カムフラージュ
同人誌サークル:Plastic Age
 創作  片想いカムフラージュ・ラブコメ  一般 
作者:欧文廉ニ

(C)2006 Plastic Age/欧文廉ニ

「カムフラージュ」とは?

 部活を終えたある日の放課後、主人公の野村柑太は美術部の先輩であり部長の星野橘花を探していて、偶然準備室で橘花が眠っている柚子先輩にキスしているシーンを目撃してしまった。豪快な性格で誰からも親しまれていて、密かに憧れていた部長が、実は百合の人だと知ってプチ失恋してしまった柑太だったが、橘花の反応は予想外のものだった。幼馴染の柚子にこんな気持ちを知られてしまったら、もう一緒にはいられない…

 普段の竹を割ったような性格からは想像できない橘花の泣き顔を見かねて柑太は、柚子に誤解されたままの方が都合がいいのなら、いっそのこと自分と付き合っていることにして、カムフラージュすることを提案したのだが…事態は思わぬ方向へ。創作系制服漫画サークル「Plastic Age」の欧文廉二さんが送る、百合に見せかけて実はノーマルな、片想いカムフラージュ・ラブコメ、それが「カムフラージュ」なのです。

大好きな人が泣かないために、我慢するということ

 ただ一番の友達でいられればいいと思っていた。でも、一番近くにいるのに絶対に自分を好きになってくれることはない。そばにいられて毎日嬉しいはずのに、本当は毎日辛くて…でも嫌われたくないから必死に気持ちを押し殺して…我慢することに慣れるしかなかった。大好きな人が泣く顔は見たくないから…

 片想いをカムフラージュするための方便として、偽装カップルの手法を扱ったお話はさして珍しいものではありませんが、今作の展開は明らかに他のベタドラマとは違う印象を与えるものになっています。上記のような片想いは本来一方通行でしか成立しないものであり、ハッピーエンドでもバットエンドでも、どっちにしても報われない後味の悪さだけが残るものですが、今作はそのどちらでもありません。

 今作では「男→女→女」という特殊な図式で2つの片想いがあるため、一方通行であっても流れとしては「1本筋が通っている」ように感じられるようになっています。その代わり、通常の片想いの障害もよりハードになってしまうので、男役(柑太)にとってはなんとも迷惑な話なんでしょうけど…タイトルでもある「カムフラージュ」とは、橘花先輩の気持ちだけじゃなくて、実は主人公の柑太自身の気持ちでもあるのですから…

片想いカムフラージュ・ラブコメという新境地

欧文廉二さんといえば、「漫画を描く時には、ストーリーでもキャラでもなく、まず描きたい制服から考える」、と公言するほどの女子学生服好きで有名(?)ですが、今作では話の作り方の面でもある意味限界に挑戦しています。「片想いの人しかいないラブコメ」というご自身の紹介文にもある通り、片想いの構図を人物関係図に描きながら話の流れを追って読んでみるとよく分かるのですが、ストーリーありき、キャラクターありきの話の作り方では、おそらく今作のような小気味のいい話の転がし方はできないと思います。転がされる柑太にはいい迷惑かもしれませんが、キャラに対する手加減がないのでギャグの場面もシリアスの場面も効果が際立つことで、ぐっと来るけど笑いもある、絶妙なバランスでコメディとして成立しています。

 そして、ラブコメの「ラブ」の方は…片想いの上に誤解が何重にも掛かってしまう展開なので当然空回りしていますが、それさえもラストシーンでの柑太の捨て身のオチによって、しっかりとラブコメとしても成立しています。大好きな人が泣かないために、我慢するということ…敢えてピエロとなった柑太の、ある意味では可哀想で、ある意味では素敵とも言える勇姿は、是非本編を読んでお楽しみいただければ幸いです。

※画像使用許諾:2006/05/28
First written : 2006/06/01
Last update : 2006/08/17

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