GM研 ゲームレビュー
君が望む永遠

対応機種 : ドリームキャスト
販売/開発 : アルケミスト/アージュ
プレー時間 : 42時間

「君が望む永遠」とは?

 「君が望む永遠」とは、PCギャルゲー界の新興ブランド 「アージュ」が製作した「多重恋愛アドベンチャーゲーム」です。局所的には高い評価を得たこの作品でしたが、残念ながら、一般のゲームユーザーにとっては、PC版発売直後にソフ倫規定に抵触して自主回収騒動に発展したマイナスイメージで有名になってしまいました。かくいう私自身も、今回の家庭用移殖が実現しなければ、プレーする機会は永遠に無かったと思います。その出逢いが幸福だったのか不幸だったのか、すべてを終えた今でも断言することはできません。ゲーマーとしては、壊れそうなほど激しく心を揺さぶられて泣いてしまった名作でしたが、レビュアーとしては、ゲームという構造自体が作品の最大の敵になってしまうという、どうにもこうにも評価の付け難い、困った迷作でもあったのですから…

※このゲームは非常に危険です。本当に「戻れなく」なってしまうので、堅気の生活を捨てたくない人は絶対に手を出してはいけません。私は警告しましたからね!興味本位で手を出しても責任は負いかねますので、どうか、その点を重々踏まえた上でお読みください。

時間は人にとって最もやさしくて残酷なもの

 君望のシナリオは2章構成になっていて、1章は高校3年の夏を舞台にした明るいポップな学園恋愛モノです。見ているこっちまで頬が緩んでしまいそうなほど微笑ましく初々しい恋愛を、たっぷり約4時間かけて丁寧に描いています。しかし、これはあくまでプロローグです。優しくゆったりと流れる永遠とも思える時間…しかし、ほんの少しのボタンの掛け違いと些細な偶然によって、全てが暗転してしまうことになる。デートの待ち合わせのわずかな遅刻。だが、待ち合わせの場所に彼女の姿はどこにも無く、代わりに救急車のサイレンが鳴り響いていた。警察官の無線連絡が、事務的な口調で最悪の事実を突きつける…

「遺留品から被害者の身元が判明、白稜大学付属柊学園3年生、涼宮遙…」

 なんとか一命を取り留めたものの、意識を取り戻さずに眠り続ける遙…幸せだった日々の思い出が心を縛り、止まってしまった主人公の時間…人生のすべての意味を失って自暴自棄になり、ただただ遙が目覚めるのを待ち続けた1年後の秋、主人公は遙の父親に諭されて自分の人生を歩むことを決意する。親友の水月の愛に支えられて傷を癒しながら新しい時間を歩み始めた主人公。しかし、事故から3年後の夏、3年間眠り続けていた遙が奇跡的に目を覚ますことになる。ずっと待ち望んでいたはずなのに…素直に喜べない。待てなかった後悔…3年間生きてきた時間・自分が築いてきたものをすべて失う恐怖… 3年前と同じ純粋な心で主人公を想う遙、自分の夢を犠牲にしてまで主人公を3年間支えてくれた水月… 動き出した時間は、再び残酷な現実と選択を突きつける…

想われるということの重みと、選択の痛み

 ご都合主義な展開や奇抜な設定や「萌え」ばかりが横行する最近の恋愛ゲームでは珍しく、君望では恋愛の裏側までしっかり描かれています。普通の「萌えゲー」気分でプレーすると、手痛いしっぺ返しに遭うことでしょう。君望は、「 一人のヒロインのことだけを考えればそれでいい 」 という萌えゲーとは全く違い、最後まであらゆる人間との関係に悩み続ける、とても重い作品です。想われるということの重み。人を好きになるということの幸せと辛さ。誰かを選ぶということは誰かを傷つけること。選ばれなかった者の行き場の無い想い… 

 物語に対して真剣であろうとすればするほど、ヒロインに優しくあとうろすればするほど、何も選べなくなってしまう。だが、それは、選択式シナリオ分岐型というゲーム性の根本を否定することに他ならない。冒頭で述べた通り、ゲームという構造自体が作品の最大の敵になってしまうのです。選択肢という可能性によって薄められていく「選択」の意味と重み。私はレビュアーとしての使命感からコンプリートしましたが、攻略を進めれば進めるほど、罪悪感は募り心は掻き乱されてボロボロになっていく。「もう戻れない時間と人間関係」が主題なのに、ゲームであるが故に「選択」という残酷な可能性を強いられます。それは、「if」ではなく、「another」。もしも、ではなく、もうひとつの現実。そして、その現実の数だけ心は傷ついていく。その痛みに耐えられない人には、絶対にオススメできないゲームです。

