本日 昨日
Review circle gmken. He whispers some words in your heart, and makes your gentle OTAKU days.
GM研
あずかんな大気
同人誌サークル:ゆ〜のす通信
 ジャンル:あずまんが大王 / AIR 
作者:ゆ〜のす

「あずかんな大気」とは?

 「あずかんな大気」とは、ゲーム「AIR」のキャラクターをベースにして、漫画「あずまんが大王」のキャラとギャグテイストをミックスしたパロディ4コマ同人誌シリーズです。原作「あずまんが大王」は、徒然なるマッタリした絶妙の間が存在する、いうならば「静かな笑い」が魅力の漫画ですが、それに対してこの「あずかんな大気」は、爆発的なテンションで飛ばしまくりの漫才のような絶妙なリズムと間が存在する、「動の笑い」が魅力の漫画なのです。

(→)右の表紙画像は、紙質から帯に至るまで本家「あずまんが大王」に限りなく近い装丁を再現した総集編1巻です。その他にも、阪神優勝記念で100円で大盤振る舞いされた番外編「V」や、グッズのひめくりカレンダーを再現してしまったり、シリーズ完結記念で限定頒布した収納BOX「えあばこ」など…同人の歴史で数々の伝説を作った至高のパロディ、それが「あずかんな大気」なのです!

空気と調和---原作の精神とのシンクロ

 原作の「静」と、本作の「動」。笑いの芸風はまったく違いますが、その根本にある「笑いの精神」において、両者は非常に近い性質があると思います。「あずまんが大王」のマッタリとした空気を支えているのは、確かな技術力とマニアックな着眼点であり、力が抜けきっているようでいて、実は基本がしっかりしていて、よく考えられています。だから読感が軽いのに笑いの質には読み流せない奥の深さがある。ダウンタウンの松本人志の名言にもあるように、「お笑いとは、”常識とのズレ”を認識できて、初めて面白いと思える」ものなのですから。

 「あずかんな大気」も、笑いの基本がしっかりしているからこそ、どんなにアホなネタやマニアックな趣味(車ネタやゲームネタや阪神ネタや斑鳩ネタ)や作者の楽屋ネタに走っても、不思議と全体の調和は崩れない。むしろ、その反則くさいパワフルなネタのフルスイングこそが、「あずかんな大気」の魅力だったりもします。それは、まるで空気のように自然な調和で…「あずまんが大王」の同人誌は数あまたあれど、原作と精神レベルでシンクロできる同人誌には、滅多にお目にかかれるものではありませんよ。

天然万能素材と薄幸の物語との幸福な出会い

 ちなみに、原作との各キャラクターの符合を考えてみると、「大阪=神奈」「とも+ちよちゃん=みちる」「榊さん=遠野美凪」「ゆかり先生=神尾晴子」「にゃも先生=裏葉」…となりますが、案外当てはまらない人物が多いことに今更ながら気付きました。でも、実はこの作品に限っては、厳密なキャラ対応にはあまり意味がありません。キャラクターもネタもシリーズを重ねるごとに、すでにオリジナルのものに昇華されていますから。それに、「あずかんな大気」の人物設定のベースはあくまで「AIR」であって、真に受け継ぐべきはネタや設定ではなく、”作品の持つ雰囲気”そのものにこそあるのですから。

 「あずまんが大王」が天然万能素材と云われる所以は、完璧な置き換えが成立しなくても「あずまんが風」に染まってしまう高い感染力にあるのかも知れません。「AIR」は感動的な歴史的名作ですが、その反面、とても哀しい物語でもあります。しかし、天然万能素材と薄幸の物語との幸福な出会いによって生まれたこの作品で、また彼女達の笑顔に会える。そこには、「1+1」を3にも4にもしてしまう魅力があります。両方の作品のファンなら、読めば誰でも好きになれる、しあわせになれる逸品です!

※限りなく原作単行本の素材に近づけて、同人誌の常識を覆した「単行本あずかんな大気」や、原作のグッズまでパロディで作ってしまった「ひめくりあずかんな」、番外編の「あずかんな大気V」では阪神優勝記念セールとして即売会価格100円の大盤振る舞い!同人活動を心の底から楽しんでいる遊び心があるからこそ、面白い作品が生まれるのかも知れませんね。