ファイアーエムブレム 烈火の剣
対応機種 : ゲームボーイアドバンス
販売/開発 : 任天堂/インテリジェントシステムズ
 : 公式HP
プレー時間 : 47時間

「FE烈火の剣」とは?

 「ファイアーエムブレム 烈火の剣」とは、FEシリーズのGBA参入第一作「封印の剣」と同じ世界を舞台にして、ひとつ前の世代の英雄戦記を描いた、名作シミュレーションRPGシリーズの最新作です。「暗黒竜と光の剣」→「紋章の謎」、「聖戦の系譜」→「トラキア776」、というように、同じ世界観で時代や視点を変えて連作するのは、FEシリーズの伝統ともいえる手法なのですが、今回は今までに無い極めて特殊なパターンでした。未来発展形の時代遷移ではなく、前作の「始まり」へと帰結していくシナリオと、まったく手が加えなれなかったシステム…毎回シンプルだけど絶妙な難易度バランスの戦術システムを発明して、マゾッ気なファンたちをヒイヒイ云わせ、サドっ子たちの攻略欲を掻き立てて来た、そんなFEの歴史を知る歴戦のエムブリャーとしては、このお手軽な仕様はちょっと寂しいものがあって不安だったんですけど…そんな心配は杞憂でした。良くも悪くも、今回もFEはFEだったのですから。

変わらないFE、変わりゆくFE

 FEシリーズといえば、「て〜ごわい、シミュレ〜ション♪」というCMでもお馴染みのように、「とにかく凶悪に難易度が高い求道的なやり込みゲームで初心者には敷居が高すぎる」、というイメージがありますが、その流れは前作の「封印の剣」あたりから変化してきていると思います。今作では特に、導入部分を完全な初心者のチュートリアルにしているので、FE独特の「武器特性の三すくみ関係」や「特効」、極端に言えば、Aボタンが決定でBボタンがキャンセル、ということさえ知らない人でも全く問題なく学習できてしまいます。でも、あまりにも初心者に歩み寄った丁寧すぎるチュートリアルは、歴戦のFE戦士たちにとってはかったるささえ感じてしまいましたが…

 でも、そこはやっぱりFE。終盤に向かって一気に難易度は急上昇&リセットの嵐は今回も健在です。2周目以降の「ヘクトル編」や激難のエクストラモードなど、やり込み人(びと)へのオプションも充実しています。それと、これは何気ない変更点なんだけど、これまでに発生させた支援会話をオマケモードでいつでも閲覧できるようになっていたり、店頭試遊台の「月刊任天堂」からスペシャルアイテムをダウンロードできたり、封印の剣のデータを読み込んだりできたりと、さりげない部分にまで手が加えられているのは、なんとも任天堂らしいこだわりです。それと、今作の最大の変化として挙げたいのが、FEシリーズ初となる静止画ビジュアルイベントの採用です。元々FEのキャラクターデザインは人気があるし、乱発して物語の進行を妨げたり想像力を損なう事もなく、にここぞという場面だけに効果的に使われていたので、この試みはとりあえず成功だったと見ていいと思います。

有限の未来というジレンマ

 今作は、総合的に見て「非の打ち所のない」大変優秀な作品だと思います(その代わり、驚くような冒険もないけど)。ただ惜しむらくは、前作への世界観へとつなげて行くために、キャラクター間のカップリングを発生させづらかったため、支援会話の恋愛度と面白みが薄れてしまったことです。ヘクトルとエリウッドの支援会話で「リリーナとロイ」という未来像を垣間見えたのは、本来ならばファンとしてはニヤリとするべきポイントなのですが、素直には喜べませんでした。というのも、その伴侶となるべき女(ひと)につながる設定がまったく示されなかったからです。前作のスタートへと物語を帰結させていく以上、未来は既に定まっていて願望を含めた想像を挟む余地がなくなってしまう。今作の主人公達はあくまで人知れず世界の危機と戦った「知られざる英雄たち」であって、その大半が終戦とともに散り散りとなって歴史に埋もれてしまうし、誰と誰がくっついたとか想像する事もできないので、どうしてもキャラクターの個々が弱く感じてしまうのです。それに…物語の辻褄を合わせるために、どうしても避けれられない辛い別離があり…自由恋愛(のような)システムを持ちながら、遊び手がどれほど想っても届かない、想像の余地さえ与えられない「有限の未来というジレンマ」、これってすごく寂しいことなんじゃなかなぁ… FEが高次元で完成されたゲームだからこそ、そろそろ変革の時期なのかもしれませんね。

