本日 昨日
Review circle gmken. He whispers some words in your heart, and makes your gentle OTAKU days.
GM研
Girlhood
同人誌サークル:Monkey's taste
 ジャンル:新世紀エヴァンゲリオン 
作者:曙はる

「Girlhood」とは?

 コドモとオトナの狭間に揺れる、アスカとシンジの悩みを等身大で描いたこの1冊は、劇場版エヴァでの何とも言い難い、ナニでアレな結末にどうしようもない想いをひきずったままで、同人誌の存在を知ってからまだ間もなかった当時の私にとって、とても特別な1冊になりました。

 大好きな加持さんは、私のことをちゃんと見ようとしないで「アスカはまだ子供だよ」と言った。親友のヒカリは、鈴原の家にご飯を作りに行くから遊びに行けないと言った。「アスカは私達より大人な感じだから、こんなの笑われちゃうかもしれないけど…」みんな、私ひとりを置いて知らないところに行っちゃうんだ。私のことをちゃんと見ないくせに…勝手な想像で私のイメージを作るくせに… その不満を、アスカはシンジにぶつける。だが、自分からシンジを挑発したくせに、いざ事に及ぼうとすると怖くなって、アスカは逃げてしまった。私は、このまま大人になれないまま押しつぶされていくのかな…私は、大人になって何がほしかったんだろう?…そんなアスカにシンジは…

あの夏、少女の頃に

 自虐的に語り始めるアスカに、何を話せばいいのかわからなかった。でも何か言わなきゃ…シンジには手を繋ぐことさえ出来なかった。綾波に「その手は何のためにあるの?」と諭されたシンジは、雨の中見晴台に行こうとしていたアスカを連れ戻そうと、その手を掴んだ。 「一緒に帰ろう。もう一度、明日来よう。」

 …流れていく、痛みが想いが…

 センターカラーの見開きで描かれた雨上がりの青空。どこまでも広い世界。穏やかな笑顔でつないだ掌と、優しい抱擁で交わした口付け…そして、その続編の「GIFT 〜Girlhood:2〜」での、「生まれてきてくれてありがとう…」という言葉。母の指を掴もうとする小さな手と、シンジと重ねた掌…それはアスカファンの私が、何より見たいと願っていたシーンでした。

 ちなみに、この「Girlhood」には、後に「らいか・デイズ」などのヒットで商業誌の舞台で活躍することになる「むんこ」さんと、かつて合同サークル「さるばな」を運営されていた縁もあって、ゲスト4コマが収録されていたりと…7年後の今読み返してみると、とても感慨深いものがあります。

ふたりが同じところに立っている姿を見たかった

 「Monkey's taste」の曙はるさんが描くアスカとシンジは、「ラブラブ」というより「じゃれ合っている」とか、余裕があってシンジをからかいながら尻に敷いているようなイメージがありますが、そんな風にごく自然に「シンジを受け入れ態勢オーケーなアスカ」や、「素で女の子なアスカ」を描けるようになるまでには、様々な葛藤があったことも、総集編「Girlhood+」のあとがきに、以下のような心情が綴られています。

 アスカが欲しくても手に入れられなかったものを見せてあげたかった。それは”同人描きの勝手な親心”なのかもしれない。それでも、アスカとシンジに同じところに立って欲しかったから…もうちょっと描いてみたい。描けるかな?試行錯誤の末にやっとたどり着いた場所。それは、エピローグ【…Cried a little】でのアスカの言葉が全てを物語っています。

 それは見せかけかもしれない。自分勝手な思い込みかもしれない。…でも、信じたいと思った。きっと、そうして私も生まれてきたんだから…新世紀の子供達におめでとう。今度こそ、心から素直にそう祝福したくなる逸品です。