GM研 アニメレビュー
天空の城ラピュタ

原作:脚本:監督 : 宮崎駿
製作 : スタジオジブリ/徳間書店
配給 : 1986年(東映)124分

「天空の城ラピュタ」とは?

 「天空の城ラピュタ」とは…いや、今更説明する必要なんてないでしょう。アニメファンなら誰もが知ってる「宮崎アニメ」の代名詞的作品です。宮崎駿監督が無名時代にずっと温め続けてきた独特の世界観と、「空を飛ぶ」というモチーフを物語の中心に据え、昔ながらの夢溢れ胸躍る冒険活劇に仕立てあげています。まっすぐで行動力あふれる少年、可憐で芯の強い少女、一見怖そうだが愛すべき悪党たち、などなど宮崎アニメでおなじみの要素がふんだんに盛り込まれた、完全無欠の娯楽作品、それが「天空の城ラピュタ」です。

ラピュタバカ一代

 私は「ラピュタバカ」を公言して憚りません。かつては録画したビデオをコマ送りで全編を見ようとしてビデオデッキをぶっ壊して親に叱られたこともありました。何度も見てるのに金曜ロードショーで再放送される時は欠かさず見ます。累計で30回以上は見てるでしょうね。どのタイミングでCM入りするのか完璧に把握しているし、今でも目を閉じれば124分全編を秒間30フレームで脳内再生できてしまいます。

 私がここまで強い影響を受けたのには理由があります。当時13歳だった私は、仮面ライダーにもウルトラマンにもガンダムにも興味を示さないという、相当ひねくれた幼少期を過ごしてきました。まだレンタルビデオが定着していなかった当時、映画館の灯が消えた地方都市では、話題の映画も上映されることもなかった。唯一の楽しみは、金曜ロードショーで時折再放送される映画だけ…そんな頃、私はラピュタに出逢いました。

宮崎駿、最後の冒険活劇(?)

 息をつかせぬダイナミックな場面展開と、ゆったりと繊細に描かれる自然描写の好対比。124分の時間枠をフル活用して描かれる、キャラクターたちの豊かな表情。無理に押し付けるのではなく、ごく自然に織り込まれたテーマ。すべてが他のアニメーションとはレベルが違いすぎました。高尚なテーマなんかなくても、受けの良いキャラクターなんかなくても、理屈ぬきで素直に感動することができる。アニメにはその可能性がある。そう感じさせてくれた作品です。

 16年もの時を経ても色褪せることのないこの作品を「宮崎駿、最後の冒険活劇」と評する人は決して少なくない。しかし、これは「それ以降の作品がダメだ」という意味ではありません。逆説的に考えれば、ラピュタの時点で「やりたいことをすべてやりつくした」からこそ、新しい創作へと向かうことができたとも言えます。当時、宮崎監督はすでに大ベテランの域に達していたにも関わらず、自分が生み出した最高傑作を超える新しいものを作ろうとした。そして、その挑戦は今でも続いているのかも知れません。

※Last update : 2002/10/04