First written : 2003/06/10
Last update : 2003/10/14

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キャラクター選評(ベスト10)

※この選評はあくまでもGM研所長の独断と偏見によるものです。

1位 ヘクトル グレートロード

 3人のロードの中でも最強の存在だと、誰もが口を揃えて言う事でしょう。斧使いというハンデをものともしない速さと、限界まで上昇するバカヂカラから繰り出される勇者の斧の四連撃の破壊力は抜群です。ヘクトル編では主人公として違った一面を見せてくれたのもポイント高し。ただ個人的には、リンディスと公式カップルになって欲しかったんだけどなぁ…

『いーや! あれは絶対フェレ家の面構えだったぜ!
いくらおまえと俺の仲でも、娘は絶対、嫁にやらねーからな!!』

2位 ニノ 賢者

 登場マップがなかり後半だったけど、「女子供は良く育つ」というエムブレムの法則の通り、劇的な成長を見せてくれました。多少のばらつきはあるけど、大抵の場合魔力と魔防が限界まで上昇するので、場合によっては大賢者アトスよりも強いかも。ジャファルへのまっすぐな親愛の情も微笑ましくてポイント高し。特に支援会話ランクAは必見です!

『(ニノ)どうして、ちゃんと話できなかったんだろ。あたしがもっとしっかりしてたらこんな別れ方・・・しないですんだかもしれないのに!どうして・・・・・・どうして・・・・・・(フロリーナ)ニノ・・・ふぇ・・・(ニノ)やだ、フロリーナさんまで泣かないでいいよぉ。(フロリーナ)だって・・・だって・・・ニノ・・・そんなに・・・まで・・・えくっ・・・ぐすっ・・・ひくっ・・・(ニノ)うえっ・・・・・・・・・うっ・・・ ・・・』

3位 フロリーナ ファルコンナイト

 「ペガサスナイ三姉妹の末っ子最強理論」にもある通り、今回も最強の飛行系ユニットはフロリーナです。でも、今回は天空のムチの数が恐ろしく少ないし、長女のファリナはヘクトル編じゃないと登場しないので、トライアングルアタックはなかなか拝めません(どの道、デルフィの守りは1個しかないし)。極度の男性恐怖症ということで、女性ユニットとの支援会話が多いので、相方的存在としても重要。

『さあ、勇気をだしてフロリーナ!深呼吸をして・・・大きな声で言わないとだめよ。・・・・・・・・・も、もう一度だけ練習・・・深呼吸して・・・ヘクトルさま!(ヘクトル)なんだ?(フロリーナ)!!(ヘクトル)あ、おまえリンのとこの・・・(フロリーナ)きゃあっす、すみませ〜ん!!(ヘクトル)なんなんだよ、いったい。俺は・・・化け物か!?』

4位 リン ブレイドロード

 導入部の第1章の主人公としてシナリオ上では活躍してくれたけど、ユニットとしては女性剣士特有の悩みとして、HPと防御力が上がりにくいので最前線に立たせにくいし、神将器が使えないため最終決戦で全く役に立たないのが難点です。残念ながら、エリウッドやヘクトルとのイイ感じの会話は望めないので、カップリングを狙うならケントかラスあたりで。

『・・・あなたに、初めて会った時どこか私に、似てる気がした・・・それは・・・きっと同じ孤独を知る者だから・・・なのね。あなたといると・・・安心できるの。あなたの風を・・・感じられるから。』

5位 レベッカ スナイパー

 スナイパーとしてはウィルの方が速さ以外のすべてにおいて強くなるけど、やはり男としては純情田舎娘に肩入れしたくなるというものです。背景のない身軽な田舎娘だからこそ、支援会話のほとんどのパターンにおいて多彩なカップリングが可能です。その魅力のためなら、多少の戦力ダウンなんぞ知ったことではない。支援会話中心にユニット選択したりして(笑)

