「ICO」とは? 生まれつき頭に角が生えていたため、生贄として魔女の住む古城に連れてこられた少年が、言葉すら通じない不思議な白い少女の手を引いて、運命に逆らい霧の城からの脱出を試みる静寂の脱出アドベンチャーゲーム、それが「ICO」です。発売初週は約1万6千本という地味なスタートでしたが、業界のトップクリエータ達が口を揃えて絶賛し、アメリカの2つのゲーム賞に最多ノミネートされるなど高い評価を受け、2002年5月には「模倣犯」のベストセラーでも知られる「宮部みゆき」による小説「ICO 霧の城」の連載が週刊現代で始まるなど、口コミで徐々に人気が広がり、ついには全世界50万本の出荷を達成しました。 私自身、その評判は聞きつけてはいたものの、生来の天邪鬼気質のため今まで購入に踏み切る事ができなかったのですが、雑誌の懸賞で当たったのが縁でこの作品に触れる機会を得ました。その縁(えにし)とゲームの神様の粋な計らいに深く感謝いたします。 足枷という発想の転換 このゲームには一切の余計な説明がありません。ぽつんとソファーが置いてあるだけで、そこがセーブ場所だという説明は一切ないし、風や水の音などの自然音だけで音楽もほとんどありません。アクションの幅は限られているのでパズル要素は決して難しくはないし、オートのカメラワークで見えている範囲内で謎が解けるので、3Dアクションにありがちな視点回転による3D酔いの心配もありません(その代わり、高所恐怖症の人にはオススメできませんが)。 「ICO」は正統派のアクションパズルゲームですが、他のゲームと決定的に違うのは、少女という「足枷」の存在です。段差では自分が先によじ登ってから少女を引上げ、向こう岸に飛び移る時には少女を受け止め、少女を誘導するルートを確保するために、時には崖をよじ登り鉄骨にぶら下がって先行しなければならないし、影(敵)からも少女を守らなくてはならない。しかし、その足枷という発想の転換が、単純な操作に奥行きと必然を持たせ、印象派絵画を彷彿とさせる美麗なグラフィックによる、単なる芸術性先行の作品ではなく、上質なアクションパズルゲームとして成立することができたのです。
この人の手を離さない。 R1ボタンで少女(ヨルダ)の手をつないで引っ張りながら移動すると、やや遅れて反動がコントローラに伝わってきます。その感触がやたらとリアルなのですが、やがて少女が少年に信頼を寄せるようになると、自ら手を預けてくれるようになり、次第にその反動は小さくなっていきます。「手を引く」から「手をつなぐ」へ。信じられるのは繋いだその手の温もりだけ。果てしない静寂の中で、つないだ手に温もりと優しさすら感じさせるその一体感が、このゲームの真の魅力だと思います。 余計な説明をすべて省いて徹底的に独自の世界観を構築し、光と影すべてが極限までリアルに描き込まれた世界の中で唯一、輪郭がぼやけた少女の脆くて儚い存在感。言葉も理由もいらない。この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから… First written : 2002/06/05
Last update : 2003/10/23 ICO小ネタ集 ヨルダの言葉がわかる!
隠し武器!
ヨルダとスイカが食べたくて!
|