アナザーコード 2つの記憶
DS販売:任天堂、 開発:シング
 推理・ドラマ  触れる推理アドベンチャー  7時間 
プロデューサー:宮川卓也、 シナリオ:鈴木理香

「アナザーコード 2つの記憶」とは?

 14歳の誕生日を数日後に控えたある日、少女アシュレイ・ミズキ・ロビンズの元に差出人不明の小包が届けられた。小包の中身は、3歳の時に死んだと教えられていたパパからの手紙と、DASと呼ばれる小型の機械だった。アシュレイは育ての親であるパパの妹のジェシカと共に、手紙に導かれてパパが待つという無人島「ブラッド・エドワード島」へと向かったのだが…ジェシカとはぐれてしまったアシュレイは、不思議なゴーストの少年と出会うことになる。彼の名前はディー。ディーは天国に行くことができず、ひとりさまよい続けていた。ディーの願いは失われた生前の記憶を蘇らせること。自分が誰だったのか、なぜ死んだのか、それがわからなかったのだ。ディーは信じていた。50年以上も誰も寄り付かなくなってしまったこの島に、いつか自分の姿が見える誰かが現れ自分の記憶を取り戻してくれることを…

 アシュレイはディーとともに、自分自身の辛い過去の記憶…ママのサヨコが殺された日の真相を突き止めようとするうちに、かつてパパとママが研究していたという、人間の記憶を意図的に操作する機械「アナザー」の存在へと行き着く。アシュレイとディー、半世紀もの時代を越えてオーバーラップする2つの記憶。操作された記憶(ファーストアナザー)と、本物の記憶(セカンドアナザー)という2つの記憶。だが、果たして何を持って真実の記憶とするのか? 記憶に隠された真実に向き合う少年と少女の物語。それが、「アナザーコード 2つの記憶」のあらすじです。

DSでしか出来ない新表現がたっぷり詰まった挑戦作

 タッチパネルを使って、擦る、回す、引っ張る、投げる。このくらいの発想なら他のDSのゲームでもあるかも知れませんが、それだけに止まらないのがこの作品のすごいところです。マイク機能を使って息を強く吹きかけて埃を飛ばし、はーっと暖めるように息を吹きかけてガラスをなぞった文字をを浮かび上がらせるなど、DSの機能を活かしたアイディアがふんだんに盛り込まれています。初回にただ画面をタッチするだけの仕草を「指紋認証」と言って、あたかもそんな機能があるかのように錯覚させたりするのも面白い仕組みでした。そして極めつけは、本体の蓋を閉じながら2つの画面を合わせ鏡のように角度を調整するという…これは、本来ならばDSのスペック上の機能には存在しないためフラグを立てる事が不可能なトリックなのです!

 そういう仕掛けがあるとは噂には聞いていましたが、実際に目の当たりにした時には、思いのほか感動してしまいました。あぁ、これが長らく忘れていたゲームという娯楽の面白さだったんだと…謎解きがすべてのゲームなのでこれ以上詳しくは書けませんが、わずか7時間あまりのゲーム時間の中でしたが、数々の斬新なアイディアに終始驚かされっぱなしでした。そして、最後の最後で見せてくれた小粋な演出(自主規制)は…「やられた!」と思いましたね。

”携帯機は携帯して遊ぶもの”という概念を覆す野心作

 携帯機のゲームは携帯して遊べる(遊びやすい)ものでなければならない…この不文律を覆す野心作、それがアナザーコードだと思います。最近多忙を極める私はこのゲームを会社での休憩時間に毎日1時間ずつ遊んでいたのですが、人目のある休憩室でDSに向かって息を吹きかけたり、DSの角度を調節しながら「あーでもないこーでもない」と頭を捻っている姿は、相当恥ずかしいものがありました。おそらく、電車内などではなおさら恥ずかしいでしょうね。携帯ゲーム機でありながら、携帯することが主目的なのではなく、ゲームという入力装置の概念を変えるために生まれたのだ…このDSの理想を最も分かりやすい形で体現して見せたこの作品は、アドベンチャーゲームの歴史を語る上で欠かせない存在になることでしょう。DS初期にこれほどの完成度を持った作品が出現したことで、正直後に続くメーカーは大変かも知れませんが…この作品が示してみせた大きな可能性を感じるためだけにDSを買っても決して後悔はしないでしょう。最後に、この良作を任天堂ブランドとして開発・販売することを決断してくれた製作関係者たちの理想に、深く敬意を表したいと思います。

First written : 2005/03/13
Last update : 2005/08/18