私が望む永遠

 私が、君望にこうして厳しい意見を書くのは、決して嫌いだからではありません。自分にとって、とても大切な作品だからこそ、その真実の姿を伝えたいのです。そういえば、私の友人がPC版の「君望」の感想で「茜のシナリオが辛すぎて先に進めなくなった」と言っていたのを思い出しました。今ならその気持ちが良く分かります。このゲームでは感情移入をしようとすると、本当に心が壊れてしまいます。主人公の優柔不断さを憎むことでゲームと一定の距離を置くことで、罪悪感の直撃を避けることはできますが、そうしてしまうと物語に対してもヒロインに対しても心が醒めてしまう。敢えて修羅場に身を置き、自分の選択が引き起こす全てを引き受けて傷付く覚悟…例外的に、この作品においては、「やめること」も選択肢の一つに入れておいたほうがいいと思います。

 たかがゲームごときに何トチ狂ってんだか…と、呆れているヒトもいることでしょう。でも、私は恥ずかしいなんてこれっほっちも思いません。対象が二次元だろうと何だろうと、あの時流した涙と、あの時感じた気持ちだけは、決して嘘じゃないから… 今のこの気持ちが永遠であって欲しい。それが私が望む永遠です。

First written : 2002/10/18
Last update : 2003/10/14


君が望む永遠 キャラクター選評

※この選評には重度のネタバレが含まれており、ゲームの楽しみを損なう恐れがあります。ネタバレの部分は白文字で隠してありますので、ゲームをクリアした方、もしくは多少のネタバレも読み流せるという方のみ、選択反転させてお読み下さい。なお、この注意を無視してネタバレ部分を読んでしまった場合、GM研は一切責任は取りかねますので、くれぐれもご注意ください。

涼宮 遙
 主人公にひそかに想いを寄せている、家庭的で控えめな性格の女の子。おっとりした性格でアドリブや本番に弱く、一生懸命あせあせする。クラスの中で目立つことはないが、別クラスの男子には「割とかわいい娘」程度には認識されている。速瀬水月とは入学以来の親友関係にあり、水月に橋渡し役を頼んで主人公に想いを伝える。やっと叶った想い、やっと届いた想い…だが、幸せな時間は不幸な事故によって止まってしまうことになる…
(以下、重度のネタバレ)
さすがは正ヒロインだけあって、キャラクターもシナリオも完璧です。もし、このゲームが遙シナリオ1本のみの作品であったとしても誰も文句は言わないでしょう。プロローグにあたる第一章で約4時間たっぷりかけて描かれた遙との大切な思い出の時間。そして、約12時間かけて第二章で描かれる、胸の張り裂けそうな切なさ・狂おしいほどの愛しさ・激しい後悔の念と自己嫌悪…それらは、今までのどんなゲームでも味わったことの無い痛烈で鮮烈な感情であり、私は文字通り寝食を忘れて不眠不休で一気にプレーし続けました。止め処なく溢れる涙を拭いもせず、ただ真剣に愛して傷付きました…これは、ファーストプレーだからこそ味わうことのできた感情です。正直言って、この時点では、この物語では「涼宮遙」以外の他のヒロインを選ぶことなど許されない!と本気で思っていました。そんな後ろめたい気持ちのまま他のシナリオの攻略を進めていたのですが、そんな状態では他のヒロインに「○○萌え!」なんて感情が抱けるわけもなく、それどころか遙への罪悪感はますます募るばかりで… 遙という絶対的な存在が見えざる心の枷として機能したからこそ、君望は「キャラ萌えゲー」という呪縛から解放されたのかもしれません。

