係なく、穢れ無き純粋な魂を持つ少女の笑顔を見たいから、一人の女性として真剣に恋をする。年長者だからこそ、いや、年長者らしからぬ心躍るような恋…よく考えてみると、「マイ・フェア・レディ」も「サウンドオブミュージック」も、物語の設定上ではおじさまが主役なのだから、何の問題もないでしょう。

 だが、上流階級と使用人とでは住む世界が違う。二人の仲が深まるほど、階級社会の冷厳な現実が突きつけられる。使用人が立場を忘れてはいけない。主人と間違いを犯したメイドを雇ってくれる家はどこにもない。これからもメイドとして働き続けたいなら、これ以上旦那様と親しくなってはいけない…主人がメイドに入れあげているなどと世間に知れたら、グレン家の恥だと… でも、この恋は遊びじゃない。この気持ちは決して間違いなんかじゃない。二人とも本当はそう思っていたい。でも、だからこそ…差し出されたその手を握り返すことはできなくて…(切なくて涙で前が見えません!)

私が愛したのはアンで、
アンという人はこの世で彼女ただ一人だ!

 私も多くの読者の方と同じように、森薫先生の「エマ」の影響でヴィクトリア・ロマンスの世界にはまったクチであり、この手の作品は同人も商業も関係なく大量に読んできましたが、エマと同じくらい特別な感慨を抱いた作品は、この倫敦恋奇譚だけでした。「エマ」では二人とも若いからこそ上手くいかないことのモドカシサに翻弄されるわけですが、この作品では年の差による経験というリードする主体があり、なおかつ、アンに対して小さくても立派なレディとして接することで、一方的なご都合主義の展開にはならない。とかくこの手の作品では、メイドモノであるとか絵が上手さやキャラ萌え、などの表層的な要素に目が行きがちなのですが、そういう要素だけに限定せずに、広く一般的な視点を持って読んでみて欲しい、上質なクラシック・ロマンスなのです!(男性主観だとアンが可愛いのは勿論ですが、純で紳士な旦那様も可愛く思えてしまうのが不思議なところです。いや、全然変な意味じゃなくて(笑))

 重要なのは、私が君を愛していることと、君が私を愛してくれるかということなんだ!私が愛したのはアンで、アンという人はこの世で彼女ただ一人だ! 様々な困難を乗り越えた二人がつかんだ最高に幸せな結末は、ぜひ皆さん自身の目で確かめて、心から祝福してあげて下さい!
※物語はひとまず完結しましたが、続編「花嫁指南」シリーズでその後の二人をお楽しみ下さい。

※画像使用許諾:2005/02/24
First written : 2005/02/27
Last update : 2005/05/22

※このページで使用している画像は、GM研が作者様より直接使用許諾を受けているものです。
画像の著作権は作者様に帰属します。作者様に無断での転載、及び画像ファイルへの直リンクを禁じます。