暁の車
音楽唄:FictionJunction YUUKA(南里侑香)
 作詞・作曲・編曲:梶浦由紀 
「機動戦士ガンダムSEED」挿入歌

「暁の車」とは?

 TVアニメ「機動戦士ガンダムSEED」の第24話「二人だけの戦争」第32話「約束の地に」第40話「暁の宇宙(そら)へ」の挿入歌として、使用されたカガリ・ユラ・アスハのイメージソング、それが「暁の車」でした。24話と32話で使われた時にはこれといって何の印象もなかったのですが、40話での印象は別格のものでした。父ウズミとの別離とオーブの自爆へと続く、SEED最高の名場面とも言われているこのシーンの背景に、囁くように優しく、そして哀しく流れていたこの曲は、エイベックスが売り出そうと次々に投入していった世間的売れ線の楽曲たちとは比べ物にならないほど、強く強く印象に残りました。同じ様に感じていた視聴者も多かったようで、ファンからの強い要望によって、放送終了から1年近くが経過していたにも関わらず、異例の挿入歌のシングルカットが実現しました。

 歌い手は、「FictionJunction YUUKA」さんとなっていますが、これは声優の「南里侑香」さんのことです。最近では、アニメ「雲のむこう、約束の場所」のヒロイン:沢渡佐由理の声優を務めた人…と言った方が分かりやすいでしょう。声優としての南里さんの名前は時々見かけていましたが、声と役がイコールになるほど強い印象を与える存在感はまだなかったし、歌唱力については出演作品にマイナー作品が多かったこともあって、未知数だったのですが…この作品で一気に表舞台に立ちましたね。千葉紗子さんとのデュオ「tiaraway」の活動にも期待しましょう!

 この曲は、ただ楽曲に恵まれたからヒットしたわけではないと思います。スローテンポな序盤を物悲しく、中盤以降のアップテンポを激しく狂おしく歌い上げた、南里さんの声優ならではの「声の表現力」があったからこそ、そのフレーズは映像の記憶と高いレベルでシンクロして、視聴者の心に深く刻み込まれたのでしょう。この曲は、流行歌曲とかアニソンとか声優歌手とかいう、音楽カテゴリの先入観という壁さえも乗り越えてしまう可能性を示してみせた、ターニングポイントとなる名曲になるかも知れませんね…


「暁の車」   唄:FictionJunction YUUKA  作詞・作曲・編曲:梶浦由紀

風さそう木陰に俯せて泣いてる
見も知らぬ私を私が見ていた
逝く人の調べを奏でるギターラ
来ぬ人の嘆きに星は落ちて

行かないで、どんなに叫んでも
オレンジの花びら静かに揺れるだけ
やわらかな額に残された
手のひらの記憶遥か
とこしえのさよならつま弾く

優しい手にすがる子供の心を
燃えさかる車輪(くるま)は振り払い進む
逝く人の嘆きを奏でてギターラ
胸の糸激しく掻き鳴らして

悲しみに染まらない白さで
オレンジの花びら揺れてた夏の影に
やわらかな額を失くしても
赤く染めた砂遥か越えて行く
さよならのリズム

思い出を焼き尽くして進む大地に
懐かしく芽吹いて行くものがあるの

暁の車を見送って
オレンジの花びら揺れてる今も何処か
いつか見た安らかな夜明けを
もう一度手にするまで
消さないで灯火
車輪(くるま)は廻るよ

 

First written : 2004/12/03