かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄
PS2販売/開発 : チュンソフト
 推理・ホラー  推理アドベンチャー  26時間 
シナリオ総監修:我孫子武丸

「かまいたちの夜2」とは?

 「かまいたちの夜2」とは、100万本を超える記録的大ヒット作となったサウンドノベルの代名詞的存在「かまいたちの夜」の続編です。前作との関係は、ゲームの舞台となった実在する雪山のペンション「シュプール」に、その日偶然居合わせた宿泊客の名前と設定を使った、連続殺人推理ゲーム「かまいたちの夜」の原作者:我孫子武丸が、ゲームの印税で島を丸ごと買った三日月島の別荘に、ゲームの出演者をお礼として招待することから始まります。懐かしい人々との再会、そして、遠距離恋愛中の真理との久々の再会に胸を躍らせる透。だが、それはゲームではなく現実に引き起こされる連続殺人事件「かまいたちの夜」の始まりだった…

 ”ゲーム内ゲーム”という間接的な繋がりとはいえ、登場人物の性格や設定は同じなので、前作を未体験の方は少々面倒でもキチンと前作から始める事を強くオススメします。そうすることで、パラレルワールドとしての面白さを味わうことができると同時に、架空と現実のズレがリンクしてしまった先に迎える事になる恐ろしい結末に対する、驚き・戸惑い・哀しみは、より一層深いものとなるはずですから!

極限の映像美と異才の共演

 シナリオは、前作から引き続き「我孫子武丸」が総監修を担当し、田中啓文・牧野修の2人の若手小説家をメインライターとして起用。美術にはドラゴンヘッド・死国などで有名な「種田陽平」を、オープニングムービーにはglobe,安室奈美恵、浜崎あゆみのVCを手掛ける「武藤眞志」を、CGには坂本龍一とのジョイントでも知られる「庄野晴彦」を、音楽には「雅楽の貴公子:東儀秀樹」「ピアノ奏者:羽毛田丈史」「ギタリスト:パッパラー河合」など異色の3人を起用しています。ゲーム異業種から集結した、映像界と音楽界を代表する新進気鋭の天才クリエータたちの共演が織り成す『史上、ありえなかった恐ろしくも美しいコラボレーション』という触れ込みは伊達ではありません。

 CGと実写映像を組み合わせ、背景をムービーでループさせる「2.5D」グラフィックの圧倒的な質感と美しさは、サウンドノベルという特殊な表現に最適化された、極限の映像表現技術だと思います。登場人物の見た目は単なるシルエットですが、リアルな挙動と効果的な演出によって、登場人物の吐息・鼓動すら聞こえてきそうだし、恐怖や苦痛に歪む顔、殺人鬼の冷酷な顔すら、ありありと目に浮かんできます。なまじ映像として表情が見えないだけに想像力が働いてしまい、恐怖は何倍にも倍化されてとんでもないことにっ!!人目を気にせず、真夜中の丑三つ時に暗い部屋で大音量で遊ぶのが望ましいのですが、夢見が悪い人やお子様にはちょっと刺激が強すぎるかもしれません。

続編という制約と限界と矛盾と

 でも、全体の印象としては「正統派推理ミステリー」というよりも「伝承や民話に潜む狂気の陰鬱な怪奇サスペンス」という印象になってしまうので、前作の経験者に対しても、一般人に対しても、無条件に推薦できないのが難点です。それに、映像や音楽などの表現技術の革新はあったけど、サウンドノベルというゲームジャンルの構造を革命するような、インパクトのあるシステム的なアイディアが示されなかったのが残念です。ただし、それはあくまで「完璧以上を求めてしまうチュンソフト基準」での話であって、凡百のアドベンチャーゲームとは比べ物にならない圧倒的なクオリティであることに疑いの余地はありませんが。

 映像表現もプログラム技術もハイレベルだと思いますし、シナリオは好き嫌いがハッキリと分かれると思うけど、個々の平均点は高かったと思います。ストーリーの面では前作と設定の繋がりのある続編という制約の中でも、様々な遊び心のあるシナリオのバリエーションによって楽しませてくれました。でも、なぜかどこか物足りないのです。それは、恐らく、「続編」という制約と限界と矛盾にあるのでしょう。そして、製作側もその制約と限界と矛盾を承知の上だったということもよく分かります。すべてを承知の上で、敢えて続編の在り方そのものに疑問の一石を投じたこの作品は、後々、サウンドノベルの歴史の中で重要な意味を持つことになるかも知れませんね。

