monthly Book Review
新しい歴史教科書
作者 : 新しい歴史教科書をつくる会
出版社 : 扶桑社

「新しい歴史教科書」とは?

 昨今、大きな話題になっている「歴史教科問題」をご存知でしょうか? この問題は中国や韓国との外交問題にまで発展しており、また、教科書では異例の市販版「新しい歴史教科書」は50万部を越えるベストセラーという高い関心を持たれているのです。しかし、非常に偏った報道がなされているため、この問題の本質が正確に伝わっていないのでは?と、私は懸念しています。では、何が一体そこまで問題視されているのでしょう?

 「新しい歴史教科書」は、これまで一貫して謝罪してきた、太平洋戦争における日本の侵略行為に対して「肯定」という立場を取っています。しかし、これは「侵略行為を正当化する」ものでも「軍国主義の賛美と復権」のためではなく、あくまで「戦争という外交手段が存在した事実」を肯定しているものに過ぎない。実際に100箇所以上の修正があったとはいえ、この本は文部科学省の教科書検定に合格しているのです。非難されるほどの内容など持ち合わせていません。ただ単に、他の教科書があまりにも「左翼的誘導(日本がすべて悪うございました。人権万歳!人類みな兄弟!)思想」によって書かれているから、目立ってしまうだけなのです。

歴史教科書問題の真実

 この歴史教科書問題をわざわざ掘り起こして国際問題にまで仕立て上げてしまったのは、日本の侵略行為を声高に叫んできた論壇の知識人たちと、マスコミ各社の心情左翼(自称:国際人)たちである。信じがたいことに、彼らは国を守るために戦った祖先を辱め、日本を食い物にしようと虎視眈々と狙っている中国と、日本への劣等感に燃える韓国に、絶好の外交カードを売り渡してしまったのです。同様に彼らは従軍慰安婦問題と南京大虐殺を捏造し、歪曲させた歴史を若者に植え付けてきたのです。それは歴史への冒涜であり、取り返しのつかない犯罪なのです。

 なぜ戦後50年以上もたってから、このような問題が起きるのか、一般の方には理解しがたいものがあるかもしれません。しかし、歴史が歴史としての価値を持つようになるまでには、一定の期間が必要なのです。そして、歴史は自動的に記録されるものではなく、ヒトの手によって綴られるものなのですから、書き手の立場によって様々な解釈があって当然です。

 様々な解釈が存在することで混乱が生じるならば、「いっそ統一してしまえばいい」と思うかもしれませんが、それは非常に危険な考え方です。権力者や強国の都合による歴史の捏造を許すことになります。歴史は人類共通の宝であって、個人の所有物ではありません。

歴史に学ぶということの意義

 私が市販版の「新しい教科書」を読んだ感想は、「あれ?今の教科書はこんなに簡単でいいのか?」というものでした。私が中学生だったのはもう10年前の話だが、内容的には2割近く削られている。当時ですら指定教科書の内容に物足りなくて、競ってマニアックな参考書を何冊も活用していた「歴史マニア」の私にとっては物足りないが、従来の教科書とは違って歴史観に則したコラムが随所にあるのは面白い。読み手の知的好奇心を刺激するきかっけに十分なりえるであろう。

 歴史というものは、永遠ならざる命を持つ我々人類にとっての「記憶」である。過去の英雄たちの偉業も、名も無き人々の勤勉も、決して消すことのできない過ちも… 我々は歴史を通じて知ることができる。歴史は人類という名の物語なのだ。だが、歴史はひとつではない。立場や角度が違えば、違う解釈が存在する。大切なのはそこに刻まれた記録ではなく、受け手が何を感じることができるか、何を学びとることができたかが大切なのです。

 願わくば、今回の騒動によって、ひとりでも多くの少年少女が歴史に興味を持ち、曇りなき眼で真実を見据えて欲しい。そこから「あなたの歴史」が始まるのですから…