『(レベッカ)わたしたちの村が何百人もの山賊に襲われて・・・ (ロウエン)いえ、せいぜい十人くらいだったかと。 (レベッカ)いいじゃないですか、気分の問題です。 (ロウエン)はぁ・・・ (レベッカ)どこからか白馬に乗ったロウエン様が現れて・・・ (ロウエン)いえ、馬は鹿毛です。 (レベッカ)もう!気分の問題です!女の子の夢なんですから、ほっといてください。』

6位 ロウエン パラディン

 騎馬系の存在感が極めて薄い今作ですが、セイン、ケント、ロウエン、この3人の騎馬の中で一番使えるのはロウエンだと思います。騎馬のくせに守備力がやたらと上がるし、力もそこそこで反撃のし過ぎで敵を殺してしまわないので、壁役として最適です。支援会話のバリエーションの豊富さも魅力的。生真面目だけどお笑い担当という妙な魅力を持ったキャラです。

『(イサドラ)ちょっ・・・ちょっと待って、ロウエン。戦場で、何をするつもりなの?その敷き布はいったい・・・(ロウエン)たとえ間食でも、食事はゆったりした気分でないと。あ、用意ができるまで、おれの鞍にある「保存食料袋」からお好みの物を選んでいて下さい。(イサドラ)ロウエン・・・私と合流するまでにどんな経験を積んでいたのか・・・』

7位 ジャファル アサシン

 最初から上級職なので成長の絶対回数の少なさは否めないが、最初からパラメータが高いし成長率も悪くないし、必殺率が高いので、即最前線で活躍できます(でも、仲間にするマップが凶悪に難しいのだが…)。育成方針を間違ってしまった人への「救済キャラ」という意味合いが強い。ニノとのカップリングは当然として、マシューとの支援会話(レイラ復讐編)のランクAもぜひ見ておきましょう。

『ニノ、おまえは・・・俺が生まれて初めて持った「感情」そのものだ・・・』

8位 セイン パラディン

 ナンパ騎士(緑)と堅物騎士(赤)のコンビはFEのお約束ですが、なぜか今回はその力特性が逆転しています。壁役ならロウエン、突撃役ならセインという役回りになりがちなので、中途半端なケントの活躍の場は減ってしまう。それに、セインは支援会話が面白すぎ。ほとんどの女性キャラとの間でいつものセイン節が炸裂します。

『な、なんですって!?あなたは・・・人妻なのですか!?・・・・・・だ、だめだセイン! それは人の道に外れたこと!ああ! だがしかし!この方はあまりにも魅力的!くっ、俺は一体どうすれば!?』

9位 エリウッド ロードナイト

 イベントでしかクラスチェンジできないし、そこから先は闘技場も有限回数しか使えないから、限界まで鍛え上げるのにはかない苦労します。力の上昇率が悪いので、最終決戦でもあまり役に立たなかったし…リンディスとの仲も一向に進展しなかったし、ニニアンとも…(激しくネタバレなので自主規制)。別に嫌いじゃないけど好きになる理由もない、良くも悪くも主人公らしい主人公ですな。

『カートレーで初めてきみを見た時、なんて強い瞳の持ち主だろうと思った・・・その時のリンディスは、リキア貴族の血を引くことに戸惑っていたが、自分の中にあるサカの血には、絶対の自信と誇りを持っていただろう?その気持ちを思い出すんだ。きみは、他と同じでなくていい。』

10位 セーラ 司祭

 なぜかFEシリーズには、かならず一人はいる「突撃高慢お嬢様」。心情的にはエルクとカップリングしてあげたいところだけど、ルセアとの支援会話で判明する意外な事実や、あの稀代の軽薄男セインをも冷静に手玉にとる場面とかも必見です。

『やっぱり、私の美しさが罪なのよね。ああ、でもエルク、あんた大変かも。私の傍にいると、エリウッド様やヘクトル様が嫉妬しちゃうわ。あんた、最前線に送られて死んじゃうかも。』