First written : 2002/07/27
Last update : 2003/10/24


シナリオ別"おもわせぶり"感想記

わらべ唄篇
すべてのシナリオの大元となるメインシナリオだけに、完成度は非常に高いのですが、舞台が特殊かつ大掛かりなのでトリックを想像するのは難しくないと思います。分かる人には相当序盤で犯人が分かってしまうのは推理モノとしてどうなのか?と思わないでもありませんが、でも、メインEDのラストシーンではマジで号泣してしまいました。やり方次第では、誰も死なないで済むEDも存在しますが、先にメインEDを見てしまっただけに、多くは語られないその平穏なEDにとてつもない重みを感じざるをえませんでした。唯一の純然たる推理モノですし、前作との繋がりという面が強いので、導入のシナリオとしては最適でしょう。

底蟲村篇
「不老不死」をテーマにして進行し、蜘蛛とかゾンビとか蟲とかの生理的嫌悪感というべき種類の恐怖があるのですが、展開があまりに人智が及ばなさ過ぎてついていけませんでした。まぁ、そこまではギリギリ許容範囲としても、どうにもあのエンディングは認められません。あんな終り方をされたら、物語としては良くてもゲームとしては失格なのでは?

陰陽篇
陰陽道とか風水とか学術用語満載。なぜか博学な夏美さんと香山さんの意外な一面が見れたりします。でも、このシナリオの連続殺人は人智を超えすぎでトリックも何もあったものではないし、どう足掻いてもロクな終り方にならないので好きにはなれない人が多いと思います。が、まさか、あんな時点であんな方法で解決してしまうとは想像もつきませんでした!(それが良いか悪いかは微妙ですが…

サイキック篇
(別名:サイコメトラー真理)は…ミステリーとは言い難いサイコさんなぶっ飛んだ内容ですが、切り口が変わることで設定全体が変わってしまうダイナミックな展開は楽しめました。真理を主人公にすることで、今まで疑問を挟むことの無かった透の性格設定に意味と必然性を持たせることができたのは有意義だったと思う。

ぼくの青春篇
あくまで一発ネタなので、個別に評価する必要もないでしょう。

ぼくの恋愛篇
同上(手抜き?

官能篇
これぞまさにピンクのシナリオぉぉっ!ソニーチェックぎりぎりの際どい文章! 大胆に迫る真理のナイスバディ、みどりさんの妖しく艶かしく誘う腰つき、赤いハンカチの小林ちゃんと美樹本のアニキ(笑 シルエットと文字だけでここまで興奮できるとは…鼻血ブーな展開に官能と大爆笑の嵐嵐嵐! 惜しらくは、達成率半ばでこのシナリオを体験してしまうと、これ以降の後味の悪いシナリオを中和できないという構成の悪さなんですけど…

わらび唄篇
は、腹が痛いっす!今まで陰惨なシナリオが続いて溜まっていたフラストレーションが、大爆笑で一気に放出されてしまいました。これまでのシナリオに対して徹底的に揚げ足を取りまくる、大胆不敵なこの笑いのダイナミズム!この「わらび唄篇」をやるかやらないかで、このゲームの評価は大きく分かれることになるでしょう。

妄想篇
妄想篇というよりも、意味不明前衛篇というべきでしょうか?気持ち悪いという以前に、理解不能です。

惨殺篇
名前の通りスプラッタなシナリオです。どう足掻いても殺しまくり殺されまくりで全編血まみれです。これは本当に年齢制限無しで大丈夫なんでしょうか?ピンクの栞でほんわか気分モードになっていた人には、この反動はキツイと思う。

洞窟探検篇
選択中にフローチャートによるやり直しが効かない特殊なシナリオです。かなり条件が複雑なのでBADエンド収集に一番苦労することになるでしょう。謎のコマンド入力を成功させると、中村光一社長からの謎のメッセージが現れて金の栞をゲットできます。

?篇
すべてのエンディング(105個)を制覇して、金の栞をゲットすると見ることのできる謎のシナリオです。フローチャートには選択肢として出現しないが、特定の場所においてバグのように散りばめられた製作スタッフの狂気の断片を垣間見ることができます。単体ではまったく意味不明な蛇足なのですが、これをどう解釈するかは…多分、誰にも表現できないんじゃないでしょうか?(知らないことが幸せなこともあるんですから)