メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ
PS2製作:コナミKCEJ   2001/11/29発売
 戦争・ドラマ  潜入アクション  17時間 
監督:小島秀夫 美術:新川洋司

メタルギアとは?

 「メタルギア」とは、1987年にMSX2でコナミから発売されたアクションゲームです。従来のアクションゲームの常識を覆す「いかに敵に見つからないように進めるか」という斬新なコンセプトと、小島秀夫監督の徹底した演出と設定へのこだわりが、ひとつの伝説をつくりました。それから10年余…1998年、Playstationで新作として帰って来た前作「メタルギアソリッド」は、圧倒的に進化したグラフィックでドラマ性を飛躍的に向上させ、3Dポリゴンですべて構築された空間によってアクションの可能性を広げました。それから3年、Playstation2のマシンパワーを得てさらなる進化を遂げたシリーズ最新作、それが「メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ(以下、MGS2)」です。

※この作品はストーリー的にも難易度的にも、前作の知識と戦術経験が必須ですので、少々面倒でも前作から始めることをオススメします。

映画的面白さのゲーム的面白さへの昇華

 よく、メタルギアを「映画みたいなゲーム」と評する人がいますが、それは大きな間違いです。確かに、小島監督は自他ともに認める映画好きであり、雑誌で映画のコラムを連載していたこともあったし、過去の小島作品にも映画の影響が色濃く投影されています。しかし、小島監督作品にはそれと同等、いや、それ以上の「ゲーム的面白さ」が溢れています。ロッカーの内側に貼られているグラビアポスター、ガラスを撃てば割れるしロッカーを殴ればヘコむ、単なるダンボールにもそれぞれに模様があり、カモメを銃撃すると糞の反撃を喰らい、リモコンミサイルを大統領に命中させて怒られたり…あらゆる攻略法と行動の可能性を許容する懐の深さ、それが小島監督作品の真髄です。

 MGS2の難易度は決して低くはありません。むしろ今時珍しいくらい硬派でハードなアクションゲームです。しかし、初心者を切り捨てるようなことはしません。どんな強敵が相手でも、回数を重ねることでヒントは必ず見つかります。敷居を下げずにプレイヤーを上達へと導いてくれます。「映画的面白さ」を「ゲーム的面白さ」へと昇華させた名作、それがMGS2なのです!

過ちを記憶し、伝える

 ネタバレにならない範囲でMGS2のシナリオを分析評価するのは非常に難しい。いや、例えそのすべてを掲載したとしても、ゲーム本編を経験しなければ、本当の理解には到達できないでしょう。幾重にも張り巡らされた伏線による驚愕の展開と、怒涛の情報量で押し寄せる最先端デジタルテクノロジーの脅威と、極限の殺し合いの中で語られる真実、それは…「人間の存在理由」です。

 デジタルという魔法は、確かに私達の世界を大きく変えてしまいました。そして、それは核兵器以上に危険な存在にもなりえるのです。デジタル情報はいともたやすく国境を越え、あらゆる規制をくぐり抜け、共同体という幻想を解体してしまいました。残されるのは「際限のない自由」という孤独に曝された「個人」だけなのです。

 「過ちを記憶し、伝える」そうソリッド・スネークは言いました。遺伝子には刻まれていない情報…自分が信じたもの・愛したもの、文化、歴史、そして歌…それらを次の世代に伝えること。それが命のつながりなのだ、と… 願わくは、この厳粛なテーマを「よく出来た映画みたいなゲーム」という色眼鏡で評価して欲しくない。ゲームだからこそ表現できるものもあるのですから。

First written : 2001/12/01
Last update : 2003/11/03