速瀬 水月
 孝之や慎二と同じクラスの元気で明るく面倒見のいい性格(ちょっとお節介)。水泳部に所属しており、「記録のために髪を切れ」と顧問に言われ反発して猛練習、といった意地っ張りな面も。以来、めきめきとタイムを縮め、今ではオリンピック強化指定選手の選考対象になるほど。涼宮遙とは入学以来の親友関係で、彼女のためにいろいろ世話を焼く。実業団入りが確実視されてたが、遙の事故をきっかけに水泳を辞めることに…
(以下、重度のネタバレ)
水月は、本当にとても損な役回りを引く受けてくれたキャラクターだと思います。遙シナリオでは哀しいくらいに孝之を繋ぎとめようと焦るばかりで、独占欲が強くて嫉妬深い 「嫌な女」の役回りだったし、水月シナリオに進むためには、ついさっきまで真剣に愛した遙を切り捨てなくてはならないので、どうしても後味が悪くなってしまいました。想いを押し殺して過ぎてしまった時間という現実を認めて、身を引いて一人で強く生きていこうとする遙の気丈な一面。でも、それが逆にどうしようもなく痛々しくて哀しくて…そこまでして辿り着いた水月との結末なのにまったく喜べませんでした。エンディングで流した私の涙は、水月との幸せを喜ぶものではなく、遙への贖罪でした。大抵の人が、この瞬間に「主人公を憎むスイッチ」が入ってしまったと思います。「これは全部主人公が悪いんだ!」そう思わないと、自分の心が壊れてしまいそうだから…でも、そうして主人公とプレイヤーを完全に分離させることで、おそらく3番目に攻略することになる茜シナリオでは、逆説的に水月の存在の大きさを改めて理解できるようになったとも言えます。そうすることで、初めて水月が孝之をどれほど愛していたのかを理解できるのではないでしょうか?

涼宮 茜
 中学の水泳部在籍。県大会常連の水月にあこがれている。遙とは反対にハキハキした性格で活動的。普段は、あせあせ、おろおろ、する姉を「しょうがないなぁ」などと思っているが、 家のことになるとからっきしだめ。いずれは遙たちの通う、「白陵柊学園」に入学し、水泳部に所属したいと思っているが、 自分が入学するときには、遙たちは卒業してしまっていることがちょっと残念。白陵柊を狙う辺り、意外と勉強は出来るらしい。水月を慕っており言動や発想もかなり影響を受けている。主人公曰く「量産型水月」
(以下、重度のネタバレ)
遙シナリオと水月シナリオでは一方的な加害者だと思っていた茜ちゃんの秘めた想いが垣間見えた時、それまで頑なに主人公を拒絶していた態度が、実は主人公をこれ以上好きにならないようにするための自戒だったことを知るに至り、茜ちゃんの見方がガラリと変わりました。誰かを好きになるのに理由なんていらないが、好きであり続けるためには理由が必要です。好きな人の隣にいるためなら、自分の気持ちに嘘をついてでも想いを隠し続ける…それは、あまりに苦しくて哀しい恋。でも、想いはいつか溢れてしまって、自分の大切な人を裏切ってしまう…でも、好きな人が自分で自分を傷つけてボロボロになっていくのを黙って見てなんかいられない。茜ちゃんが孝之に今やっている事は、まさしく水月が水泳という夢を捨ててまでして孝之を支えようとした、あの時の気持ちと同じものではないでしょうか?これこそ、多重恋愛アドベンチャーゲームを名乗る君望の狙いなのかも知れませんね。茜シナリオは「悩んでるのは主人公だけじゃないんだ!」と思い知らせることで、間接的に水月の深い優しさと、遙の芯の強さを描く重要な効果があったと思います。

大空寺 あゆ
 主人公がバイトするファミレス「すかいてんぷる」の同僚であり、邪悪な性格と殺人的な口の悪さを誇る「すかいてんぷる」の核弾頭。その口の悪さでいつも主人公につっかかってくる。さらには、その口の悪さはあろうことか、日々お客にも向けられる。実は、大財閥「大空寺グループ」総帥の令嬢であり、父親の命令で、グループ末端のファミレスでバイトをさせられている。理由は、帝王学の一環として、搾取すべき民草の実態と実情を知るため。自分の身分を明かすことは禁じられている。
(以下、重度のネタバレ)
「あんですと〜〜〜」 「うがああああ」 「お前なんか、猫のうんこ踏め!」絶好調で冴え渡る強烈な大空寺ワールドの前では、遙のことも水月のことも茜のことも、何一つ考える暇を与えられません。何をどうやってもハッピーエンドにはならないこのゲームでは、綺麗サッパリ・バッサリと過去も悩みも豪腕で斬り捨ててしまう大空寺シナリオの存在は、唯一の救いなのかも知れません。すべてを水に流してしまうことが正しいとか間違っているとか、良い事か悪い事かとかはこの際置いておきましょう。実際、私自信がどう思っているのかよく分からないのですから。主人公の悩みや心情を理解できていた頃なら、水に流すことを裏切りだと強く非難したことだろう。だけど、茜シナリオによって主人公に対する私の感情は峠を越えてしまった。もう完全に他人としてしか見れなくなってしまった。だから、もう主人公はどうでもよくて、完全にヒロイン本位でシナリオを見ることができるようになり、大空寺の強烈なキャラクターを素直に楽しむことが出来たわけです。キャラゲーであることを否定してるのに、結局キャラに助けられないと何処にも辿り着けないというのは、我ながら矛盾しているような気がしますが…

