「倫敦恋奇譚」とは? 舞台は名探偵ホームズが活躍していた19世紀末頃の古き良き時代の倫敦(ロンドン)。ヴィクター・グレン(42歳)は、旧家の三男坊で貿易商社の社長であり、いわゆる上流階級の一員なのだが、社交界に出入りするより大衆パブや大衆演劇を好む変わり者である。かつては詩人になることを夢見ていた文学青年だったが、妻を置いて出た詩人修行の旅の途中、妻が流行り病で死んだと知らされ…それ以来、恋愛に真剣になることはなく、社交界に浮名を流すことはあっても、再婚を勧める周囲の声に耳を貸すことはなく、縁談を持ちかける実姉のバーバラからは不良紳士とも言われていた。 身分の差と年の差、おじさまと少女の恋物語 「おじさまと少女の恋物語」と書くと、なにやら背徳めいた解釈をされてしまうかも知れませんが、この作品は決してそんな邪な内容ではなく、気持ちがいいくらいジャントルで真摯な恋物語なのです。上流階級と使用人(メイド)という身分の差も、親子ほども離れた年の差も関係なく、穢れ無き純粋な魂を持つ少女の笑顔を見たいから、一人の女性として真剣に恋をする。年長者だからこそ、いや、年長者らしからぬ心躍るような恋…よく考えてみると、「マイ・フェア・レディ」も「サウンドオブミュージック」も、物語の設定上ではおじさまが主役なのだから、何の問題もないでしょう。 私が愛したのはアンで、 私も多くの読者の方と同じように、森薫先生の「エマ」の影響でヴィクトリア・ロマンスの世界にはまったクチであり、この手の作品は同人も商業も関係なく大量に読んできましたが、エマと同じくらい特別な感慨を抱いた作品は、この倫敦恋奇譚だけでした。「エマ」では二人とも若いからこそ上手くいかないことのモドカシサに翻弄されるわけですが、この作品では年の差による経験というリードする主体があり、なおかつ、アンに対して小さくても立派なレディとして接することで、一方的なご都合主義の展開にはならない。とかくこの手の作品では、メイドモノであるとか絵が上手さやキャラ萌え、などの表層的な要素に目が行きがちなのですが、そういう要素だけに限定せずに、広く一般的な視点を持って読んでみて欲しい、上質なクラシック・ロマンスなのです!(男性主観だとアンが可愛いのは勿論ですが、純で紳士な旦那様も可愛く思えてしまうのが不思議なところです。いや、全然変な意味じゃなくて(笑)) ※画像使用許諾:2005/02/24
First written : 2005/02/27 Last update : 2005/05/22 ※このページで使用している画像は、GM研が作者様より直接使用許諾を受けているものです。 |