「ホソカワミラクルクロニクル」とは？ 今でこそ可南子中心の同人誌即売会「カナコミ」の開催が2007年6月に決まるなど、”史上最強のサブキャラ”という確固たるジャンルとなりつつある「マリみて可南子本」ですが、なぜこのキャラにそこまで人気があるのか、不思議に思っているマリみて読者もいるかも知れません。確かに、祐巳ちゃんへのピュアで過剰すぎる愛情がちょっと倒錯した形で発揮していた第一印象は強烈でしたが、その後は主要登場人物欄に出たり消えたりで、登場回数だけで考えると隠れキャラに近い存在ですからね… しかし、だからこそ満たされない心を愛で埋める創作意欲を掻き立てるキャラであるとも言えます。そんな方にこそ是非オススメしたいのが、サークル：ティンクルスターさんがこれまで発行してきた可南子本の、オフセットもコピー本も、シリアスもコメディも、薔薇も野薔薇も桂も詰め込んだ再録総集編「ホソカワミラクルクロニクル」です。 「可南子さん」と「可南子ちゃん」 恥ずかしながら私もティンクルスターさんの本のファンになって日が浅いので、初期の可南子本を読むのは今回が初めてでしたが、なるほど、これはまさにクロニクル（年代記）と呼ぶに相応しい作品ですね。表紙を見ても分かるように、ティンクルスターさんが描く可南子は、四角目でちょっと電波でダークな「可南子さん」によるコメディセクションと、よい子で物憂げで祐巳様や瞳子とラブラブな「可南子ちゃん」によるシリアスセクション、以上の２つのアプローチから構成されています。そのどちらも「同人可南子」の大きな魅力であり、周囲を巻き込む暴走ギャグタッチで大いに破目を外すことと、秘めたる想いを繊細に描いたシリアスタッチで、心揺れて溢れ出るコトバ…そのギャップがたまらない！ 個人的に一番お気に入りなのは、バレンタイン合わせのコピー本「ヴァレンタインデイ キッス」からの再録となるエピソード「正しいキスの方法教えます。」です。これはある意味、普通の18禁よりもエロいかもしれない…見つめ方から指の絡め方、メガネやアクセサリーを外すタイミング、気持ちの高め方から目を閉じるタイミングに至るまで…はっ、百合という概念さえ忘れてドキドキしてしまいました。興味がある方はレッツ実践！（？） 愛と妄想が世界を救ってくれなくても、 同じ人と書いて「同人」。文字通りその喜びと楽しさを、可南子本を描くことで体現してきたティンクスルターさんが、サークルさんや読者たちによる「可南子友達の輪」の広がりとともに、作品のクオリティもそこに込められた想いも、どんどん高まり続けて行く様が、この作品を読んでいると手に取るように分かります。そこにあるのは、マリみてという原作への尽きせぬ愛情であり、キャラクター主観で読み解く楽しみ方をすることで、そこには今しか描けない想像と、その想像を共感しあえる縁が生まれるから、もっともっとマリみてが好きになれるのだと思います。 愛と妄想が世界を救ってくれなくても、共感して救われる心が同人（ここ）には確かにある… たとえ原作で報われなくても、信じて進むと決めた同志たちと共に、立ち止まらずに駆け抜けたその足跡は、きっとかけがえのない思い出になるはずだから…同人の醍醐味は作品単体だけではなく、原作やキャラや交流を含めた一期一会の出会いにこそあるのだと…可南子が大きいのは身長だけじゃなくて、ハートもでっかい。作者が本当にこの二人が好きで楽しみながら描いているんだなぁ、と感じられて頬が緩んでしまうような、お腹一杯の幸せとともに是非オススメしたい逸品です！  ※画像使用許諾：2007/01/21 First written : 2007/03/15 ※このページで使用している画像は、ＧＭ研が作者様より直接使用許諾を受けているものです。 | ||||||||||||