玉野 まゆ
 主人公のバイト先のファミレス「すかいてんぷる」新人バイト。明るく、無制限に素直でドジな割にプラス思考。その素直さから主人公を尊敬しているようだか、思考や反応が一般人とは違う次元にあるため、何を考えているかはよくわからない。失敗にもめげずに、何をやるにも一生懸命。ただ、やる気が空回りすることが多く、その後始末は主人公に回ってくる。時代劇かかった口癖はおじいちゃんっ子の影響。
(以下、重度のネタバレ)
「最ッ低!」まゆまゆシナリオの展開を形容するとしたらそうとしか言いようがありません。やっぱりダメだよ、この主人公!(怒)ただ状況に流されて自分が何もかも決められないままに、周囲の人間を傷つけていることに気付かずに、ただむかっ腹を立て周囲に当り散らすだけ。本当に簡単で大切ことに気付けなくて、寄せられる想いを、離れていく想いを踏みにじっていく… 結局、遙や水月との決着も曖昧のままで、まゆまゆを好きになって…それでいいのか?遊び手の属性を考慮したり、ゲームのボリューム感を出すため攻略可能キャラを増やしてシナリオを水増した、と思われても仕方がないですよ。同じゲームの作家が書いたシナリオとは、とても思えません。キャラクター本位の魅力と勢いで押し切る大空寺シナリオの手法は、反則チックだけど、番外編としては最高でした。しかし、まゆまゆシナリオにはそこまで強烈なパワーがないため、このゲームでもっとも脆弱な部分=主人公のヘタレさ加減を前面に出さざるを得なかった。ただの自己完結で終ってしまったこのシナリオの存在意義ってあるんでしょうかね?

穂村 愛美
 欅総合病院で働いている准看護婦さんであり、実は主人公と同じ白稜柊に一時期いたことがあり、ふたつ下の学年にあたる。物腰穏やかな様子や、よく気がつくところから、年下とは思えないようなところがある。しかし、今は何か悩み事があるような様子を見せる。速瀬水月とは別の意味でよく人の世話をするタイプだが、それは優しさを知らない者が寂しさを埋めるためのものだった…
(以下、重度のネタバレ)
穂村愛美シナリオの攻略を終えた私は、腸が煮え返るような激しい怒りでブチ切れそうになりました。ゲームのシナリオを本気で憎いと思ったのは初めてかもしれない。悩みから逃げるために穂村さんの優しさに甘えて浮気し、都合が悪くなって別れようとしたら階段から突き落とされて両手両足骨をして監禁されるという… 情状酌量の余地なしの極悪非道な主人公には天罰テキメンな恐怖シナリオですが、さすがにこれはちょっとやりすぎだと思います。しかも、あんな…あんな終り方で歪んだ愛を最終的には肯定してしまうとは…許せない!不愉快を通り越して、情けなさすら感じてしまいます。この歪み切った狂ったシナリオを容認してしまう作り手の神経が全く理解できません。ソフ倫のエロ基準がどうのこうのよりも、こんなシナリオが入っていることの方がよほど問題ではないだろうか?

