脳を鍛える大人のDSトレーニング
DS販売・開発:任天堂
 学習・パズル  脳活性化ソフト  ?時間 
監修:東北大学未来科学技術共同センター 川島隆太 教授

「脳を鍛える大人のDSトレーニング」とは?

 タッチパネル・音声認識・2つの画面。このニンテンドDS独自の機能特徴を活かした意欲的な作品ラインナップの中で、一際異彩を放っているのが、この「脳を鍛える大人のDSトレーニング」です。「最新の脳機能を測定する機器を使用した実験により、簡単な計算や文章の音読が、脳に効果的なトレーニングであることが実証されました。」という堅苦しいキャッチコピーと、「東北大学未来科学技術共同研究センター教授:川島隆太」という大層な肩書きと署名。なんともお堅い学習系ソフトの趣がありますが、コンスタントに売れていて50万本も夢ではないペースだというから、これは只者ではありません。では、他の学習系ソフトとは何がどう異なるのか?レビューで検証してみることにしましょう。

最新の脳科学を手軽で単純な「入力」に落とし込んでも
ゲームとして成立すると発想できたことの勝利

 よくボケ防止には、指先を動かしているといい、とか、声を出して文字を読むといい、などの概念が一般的になっていますが、これらはあながち科学的な根拠の無い話ではないのです。その基本原理は最新脳科学にもとづくこのソフトでも変わりません。ただ単に頭で考えたり計算するだけではなく、その答えをDSのタッチパネル機能でペンを動かして書いて入力することによって、思考による脳への刺激と同時に、指先を動かすことでも脳に刺激を与えることが出来るのです。音声認識では顎を動かすことの刺激が加わり、色を判断したり絵の動きを追う目からの視覚刺激も加わります。このような脳を活性化する刺激を、それぞれ1分以内のミニゲームに凝縮してあり、自己記録というスピードを競うことで集中力を発揮できるので、実感できるほど脳が疲れたと感じることはありません。むしろ、疲れた感じるのはペンを持つ指先だったりします。

 脳の活性化を実感することは医学設備でもなければ難しいものですが、このソフトでは、脳年齢の数字が確実に向上していく(若返っていく)とても分かりやすい達成感があるので、何事も三日坊主で終わってしまう人でも長続きします。これは、最新の脳科学を手軽で単純な「入力」に落とし込んでも、十分にゲームとして成立すると発想して製品化できたことが、このソフトが好調なセールスを記録することができた勝利の要因だと思います。

今後の技術的な課題

 波長で構成されている音声を自動で解析して認識可能な帯域が限られているため、小さな子供や声の高い女性、活舌の悪い人全般では正確な測定ができない(こともある)。また、筆順に依存してしまう手書き文字の認識率と、意味として認識できるのがまだ数字だけであること。手軽さとを重視しすぎて、トレーニングを毎日続けることそのものに飽きてしまうこと。音声系トレーニングは通勤通学中のちょっとした時間でやるには向いていないこと…などなど、いくつか技術的な課題があることも事実です。続編が出るかどうかは分かりませんが、もしあるとすれば、認識技術の劇的な向上は望み難いので、測定をよりゲームらしさの中に盛り込む方向に進むべきかも知れませんね。

 それに、脳年齢測定して数字で表示するのは、あくまでトレーニングを続けるための動機であり目安であって、脳年齢判定結果の数字そのものは、測定テストに慣れる事で向上してしまうもので、そこに科学的な絶対値ではありませんので誤解のないように。でも、そうして単純に自分の成長(回復?)が実感できるから、地味なトレーニングでも続ける気になれると言えます。ゲームを趣味とする世代も順調に高齢化の波が押し寄せていますので、昨今の良く出来た「与えられる」ゲームに慣れてしまった方々に、自身のゲーム離れに歯止めが掛からないことを嘆いている方々にも、是非オススメしたい逸品です。

First written : 2005/09/08