ラ・ピュセル 光の聖女伝説
PS2販売/開発 : 日本一ソフトウェア
 冒険・育成  シミュレーションRPG  42時間 
音楽:佐藤天平 キャラクターデザイン:野村良治

ラ・ピュセルとは?

 「ラ・ピュセル」とは、ミュージカルRPGという独特の世界観を持つ「マール王国の人形姫」シリーズを代表作にする、マイナーながらも根強い支持層を持つ「日本一(にっぽんいち)ソフトウェア」が発売した、シミュレーションRPGです。これまでの「マール王国シリーズ」の世界設定とシステムを一新しつつも、魅力的な登場人物たちによる「愛と勇気と行動力」の冒険活劇という、独特のノリは健在です。その上で、自ら宣伝コピーで「骨太なシステム」と豪語する本格タクティカルシミュレーションへと進化させた、日本一ソフトウェア入魂の新境地、それが「ラ・ピュセル」なのです。

 ちなみに「ラ・ピュセル」とは、悪魔払いを仕事とする宗教団体「聖女会」の聖職者のことです。主人公の「プリエ」も、ラ・ピュセルの一員であり、「光の聖女」候補生として修行の日々を送っていました。その性格たるや、正に猪突猛進。正義感が強く、悪魔祓いとして高い素質を持っているが、」その言動はとてもシスターとは思えない。気に食わない奴には、神父様直伝の腰の入ったアッパーで鉄拳制裁!…そんなプリエが冒険の旅の中で「友情・恋愛・別離」を経験して成長していく物語が、快活かつ優しくかつ丁寧に描かれています。いつか『光の聖女になるために!』

極まりし、タクティカルRPG

 さすがに自ら「骨太」と豪語するだけあって、シミュレーション要素の強い戦闘システムは、本当によく出来ています。「方向・高低差・地形効果・属性効果」による数値補正は勿論のこと、「支援攻撃」と「一斉攻撃」の使い分けは戦局を大きく左右する重要な要素です。そして独自の新システム「浄化システム」による「奇跡攻撃」は、少々使いどころが難しいが、使い方次第では敵を仲間にしたりアイテムを強化したりもでき、戦略の幅が広がっています。その他にも、「モンスターしつけシステム」や「アイテム合成システム」や「魔界システム」などなど、シミュレーションRPGとしてシステム面では文句のつけようがありません。「ファイアーエムブレム」や「タクティクスオウガ」のような、基本はあくまでも章仕立てのRPGなので、純粋なSRPGには及びませんが、十分に良作SRPGとしても評価していいと思います。

 「ラ・ピュセル」を一般的な名称としてジャンル分けをするとしたら、「シミュレーションRPG」なのですが、正確な意味では、これは当てはまらないと思います。それは、戦闘での戦術的要素よりも、戦略的な育成要素に比重が置かれているからです。単純なレベル上げではダメで、パラメータのスキルレベルを上げるために、伸ばしたいスキル属性を考慮した武器防具の選択が必要となります。武器防具の組み合わせも自由なので、武器4本などの極端な装備も可能です。戦術の工夫で局面を打開するというより、徹底的に鍛えたキャラと万全のセッティングで、敵を蹴散らしてスカっとするタイプのゲームと言えます。その辺りは好みが分けれる点かもしれません。

信じる心 〜ミュージカルからの脱却〜

 日本一ソフトウェアの過去作を見てきた人は、多少戸惑うかもしれませんが、「ラ・ピュセル」のシナリオは、決して甘いデコレーションケーキではありません。光と闇、神の奇蹟と悪魔の執念、人間の善意と悪意、慈愛と憎悪…想像以上にハードな内容となっています。味付けに失敗すれば一気に駄作にもなりかねない、これらのテーマを描き切るために選択したのが、「ミュージカルRPG」路線からの脱却でした。ミュージカルという派手な演出を使わなくても、2Dドット絵による芸の細かい味のある演出と、魅力的なキャラクター作りができれば、正統派の演出でも十分にテーマは伝わるはずだ…そうして、シンプルにゲームの本質を改めて追及したからこそ、この物語とテーマは破綻しなかったのでしょう。

 いかなる人気シリーズであろうとも、ただ単にシリーズを重ねる縮小再生産では、ユーザーは減っていく一方です。常に新機軸を打ち出して、新規のユーザーを引き込むことなしに、本当の意味でのクオリティの向上はありえません。しかし、弱小メーカーにとって、唯一のドル箱タイトルに手を加えるということは、死活問題に直結しかねないリスクを背負うことになります。そのリスクを乗り越えて良質な作品を作り上げてくれたスタッフに敬意を表したい。自己満足としてのレビューではなく、ファンの1人としてレビューで貢献したい…願わくは、この良作がキャラゲーという偏見によって埋もれてしまわないことを、切に願います。

First written : 2002/02/12
Last update : 2003/10/24