星乃 文緒
 遙が入院している欅総合病院の看護婦さん。一見「遊んでいるバカ女」でしゃべり方も語尾伸ばし系。恋愛や男性経験も豊富だが、その分傷つき、それを乗り越えている。そのため、彼女がたまに言う皮肉まじりの軽口は孝之の心を鋭くえぐるが、それは助言に他ならない。だが、彼女の不器用なやさしさは、誤解されることの方が多い。同僚の天川蛍とは看護学校の同期。
(以下、重度のネタバレ)
DC版には、星乃文緒シナリオは存在しません。「行きずりの不倫がバレてバットエンド」という非常に短絡的でプレイヤーを罠に嵌めるようなPC版のバットエンドは、かなり評判が悪かったらしく、家庭用移殖の際に削除されたようです。もしあったとしても主人公の情けなさを倍化させるだけだっただろうし、せっかく蛍シナリオで「いいひと」を好演していた星乃さんの好印象を崩さない方が絶対にいい。 (PS2版には星乃さんルートが存在しますが…)。それに、そうじゃないと、蛍シナリオが「死」という禁断の手法を使ってまでして残そうとしたもの、伝えようとしたものがすべて無駄になってしまうから…

天川 蛍
 遙が入院している欅総合病院の看護婦さん。見かけはどう見てもお子様だが、とにかく明るく真面目で一生懸命で患者さんからも信頼されている。過去の経験から命の尊さを知っていて、一瞬一瞬を大切にすることを孝之に説く。と、思いきや理解できない行動に出ることも多々あり、孝之を混乱させることも。謎の足音の原理はまったく不明。
(以下、重度のネタバレ)
最後に残った蛍シナリオに臨む前、私の心は冷え切っていました。ただレビュアーとしての義務感だけで進めてきた攻略…どんな最低な展開であっても驚かないために何も期待しないように、心をもっと硬く、冷たく、強くして…しかし、いざ攻略を始めてみると、意外なことに、もう枯れ果てたと思っていた涙が、また溢れてきました。蛍シナリオには、他のあらゆるシナリオとは全く異なる存在意義がありました。好いた惚れた、誰を選ぶだの誰とくっついただの、そんな事に終始するだけで何処にも辿り着けなかった他のシナリオとは違い、蛍シナリオは確実に未来へと前向きな一歩を踏み出している。でも、その未来にはとてつもなく大きな代償と引換えでした。このゲームで唯一使われた「禁断の手法=死」。生きているからこそ悩むことが出来るし、傷つけることもできるし、過ちを償うこともできる。だが、死という決定的な結末は、すべてを過去にしてしまう。残された者にできることは、その意志を無駄にしないことだけです。このシナリオこそが、ゲームの主題である「君が望む永遠」そのものなのかも知れませんね…

香月モトコ
(以下、重度のネタバレ)
名作に名脇役アリ!ということで、君望にも多くの名脇役が存在しますが、なんといってもモトコ先生の存在感は際立っていました。厳しくも優しく、人生の先輩として見守り、幾度となく諭すように助言を与えてくれましたが、そのすべてが心に深く残るものばかりでした。その言葉の裏には、医者として遙を救えないでいる自分の不甲斐なさと、患者の心までは治療できないことへの無力さが滲んでいたから…でも、モトコ先生がいなかったら、孝之は辛すぎる現実を受け入れられなかっただろうし、物語も破綻していたと思います。欲を言えば、もう少し先生が若かった頃のエピソードを見たかったけど…

平慎二
(以下、重度のネタバレ)
男キャラという事で、ある意味では、水月よりも損な役回りを引き受けてくれた親友であり、慎二も君望には欠かすことのできないキャラクターです。誰かに八つ当たりでもしなければやってられない!という孝之の気持ちも理解できるけど、それを承知の上で愚痴を聞いてくれて、憎まれ役にされたとしても、振り向いてもらえないとしても分かっていても、自暴自棄になった水月を放っておけなかった慎二は、脇役である以上決して報われないけど、本当にイイ奴だと思います(なぜかアニメ版には登場さえありませんが…)。

崎山店長
(以下、重度のネタバレ)
病院の外で展開されるキャラのシナリオには、慎二もモトコ先生もいないので、諭し役を引き受けるのは崎山店長ということになりますが、どうしてもあの高倉健風の生真面目な人柄と語り口では、話の内容が頭に入る前に「笑い」の方が優先されてしまって…存在感はあるんだけど、具体的にどんな印象が残ったかというと、これといって思い当たる節が無いという、なんとも不思議なキャラでした。でも、最大の謎は、あんな店員しかいないファミレスなのに営業を続けていけているのか?ということなんですけどねぇ…