ETERNAL BLAZE
音楽唄・作詞:水樹奈々
 作曲・編曲:上松範康(Elements Garden) 
「魔法少女リリカルなのはA's」主題歌

アニソンというイメージを突破せしもの

 昨今の空前のアキバ系ブームに乗って、メジャーアーティストのタイアップによるプロモーション市場としても熱い注目を集めているアニメ主題歌枠。アニメの主題歌がオリコン上位の常連にランクインするのは、もはや日常的な光景となっていますが、しかし、歌い手によってその実績が正しく評価されないという偏見は、未だに解消されていません。たとえオリコンのTOP10に入っても、「生粋のアニソン」という理由だけでコメントのひとつもなくスルーされてしまう。まだ記憶に新しい、ネットとアキバを中心に展開していた「ネギまCD運動」では、活動そのものが世間から冷笑されたものです…

 そんな中、今回紹介する、声優:水樹奈々の「ETERNAL BLAZE」は、オリコンのデイリーランキング2位という、声優としてのアニソン史上最高位記録を打ち立てました。主題歌のアニメ「魔法少女リリカルなのはA's」は深夜アニメであり、放送もわずか6局のみ。アニメとしての出来は素晴らしかったが、知名度があまりにも低すぎて大ヒットしていたわけでもない。順位を押し上げる作為的な運動があったわけでもない。レコード会社がヒットを作るための赤絨毯を敷いたゴールデン全国ネットとは天と地ほども差がある。それらのハンデをものともせず、純粋に圧倒的な実力のみで勝ち取った存在の証明は、これまでアニソンとは縁の無かった人々をも巻き込んだヒットとなったのです。

「ETERNAL BLAZE」とは?

 水樹奈々というアーティストを、普通に「歌も上手い声優」だと認識している方が多いようですが、それではまだ十分とは言えません。「声を演じる」と書いて「声優」と読むように、声優に望まれているのは「特徴のあるキャラクターの声」であり、音楽活動をしている声優さんの大半が「演じた声で歌う」ことを求められる。自由に自分の声で歌うことができる境遇と、実力を兼ね備えた者はほんの一握りしかいない。声優音楽をマニア支持による生ぬるい市場というイメージがあるかも知れませんが、実は恐ろしく厳しい世界なのです。

 そんな中で水樹奈々は「圧倒的に歌が上手い声優」と言える貴重な存在です。何も知らない人に歌だけを聴けば、声優が歌うアニソンだと絶対に思わないでしょう。幅の広い音域でも張りを失わないどこまでも伸びやかな声質、歌詞をただなぞるのではなく楽曲に歌詞を溶け込ませて歌い上げるリズム感、趣味の演歌を活かしたツヤとコシのあるコブシのような謡い回し… 「声のプロ」である声優が圧倒的な歌唱力を兼ね備えた時、何物にも代え難い特別な存在になるのです。

 「ETERNAL BLAZE」は水樹奈々の歌唱力がいかんなく発揮されている曲ですが、作詞家としての才能を存分に発揮されている曲でもあります。私はこの歌詞を読んだとき、単純にカッコイイ歌詞だと思いました。その後、これをキッカケにして遅ればせながらアニメ「魔法少女リリカルなのは」を観てからもう一度歌詞を読み直したとき、不覚にも鳴きそうになってしまいました。水樹奈々が声優を務める「フェイト・テスタロッタ」。報われない想いだと分かっていても、母の願いを叶えるために傷付き戦う悲しい運命を背負った、強くて優しい心を持った少女…心が壊れても真っ直ぐに向き合い、何度もぶつかりあったなのはとの間に生まれた新たな絆と誓いを守り抜くために…その信念と心情がストレートに表現されている歌詞は、これ以上ないほどアニソンの王道でありながら、これほど高い純度で作品とシンクロした楽曲は、他ではまずありえないと思いますよ。

 アニメはきっかけであり、より深く作品を楽しむためのものであり、声優だからとかアニソンだからといった先入観を持つことは、とても勿体無いことだと思います。アニソンの概念を変えてしまうほどの圧倒的なパワーを理屈抜きで感じて欲しい逸品です。


「ETERNAL BLAZE」 唄・作詞:水樹奈々 作曲・編曲:上松範康

遥か天空(そら)響いてる 祈りは奇跡に

黒天-真夜中-の蒼に溶けて流れてく涙の粒
迷いなく包み込む温もりに出逢った
真っ白な雪のようにどこまでも素直コトバ
鉄の羽纏った 僕を動かしてく

傷つくたびに 優しくなれる
君のその笑顔だけ守り抜きたい
願いはひとつ

時空を越え刻まれた悲しみの記憶
まっすぐに受け止める黄身は光の女神(てんし)
あの日胸に灯った永遠の炎
深い闇解き放って 自由のトビラ開いてく
強く果てない未来へ

冷たい緑の月に映し出すココロの夜(かげ)
淋し気に呟いた『君のそばにいたい』
真実と向き合うこと教えてくれた勇気は
僕を駆け巡って希望(ゆめ)に目覚めていく

触れ合う気持ち 離れないように
しっかりと抱きしめて
確かな想い貫いてゆく

銀の海に隠した空白のページ
君だけが知っている『本当』を僕に見せて
吹き荒れる切なさに生まれゆく誓い
もう何も恐くはないよ結んだ視線そらさずに
大切な『今』始める

君が君でいられる場所
悪夢-まぼろし-にさらわれぬように
消えない雨の苦しみも
鍵を壊してぶつけてよ 隣にいるから
すべてを信じて

時空を越えて刻まれた悲しみの記憶
まっすぐに受け止める君は光の女神(てんし)
あの日胸に灯った永遠の炎
深い闇解き放って 自由のトビラ開いてく
強く果てない未来へ

そう、きっとここから始まる…

First written : 2005/11/27