monthly Book Review
炎の言霊
作者 : 島本和彦
出版社 : 朝日ソノラマ

炎の言霊とは?

 炎の言霊とは、当代一の熱血漫画家:島本和彦の作品中に使われている熱い言葉を集めた名言集です。むやみやたらに勢いのある絵柄に目が行ってしまいがちですが、どんな不条理も無視して勢いで押し倒す強引なセリフもまた、島本作品には欠かせない魅力です。島本作品で語られる熱い言葉を集めて1冊の本にしてみると、あまりの濃さに驚きます。本書を読み進めるには相当な気合が必要です。あまりにも強烈なパワーが、やる気の波動となって溢れています。まさに「炎の言霊」と形容するほかにない、魂の書なのです。

熱血漫画家:島本和彦

 仮面ライダーと戦艦ヤマト世代であり、特撮と熱血とヒーロー世代のDNAを持つ漫画家。それが島本和彦である。絵は決して上手いとはいえない(むしろ勢いがありすぎて読みにくい)し、熱い語りも論理的に考えれば矛盾も多い。しかし、読者にそんな風に冷静に考える暇を与えないように、勢いで押し通してしまう他に類を見ない作風は、一度はまると病みつきになりますよ。

 惜しむらくは、マイナー誌での連載が多いので、単行本がなかなか手に入らないことです。単行本にすらならないこともあるので、連載を見かけたら逃さず読んでおきましょう。初心者の方は「炎の転校生」→「燃えよペン」→「逆境ナイン」という順番で読んでいくことをおすすめします。

やる気の波動

 本書のあまりにも熱い言霊たちは、GM研トップページの名言集にも多用されています。その言霊は、たとえ元ネタとなる漫画を知らなくても「何か」伝わるものがあるはずです。得体の知れないエネルギーに触れることで、やる気の波動が伝わってきます。そこいらの栄養ドリンクよりも効きますよ。表面だけ取り繕って、熱くなることも歯を食いしばることも血の滲む努力も忘れてしまった現代人に、忘れていた何かを思い出させてくれます。

 言葉には魂が宿ります。そして、それは使い方を誤れば暴力にもなります。伝える側の真意が常に受け手側に正しく伝わるとは限りません。だからこそ、飾らない直球の言葉で本音を伝えることも時には必要なのです。他人の顔色を伺うのではなく、たとえ間違っていようとも自分の意見を主張する。もし間違っていれば、その教訓を生かして同じ間違いを繰り返さないようにすればいい。そんな自分を格好いいと思える明日を生きる糧にするために、ぜひ読んでいただきたい逸品です。


月刊GM研TOPページに戻る