トゥルーラブストーリー3
PS2販売/開発:エンターブレイン/GameCRAB
 恋愛・ドラマ  恋愛シミュレーション  27時間 
キャラクターデザイン:松田浩二

トゥルーラブストーリーとは?

 「トゥルーラブストーリー」(以下、TLS)とは、家庭用恋愛シミュレーションゲームの中堅人気シリーズです。シリーズ第一作が登場した当時は、「下校会話システム」に代表される斬新なゲームシステムと、大物声優の起用が評判を呼び、ギャルゲー界の王者「ときめきメモリアル」に次ぐ期待の新星として大きな注目を集め、売上面でもスマッシュヒットを記録したのですが…

 しかし、ファンクラブ運営やグッズ展開などのメディアミックスの大波に乗り遅れたTLSは、ギャルゲーバブルの崩壊とともに、急速に活力を失っていきました。その後、起死回生を狙った「TLS2」も、システム的に代わり映えがしない内容が響いて空振りに終わり、半減の7万本割れという非常事態に追い込まれました。もはやシリーズの存続さえ怪しいとの声もまことしやかに囁かれていたのですが… まさかまさかの大復活! 見事PS2での最新作「TLS3」の発売に漕ぎ付けたのでした。

正当に進化した新システムの真価は?

 「TLS3」には、意欲的な新システムが盛り込まれているだけではなく、舞台や設定も大きく変わりました。ゲームの舞台は、高校→中学に。ゲーム期間は、3ヶ月→1年間に。シリーズ恒例の「下校システム」も3人同時会話が可能になりました。舞台が中学校になったことには違和感はありませんでした。何しろ、TLSにおける恋愛は、あまりにも初心(うぶ)かつ純粋すぎて、むしろ今まで高校が舞台だったことの方がおかしなことだったようにすら思えてしまいます。それに、今までは「転校前の思い出作り」という、ある意味では鬼畜な設定に多少の抵抗があったのですが、今回は「卒業」というごく当たり前の出来事に向かっていくので設定に無理はなくなりましたが、その反面、必然性や焦燥感が薄れてしまった感も否めません。

 期間は1年間になりましたが、別に365日必要というわけではありません。新システム「頑張る日システム」によって、1週間のうち自分のプレーしたい日だけを選ぶことができ、見たいイベントだけを選んで最大7倍速で1年間を過ごすことができます。しかし、最短で9月くらいに告白イベントを発生させてしまうと、告白して一度断られた後に卒業式まで一気に話が飛んでしまって逆告白される、という構図に不満を感じる人も多かったようです。「プレー時間の短さとお手軽さ」を両立しようとしたのが裏目に出て、固定イベントの比重の軽さにつながってしまいました。「3人同時下校会話」は、そういつも起きるわけではないし、3人同時といってもほとんどクロストークにはならないので深みがありません。

 意欲的な試みは評価したいけど、煮詰めきれずに消化不良を起こしてしまっているのが残念です。シリーズのファンとしては「R」のような改訂版の発売を希望したいが、シリーズの存続すら本格的に危ぶまれている現状では、それは難しいでしょうね。

幸せは、平凡な日々の中に

 この作品は「トゥルーラブストーリー」というタイトルなのに、実際には、ストーリーらしいストーリーは一切ありません。会話も『「…でね、…なの」○○さんと楽しく会話した』というように、イベントも具体性に欠けるそっけないものでしかありません。では、どこに「トゥルー(真実の)ラブストーリー(恋物語)」があるのでしょうか? それは、平凡な日常生活と日常会話にこそあるのです。TLSはこの「日常性」の再現に心血を注いだ作品であり、一概に他の「ギャルゲー」と同列に見なしてよいものではありません。ただ毎日顔を合わせるという幸せ、何気ない言葉を交わす幸せ、並んで歩くだけでドキドキしていたあの頃、甘くてほろ苦くて切ない秘めたる想い、そして卒業という別れの時…

 TLSが体現しようとするもの、それはプレーヤー自身の想い出の再現なのです。女の子のキャラクターが弱いのも、饒舌さに欠けるシナリオも、すべてはプレーヤーの回顧を引き出すための演出なのです。時間は決して巻き戻すことはできません。でも、だからこそ、想い出は無限の自由という翼を持っているのです。思いを馳せるのは自由なのですから。TLSというタイムカプセルが思い出してくれたもの、それは…

 「幸せは、平凡な日々の中に」

First written : 2001/05/01
Last update : 2003/10/27